「Interop Tokyo 2026」アスキー全力特集! 第42回
Interop Tokyo 2026のAMDブースから紐解くAIインフラの現在地
AIインフラ市場“一強体制”を崩せるか AMDが「Helios」で体現するオープン戦略とフィジカルAIのラストマイル
2026年06月26日 11時00分更新
これまでNVIDIA一強だったAIインフラの市場において、急速に存在感を示しているのがAMDだ。ハイパースケーラーは、AMDのGPUを採用することで、“一社依存”からの脱却を図り始めている。
こうした中、同社の“AI戦略の象徴”として登場するラックスケールのAIプラットフォーム「Helios」が、「Interop Tokyo 2026」にてバーチャル展示された。また、このHeliosと合わせて「Best of Show Award」を受賞したのが、フィジカルAI時代を見据えて展開するエッジAI向けのプロセッサ「AMD Ryzen™ AI Embedded P100シリーズ プロセッサ」だ。
ブースの展示や担当者の話を交えて、この2つの製品を通じたAMDのAI戦略を紐解く。
HeliosがAMDの“AI戦略”を象徴する2つの理由
Heliosの実機が初めて一般向けに公開されたのが、2025年10月のOCP Global Summitだ。同製品は、CPU、GPU、インターコネクト、NIC、そしてソフトウェアまでを統合したラックスケールのAIプラットフォームである。単一のラックで最大2.9 AI Exaflops(FP4精度)という圧倒的なAI処理能力を備える。
今回のInterop Tokyoでは、約3.6トンという重量もあって、86インチのモニターを使った“バーチャルHelios”という形で日本のインフラ関係者の前で披露された。出展社の新製品を表彰するBest of Show Awardでは、サーバー&ストレージ部門で審査員特別賞を受賞。そのバーチャル展示の前で、日本AMDのコマーシャル営業本部 フィールドアプリケーションエンジニア の石橋史康氏は、「AMDのAI戦略を象徴する製品」だと語った。
その理由のひとつは、AMDのAIテクノロジースタックの集大成であり、同社が「フルスタックのAIインフラベンダー」として転換するための第一歩となる製品だからだ。AMDはHeliosを通じて、競合と同等以上の性能の垂直統合型システムを市場に供給できると主張する。
Heliosは、18枚のコンピュートトレイで構成され、各トレイには次世代GPU「AMD Instinct™ MI455X」を4基、第6世代のEPYCプロセッサ「Venice」が1基搭載されている。つまり、ラック全体では72基のGPUと18基のCPUという超高密度な構成だ。ネットワークには、買収したPensandoの技術を結集した800GbpsのAI NIC「Vulcano」を採用。これらが、後述のUALinkやUltra Ethernetを介してつながり、ラック全体がひとつの巨大なコンピューティングユニットとして機能する。
バーチャルHeliosでは、こうしたコンピュートトレイの内部構造まで緻密に再現。ブース展示されたPCIe対応のエンタープライズAI向け最新GPU「AMD Instinct MI350P PCIe® カード」や400Gbpsの「AMD Pensando™ Pollara 400 AI NIC」などと合わせて、AIインフラ向けの最新ポートフォリオとして紹介されている。
2つ目の理由が、AMDが推進する「オープン戦略」を体現している点だ。競合のラックスケール製品が、独自のクローズドな技術で固められている一方で、Heliosは業界のオープン規格を中心に構成されている。
ラックは、Metaが主導するOpen Compute Project(OCP)によって策定された、従来の倍に近い幅(約1200mm)のOpen Rack Wide(ORW)を採用し、SupermicroやHPEなどのサーバーベンダーが生産・販売を予定。高密度実装と電力・冷却効率を両立させ、メンテナンス性も担保している。
ネットワークも、GPU間接続にはUALink、クラスターネットワークにはUltra Ethernetとオープン規格で実装。トランシーバーやケーブル、スイッチなどの拡張が容易となり、「価格競争の原理も働く」と石橋氏。Best of Show Awardの受賞においても、圧倒的なAI処理性能に加え、オープン標準に準拠した設計が評価されている。
このHeliosは、2026年後半に市場に投入される見込みだ。既に主要なターゲットであるハイパースケーラーが、AMDのGPU(Instinctシリーズ)で一社依存からの脱却を進める中で、同製品の登場によりその勢いは加速するだろう。
石橋氏も、「いよいよ(AIインフラにおいて)『第2の選択肢』としての位置付けが確立されてきた」と強調する。「これまで不足が指摘されてきたソフトウェア(ROCm)においても、PyTorchやJAXなどの主要なAI系フレームワークはもちろん、vLLMやSGLangなどの推論エンジンもゼロデイサポートしている。キーとなる行列演算のライブラリ(GEMM)も日々最適化しており、競合との差は確実に詰まっている」(石橋氏)
加えて、AMDの強みが、AI以外のポートフォリオの充実ぶりだ。その筆頭がFPGAで培ってきた組み込み(エンベデッド)の領域であり、政府が推進する「フィジカルAI」の実現にも直結するという。石橋氏は、「AMDのサーバーで学習し、量子化(小型化)したAIモデルをAMDの組み込みチップに乗せ、フィジカルAIを実現する世界が見え始めている」と、AMDのビジョンを語った。
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