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エージェントの挙動を可視化し、設計意図どおりの動作かどうかを確認、改善を促す

AIエージェントの業務プロセスも監視すべき Celonisが「エージェントマイニング」を提案

2026年04月07日 07時00分更新

文● 大河原克行 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 Celonis(セロニス)は、2026年4月1日、同社2027会計年度(2026年2月~2027年1月期)の事業方針を説明した。そのなかで同社は、「エージェントマイニング」という新たなコンセプトを提案した。

 これは、複数のAIエージェントが連携して動く環境において、各エージェントの挙動を可視化することで、設計者が意図したとおりに動作しているかを確認するものだ。業務プロセスの不整合を特定し、改善を促す役割を担う。

新たに“AIの動き”を可視化、検証可能にする「エージェントマイニング」

 エージェントマイニングが効果を発揮した一例として、「エージェント間の“隠れた無限ループ”」を解消した、欧州の損害保険会社の事例が紹介された。

 この保険会社では、顧客からの事故受付をAIエージェントで自動化している。この受付エージェントは、必要書類がそろっていることを形式的に確認して、次の査定エージェントにタスク処理を引き継ぐ仕組みとなっている。

 次の査定エージェントでは、申請内容をチェックして保険金支払額の見積を行う。ただしここで、見積額が5000ユーロを超える場合には、別の明細資料の提出も必要とするルールがある。この明細がなければ処理が進められないため、査定エージェントはタスクを差し戻すが、受付エージェントは形式的なチェックしか行わないため、タスクを再び査定エージェントに回してしまう――。このようにして、タスク処理が無限ループに陥るケースが発生した。

ルールの不整合により、連携動作するAIエージェント間で無限ループが起こりうる

AIエージェントの挙動を可視化/分析し、プロセスを正常化する

 上述の例において、2つのAIエージェントは、それぞれのルールに従って正しく動作している。ただし、そのルールに“食い違い”があったために、互いにボールを投げ合う状況になってしまった。これが、AIエージェントにおける「隠れた無限ループ」だ。

 同社はこの問題をエージェントマイニングによって解決した。処理プロセスに潜在していたルールの不整合を発見し、受付エージェントに「5000ユーロ以上の場合は明細資料を必須とする」というルールを追加した。さらに、エージェント間でタスクの往復が3回を超えた場合は、自動的に人間にエスカレーションする設定にして、無限ループからの脱出を可能にした。

 別の事例として、AIエージェントを導入したコールセンターの課題を解決したケースも紹介された。このコールセンターではAIによる自動応答化を進めていたが、AIによる解決率が低く、人間のオペレーターにエスカレーションされる割合が高かったため、十分な成果が得られていなかった。

 そこでCelonisのエージェントマイニングを活用し、「本来はAI単独で解決できたはずのエスカレーション」を抽出するとともに、その原因を特定。修正を行って有人対応の工数を削減するとともに、顧客の課題解決までにかかる時間も短縮した。

AIエージェントを含むプロセスの流れを可視化することで、改善の道筋が探りやすくなる

 このコールセンターではほかにも、AIが同じ質問を繰り返すループを特定し、会話シナリオを最適化することで、顧客満足度の低下を抑制。離脱の原因となる挙動を可視化し、モデルの回答精度を向上させることで、顧客接点の品質を維持しているという。

 Celonis日本法人 社長の村瀬将思氏は、「人が対応する際に生じるプロセスの課題は、AIエージェントに置き換わっても同様に発生する。複数のエージェントをモニタリングし、ループや例外処理を可視化/改善することで、エージェントが顧客満足度を下げてしまう事態を防ぐことができる」と語る。

Celonis日本法人 代表取締役社長の村瀬将思氏

 Celonisはこれまで、人間の業務プロセスを可視化する「プロセスマイニング」や、PC操作などの作業を可視化する「タスクマイニング」を展開してきた。AIエージェント時代の到来にあわせて、ここに「エージェントマイニング」が加わることになる。

 同社では、エージェントマイニングをエンタープライズAI戦略の一環と位置づけており、主にIT部門などへの提案を進める方針だ。Celonis日本法人のリソース的な制約もあり、現状ではハイタッチ戦略が中心となるが、AIエージェントは現場主導で導入されるケースも多く、エージェントマイニングも現場主導で活用できるGTM戦略も求められそうだ。

RoAI(AI投資対効果)創出の鍵を握るのは「ビジネスコンテキストへの理解」

 村瀬氏は、AIエージェント活用をめぐる課題として、「RoAI(AI投資対効果)」が十分に創出されていない点を指摘した。

 ガートナーは、2027年末までにエージェント型AIプロジェクトの40%以上が頓挫すると予測する。また、ボストンコンサルティンググループも、コンテキストや境界線を持たない自律型エージェントが、大規模な業務エラーを引き起こす危険性に警鐘を鳴らしている。

 「AI投資は増えているが、多くがPoC(概念実証)のまま終わってしまったり、情報検索や文書要約といったタスク単位の効率化にとどまったりしている。企業のP/LやB/S(経営指標)を大きく改善するほどの価値を生めていない企業が多いのが実態だ」

AI投資額が急拡大する一方、それが経営指標の改善に結びついていない

 加えて村瀬氏は、企業の経営層がAIエージェントの導入に期待する「3~5倍の生産性向上」が実現できていない背景には「コンテキストの欠如」があると指摘する。「RoAIを最大化するには、コンテキストが重要だ」。

 Celonisの調査レポート「2026年プロセス最適化レポート」によると、AIエージェント導入の“2大障壁”として、「社内の専門知識不足」(47%)と「ビジネスコンテキストのAI側の理解不足」(45%)が挙がっている。

 「高度な知能を持つAIでも、自社の複雑な業務プロセスを把握していなければ、実業務で最適な判断やアクションはできない。AIを単なる補助ツールから“継続的に価値を創出するエンジン”へと進化させるには、現実の業務構造を正確に解釈、実行させる『エンタープライズAI』が不可欠だ」

 村瀬氏は、コンテキストへの理解が必要である理由を、具体的な事例を挙げて説明した。

 あるアプリケーションを利用している際に「ネットワーク通信が遅い」という課題が発生する。一般的なITSM(ITサービス管理)ツールでは、「ネットワークのトラブル=ネットワーク環境に問題がある」と考え、ネットワークチームに調査依頼のチケットを発行する。しかし、そのアプリケーションにまつわる過去のチケットプロセスを参照すると、最終的には85%のチケットがアプリケーションチームに転送されている事実がある。このプロセスコンテキストを理解することで、直接アプリケーションチームに調査依頼を出すことができ、タイムロスのない適切な対応が可能になる。

 村瀬氏は、このようにプロセスを理解したAIを「呼吸するAI」と表現した。

 なおCelonisでは、2027年度の日本における事業方針として、(1)エンタープライズAIやITモダナイゼーションなどによる「Business Critical領域へのシフト」、(2)テクノロジーパートナーとの協業による「Platform Play」、(3)顧客やパートナー企業との「コミュニティのさらなる活性化」、(4)エンタープライズAIを実現するための「Aハッカソンとアイデアソンの推進」という4点を挙げている。

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