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TOKIUM・マツリカ・ログラスが描くAI時代の成長戦略

SaaSは本当に死ぬのか 国産スタートアップ3社が示す“Beyond SaaS”への道

2026年05月27日 13時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

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 2026年に入り、Anthropicの「Claude Code」や「Claude Cowork」などのAIエージェントの登場を機に、「SaaSの死(SaaS is Dead)」をめぐる議論が再燃している。日本のスタートアップ企業やベンチャーキャピタルは、この潮流をどう受け止めているのか。

 2026年5月26日に開催されたメディア向けパネルディスカッションでは、「SaaSは死ぬ」と一石を投じたTOKIUM、「会社による」とするマツリカ、「SaaSかどうかは論点ではない」と説くログラスという、それぞれ異なるスタンスの事業者が集結。ニッセイ・キャピタルの伊藤佑将氏もゲスト登壇した議論の様子をレポートする。

TOKIUM:業務プロセスに“深く入り込む”サービスへの進化を

 まずは、「SaaSは死ぬ」というスタンスをとる、TOKIUMの執行役員 CFO コーポレート本部長である西山希氏の主張だ。同社は、経費精算領域のSaaSからビジネスをスタート。現在は、あらゆる経理業務から人を解放すべく、経理AIエージェント「TOKIUM」を展開している。

 西山氏は、「SaaS is Deadは正しい」としつつ、正確には「ピュアなソフトウェアとしてのSaaSは生き残りづらくなっている」と現状を整理。その背景として、AIエージェントによりソフトウェア開発のハードルが劇的に下がったことを挙げた。

 「コードを書くためにエンジニアが必要な時代は終わったというのが現場の肌感。今のプロダクト開発は、上流工程にもAIをどれだけ適用できているかをKPIとして設定している。創業したてのスタートアップでも、老舗のソフトウェア会社のような品質のサービスが作れてしまう」(西山氏)

 TOKIUMがもうひとつの大きな変化と捉えているのが、AIが主体となって仕事をこなす「主従関係の逆転」だ。いかにAIが業務を代替できるかが付加価値になってくると、従来型SaaSの利用量に基づくビジネスモデルは維持できなくなり、「他業界では当たり前のような、利益(成果)に対して課金をする方向へシフトしていく」と西山氏。

TOKIUM 執行役員CFO コーポレート本部長 西山希氏

 それでは、どのようなSaaSが生き残っていくのか。鍵になるのは、「複雑な業務プロセスにどれだけ深く入り込めるか」だという。

 「身近な例を挙げると、ふるさと納税の『ワンストップ申請』。色々な仕事が複雑なプロセスで成り立っている中で、ソフトウェアはあくまで手段のひとつ。人的リソースなども組み合わせて、最終的な業務成果まで丸ごと引き受けるサービスまで進化できれば、これからも必要とされ続ける」(西山氏)

マツリカ:“System of Record”なSaaSに問われるデータの質

 一方で、「会社による」というスタンスをとるのが、マツリカ 経営企画室 室長の佐藤風太氏だ。同社は創業以来、営業・マーケティング領域のデータ活用を支援し続けており、SFA・CRMを起点としたAIソリューション群「Mazrica」シリーズを手掛けている。

 佐藤氏は、「シンプルな機能のSaaSはAIに置き換えられる」と同意をしつつも、AIが脅威になるかどうかは、3つの観点でサービスごとに異なると語る。

 ひとつは「ターゲット」で、特に大企業向けは、機能面だけではなく、セキュリティや保守性など要求水準が高いため、AIに代替されづらい。2つ目は「System of Record」であり、情報を記録するシステムは、企業にとって重要なデータを抱えているゆえに残り続ける。

 最後は、サービスの提供する「価値の種類」だ。効率化であればAIが得意な領域だが、マーケティング領域でいう商談数の最大化や受注率の向上といった「成果創出」に直結するサービスは、これからも生き残る。

マツリカ 経営企画室 室長 佐藤風太氏

 加えて、CRM領域ではSaaS黎明期から、「データが入力されない」「データを活用できない」という2つの課題が取り残されたままだったという。しかし、前者のデータ入力は、AIの登場によって解決の目途が立った。

 そして、後者のデータ活用が進まない原因は、ひとえに「データの質」にあるという。「System of Recordであっても、活用する価値のあるデータを蓄積できるかが、SaaSが生き残れるかどうかのポイント」(佐藤氏)

ログラス:顧客価値のためなら汎用SaaSにこだわらない

 最後に、「SaaSかどうかは論点ではない」と説くのが、ログラスの取締役 執行役員CFOである伊藤駿氏だ。同社では、企業の意思決定を支援するFP&A(Financial Planning & Analysis)領域の経営管理SaaS「Loglass」シリーズを提供する。

ログラス 取締役 執行役員CFO 伊藤駿氏

 伊藤氏の真意は、従来のSaaSの枠組みを超える「ビヨンドSaaS」という言葉に集約される。「従来型SaaSの価値が揺らいでいるのは事実。ただ、SaaSかどうかというのはビジネスモデルの話であり、顧客に対する提供価値の話ではない」(伊藤氏)

 つまり、AI時代に顧客に求められる価値こそが論点であり、それを満たせるのであれば、汎用SaaSにこだわらないという主張だ。実際にログラスは、AIを活用した経営管理の高度化に向け、MIXIとの個別開発の共同プロジェクトをスタートしたところだ。

MIXIとAIを活用した経営管理高度化に向けた共同プロジェクトをスタート

 加えて、FP&Aの領域においては、かつての主力ツールであったExcelが構造化されていないデータなため、“AIリーダブル”な状態でデータを蓄積するSaaSの価値は高いという。「その基盤上で、経営管理に最適化したAIエージェントを実装することで、SaaSのさらなる成長が期待できる」(伊藤氏)

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