ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第869回
半導体プロセスの新たな覇権! インテルのDNNプロセッサーはAMDやMetaを凌駕する配線密度と演算密度
2026年03月30日 12時00分更新
インテルはこれまでもDNN(Deep Neural Network : 深層学習)プロセッサーをいくつか試作している。直近の発表は2022年のVLSI シンポジウムではIntel 4を利用したCNC(Compute Near LLC)の実装である。
この時の仕組みは、LLCのすぐそばにCompute Unitを置くことで、疑似的にPIM(Processor In Memory)に近い効果を得られるようにするというものであった。ただこれは現在のPIMにも共通する話だが、以下の制約が付いて回ることになる。
- SRAMとCompute Unitを同一プロセスで構築すると、微細化してもSRAMのサイズが減らないので効率が悪くなる。だからといって大きめのプロセスを使うと、計算密度が上がらない。
- DRAMと組み合わせるのはComputationの側に制約が大きい。
- SRAMにしてもDRAMにしても、別ダイにしてチップレットなどを使うのは、結局データ移動の消費電力が大きくなるから効率的ではない。
解決案はあって、ComputationとSRAMを別々のダイで製造し、3D実装すればいい。これを実行してしまったのが、インテルがISSCC 2026のPaper 10.6で"A Hybrid-Bonded 12.1 TOPS/mm 56-Core DNN Processor with 2.5Tb/s/mm2 3D Network on Chip"として発表した内容になる。
ちなみにインテルは今回Paper 30.9で"A 147TOPS/W, 250TOPS/mm2, Fully Synthesizable, Digital Compute-in-Memory Accelerator Supporting INT8×INT8 with Zero-Point Quantization in Intel 18A Technology"という論文も発表しており、Intel 18Aで製造しているところは似ているのだが、構造もチップも異なるので、並行して複数のDNNプロセッサーの研究をしていたわけだ。
PIMの課題を3D積層で解決
DNNプロセッサー研究の変遷
さてこちらの発表だが、タイトルの通り56コアのDNNプロセッサーであるが、その設計動機と具体的な構造が下の画像である。
具体的な構造。DNN PEとRISC-Vのコアがどちらも56個あるので、その意味では112コアと称するのが正しい気もするのだが、DNN PEはあくまでもRISC-Vコアのアクセラレーターという位置付けなのかもしれない。ただDNN PE同士も相互接続している時点で少し違う気もする
RISC-Vコアの方は、2017年のVLSIシンポジウムで発表されたコアを若干手直ししたRV32(32bit RISC-V)のもので、DNN PEはインテルの独自設計によるものである。
RISC-VコアとDNN PEはルーター経由で接続されており、またどちらにも48KBのローカルSRAMが接続されている。つまり1コア相当あたりで96KB、これが56コアで5376KBとなり、5.25MB SRAMになる。DNN PEはIntel 18A、RISC-VはIntel 3で製造され、間は9μmピッチのHybrid Bondingで接続されている。これはFoveros Direct 3Dベースであろう。
下の画像がNOCの構造である。この図では上下左右方向のメッシュしか見えていないが、1つ上の画像でNoCを確認すると、ローカル接続以外にNorth/South/East/WestとUpないしDownの5方向のリンクが用意されており、この図で言うとTop TileやBot(Bottom) Tileの奥行き方向もちゃんと接続されている3次元接続のメッシュ構造だ。
NOCの構造。56コアを7×8ではなく14×4という構成にした理由を知りたいところである。Hop数で言えば、最長のケースではむしろ増える(7×8では14Hopで済むが、14×4なら17Hopになる)一方、あまりメリットが思いつかない
ルーターの構造は下の画像のとおり。6方向のメッシュではあるが、バス幅は64bitと結構大きいためか、中央にクロスバーを入れているのは妥当な構成だと思える。
Tail Detect(自身がメッシュの最後端であればそれ以上先にパケットを転送しない)制御がOut Portに入っているのはわかるのだが、In Port側にも入っているのが今1つ理解しにくい。単純に末端の先からはデータが来ないので、In Portの入力を無効化するだけかもしれない。なお、この図、In PortとOut Portが逆ではなかろうか? と思うのだが、論文の図も一緒なので間違いではなさそうだ。
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