このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

ULS漆原茂氏が“AI駆動開発時代のチーム開発”を語ったパネルディスカッションも

JavaはAIでまだまだ進化する ―― 「Microsoft Java Day」にみる“Agentic Dev”

2026年06月24日 09時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

“ハーネス”や“ガードレール”が必須なAIとの大規模開発

 Microsoft Java Day 2026の締めくくりでは、Microsoftの寺田氏とULSコンサルティングの取締役会長である漆原氏によるパネルディスカッションが繰り広げられた。

 最初のテーマが「AI駆動開発の現状と今後」だ。

 漆原氏は、この1年でAIエージェント化が急速に進み、生成されるコードの質が「文句の言いようがないレベル」にまで向上したと指摘。さらに、AIによるパラダイムシフトの波が最も早く到来した領域が「ソフトウェア開発」だったと振り返った。「ソフトウェアエンジニアリングは体系化され、アウトプットも明確なため、AI・エージェント化しやすい」と漆原氏。

(左)ULSコンサルティング 取締役会長 漆原茂氏(右)Microsoft CoreAI Developer Relations Sr. Cloud Advocate 寺田佳央氏

 このようにAIの進化が著しい一方で、エンタープライズ領域のシステム開発に携わる漆原氏が強調したのが、「勝手にやらせすぎない」という姿勢で、寺田氏も強く同意した。鍵を握るのが、「ハーネス(手綱)エンジニアリング」であり、人間が道しるべや制限ポイントを設けることが、安心・安全かつ品質を担保する大前提になるという。

 加えて寺田氏は、AIの成果物に対して、間違いや漏れがないかをチェックさせる工程を必ず組み込んでいると言及。漆原氏も「AIを“盲信しない”のが重要で、信じきると思考能力が低下してしまう。必要に応じてAIを複数使う、批判的に使うことがポイント」と返した。

 なお、両名ともに「バイブコーディング」はまだ現実的ではないという感覚で、「再現性がなく、宝くじを引くような作り方。すべてバイブでやりきるのは抵抗がある」と寺田氏。一方の漆原氏も、「ビジネスサイドの人がクイックに検証するには最適だが、本格的な開発にはエンジニアを揃えるべき。ハーネスやガードレールを整備した上で、バイブ的な開発を取り入れることを薦める」と語った。

AI駆動開発時代には“良いチーム”が“良いもの”を作る

 2つ目のテーマは「企業におけるAI人材育成」だ。

 漆原氏は、従来の「人月ベース」で大人数を投入する開発スタイルは終焉を迎え、かなりの規模の開発も「数人の“わかっている”人間が回す」ようになると予測する。つまり、今後高まっていくのが開発者一人ひとりの価値だ。一方で、「言われたままに作ってきた開発者」「全体を見てこなかった開発者」は苦しむことになるという。

 「AI時代でも、一人の開発者が全部を抱え込むことはない。得意な分野を持つことに加えて、ビジネスサイドの意図を汲みとる対話スキルや、強いチームを作り上げる力などが、これから要求されるスキルセット」(漆原氏)

 同じように、AI人材育成のポイントも「チーム」にあるという。漆原氏は、AI駆動開発時代には必要なのは数ではなくチームワークであり、「それぞれ得意な領域を持つ開発者がひとつのゴールに向かって歩み寄りながら進んでいく」形こそが理想だとする。

 「AIは人の力が増幅されるだけのもの。だからこそ、チームのパッションが高ければエモいものができ、逆に冷え切った信頼関係のないチームでは、いくらAI駆動開発のツール入れても良いものが生まれない」(漆原氏)

 また、寺田氏からは、24時間眠らないAIにつられて人が働きすぎてしまう「AI疲れ」や「AI中毒」への懸念も示された。そのため、個人を追い込まないようチームのゴールを共有し、健全なリスペクトを持って働ける環境づくりが重要であり、それはAIには任せられない領域である。

 では、これからのチームにおいて、まだ経験が乏しい若手の開発者はどう成長できるのか。漆原氏は、「AIを使いこなすという一点においては、皆スタートライン。むしろ若い世代のほうが自在に使いこなせるため、チャンスが巡ってくる」と強調する。

 ただし、AIをブラックボックス的に利用すると思考力が低下してしまうため、「シニア開発者は自身の意思決定を言語化する義務、若手開発者はそれを聞く義務」があるという。

 ディスカッションの最後、漆原氏は、「エンジニアがいよいよ光り輝ける時代が到来している。AIを恐れることなく楽しみ、ビジネスサイドを驚かせるような最高の仕事をしましょう」と、イベントを締めくくった。

■関連サイト

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

  • 角川アスキー総合研究所