TOKIUM・マツリカ・ログラスが描くAI時代の成長戦略
SaaSは本当に死ぬのか 国産スタートアップ3社が示す“Beyond SaaS”への道
2026年05月27日 13時00分更新
「SaaS企業の選別」は今に始まったことではない
では、ベンチャーキャピタル側の視点はどうか。登壇したのは、ニッセイ・キャピタルでスタートアップへの投資を担当する伊藤佑将氏だ。
伊藤氏は、日本の未上場市場における「SaaS企業の選別」は今に始まったことではないと語る。大型SaaS企業のIPOが相次ぎ、投資のピークを迎えた2022年以降は、成長が鈍化する企業が現れたことで「SaaSというラベル」だけでは評価されなくなっている。
「ARRの規模や成長率だけではなく、市場規模や企業のポジショニング、営業効率にまで評価軸が広がっていった。そして足元では、SaaSの一部がAIに代替されるのではという懸念から、AIという軸でも選別が始まったのが現状」(伊藤氏)
ニッセイ・キャピタル自身は、AIの登場を「大きな投資機会」だと捉えているという。「一過性ではなく産業構造が大きく変わる、インターネットの登場に匹敵するぐらいのビッグウェーブ。一部の企業には脅威だが、既存産業の変革や革新的なプロダクトが生まれる大きな投資機会」(伊藤氏)
加えて伊藤氏は、スタートアップが生き残るには、「AI時代に適応した事業戦略を描くこと」だと強調する。既存の事業モデルに固執し過ぎず、AIによる市場変化に合わせて自社やサービスを再定義すること。AI時代でも失われにくい競争優位を築くことが求められ、さらには、SaaS企業の評価が厳しくなっていることを前提に、どう戦うかを考える必要があると訴える。
そして、SaaSが生き残るためには、「AIに代替されないこと」ではなく「AIで自社の価値をどう拡張するか」という観点の方が重要だと締めくくった。
スタートアップ3社のAI時代のエクイティストーリー
それでは、登壇したスタートアップ3社は、AI時代にどのような成長戦略を描いているのか。
まず、TOKIUMでは、短期的には経理の完全自動化を、その先には、あらゆる業務の自動化を見据えているという。
それは、AIエージェントだけではなく、人も協調して業務を丸ごと代行するサービスの展開であり、「TOKIUMに任せれば成果物が納品される」というビジネスモデルの確立だ。その一環として、2026年5月、新事業として「AI agentic BPO」を開始。これは、既存の業務フローにAIを組み込むためのコンサルティングとその再設計された業務フローをAIと人が遂行するBPOを組み合わせた、AIネイティブなBPOサービスである。
TOKIUMの西山氏は、「ソフトウェアを主軸とするサービスで培った知見を活かし、BPOの市場構造を変えていくことが今後のチャレンジ」だと語った。
一方のマツリカでは、データが分断されない設計思想で構築されたデータベースの強みを生かし、AIが自律的に業務を代替する「System of Action」の領域に注力していく。営業領域でいえば、AIエージェントが、アプローチすべき顧客を抽出して、提案のストーリーを作って、そのままプレゼンテーションまで生成してくれるような世界だ。
マツリカの佐藤氏は、「質の高いデータによってAIが自律的にタスクを実行し、AIが精度の高い行動をとることで、結果、そこから得られるデータの質も高まる。記録するSystem of Recordと実行するSystem of Actionの両輪を回すことで、組織の持続的な成長を支援していきたい」と展望を述べた。
最後に、ログラスが目指すのは「CFOのAI参謀」だ。「先月の業績や経営計画のリスク、目標の利益率を達成するためのアクションなど、CFOの抱える問いに答えてくれる、もしくは先回りして提示してくれるようなAIエージェントを開発し、企業価値向上に貢献していく」とログラスの伊藤氏は意気込む。
そして、このAI参謀を届けるにあたっては、SaaS、個別開発、もしくはコンサルティングなど、その提供手段は問わないという。「SaaS市場が2兆円規模に対して、個別開発のSIer市場が10兆円規模。競争も激しいが、経営管理の知見を武器により広い市場で勝負していきたい」と語られた。
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