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「月収5万円」から1500人の組織へ アイレットの成長を見届けた先に進む道

AWS黎明期を駆け抜けた後藤和貴の卒業――東京リージョン開設前夜からAI時代へつなぐ、エンジニアの心得

2026年03月17日 11時00分更新

文● 大谷イビサ 写真●曽根田元

提供: アイレット

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今のAI時代はクラウド勃興期に共通項がある

 その後、アイレットは2017年にKDDIグループ入り。後藤さんが入社した当時20名だった社員はすでに1500人(!)に拡大し、グローバルでのAWSパートナーアワードを何度も受賞してきた。現在はAI駆動型開発で多くの実績を上げており、4月からはKDDIアイレットとしてさらなる成長を目指す。

 クラウド黎明期から市場を切り拓いてきたサーバーワークスも2019年に上場を果たし、クラスメソッドも年商950億円の企業に成長した。AWSを退職した玉川さんもIoTプラットフォームを手がけるソラコムを立ち上げ、リアルワールドとAIの接合を目指しつつ、グローバル市場にチャレンジし続けている。

当時の写真を振り返る横田さん、玉川さん、後藤さん

 東京リージョン開設から15年たった今、後藤さんは「クラウドは『透明な存在』になった」と振り返る。「もはやIaaSやPaaSみたいな言い方もしないし、もはやAWSを使うとあえて言わないことすらあります。それくらい、あって当たり前の存在になったのではないかと思います」(後藤さん)。

 そして、現在はAI全盛期だが、15年以上をクラウドとともに業界を泳いできた5人に聞くと、クラウド勃興期と似ているところもある振り返る。不安も期待も入り交じった感情にさいなまれながら、いつのまにか当たり前のように使っていたという体験だ。一方で、クラウド時代になかったスピードや可能性がAIの領域には見えるという。

「10年以上前、僕が相対していたエンタープライズ企業には、AWSを利用していたエンジニアはほとんどいませんでした。でも、クラウドを使い始めたエンジニアは、面白さや期待を感じると同時に、こんなに便利になったら、インフラエンジニアの仕事はなくなるかもしれないという恐怖も感じていました。僕は漠然とエンジニアの働き方が大きく変わるなと思っていたのですが、シアトルで出会ったメンバーと話してみると、みなさん同じことを感じていたのです」(瀧澤さん)

「ソフトウェアエンジニアって息を吸うように勉強しなければならないつらい職種。技術の進化はクラウドのときも相当速かったですが、AIはクラウドをはるかに超えるスピードです。去年のAIツールや開発手法がもう陳腐化してしまう世界。今後のエンジニアはまずは課題を解像度高く捉え、なにを使えばいいかを見極めるコンシェルジュ的な能力が大事になってくると考えています」(後藤さん)

「僕は今の若い人がうらやましい。クラウドとAIも当たり前のように使え、これからロボットも使えるようになる。大学生のとき、こんなの浸透するまでに時間かかるんじゃないの?と呼ばれる技術を今や全員が使えるんです。クラウドの普及を見てきたから、AIも津々浦々まで浸透するのにはやっぱり5~10年かかると思っていますが、今の進化のスピードだともっと前倒しされてしまうかも。いずれにせよ、先はわかりません(笑)」(横田さん)

「横田さんはうらやましいと言うけど、僕らもコマンドインターフェイスから知っている黄金世代だとも思います。15年前にクラウドの波が来て、今やAIの波。しかも、恐ろしいスピードで進化するので、ワクワクします。僕も今年で50歳になりましたが、いずれにせよこの先の世界を見届けたいという欲望があります」(玉川さん)

「コンピューターに触れ始めて43年目になりますが、あきらかに今が一番面白い。今振り返ってみれば、クラウドとはAI時代のプロローグだったのかなとも思います。クラウド黎明期には『これでITインフラが民主化される』という期待がありましたが、AI時代では『高度な頭脳が民主化される』、そんな期待に胸を躍らせています」(大石さん)

全方位で駆け抜けた16年間 この経験でAIをサービスや組織に溶け込ませたい

 そして、後藤さんは16年勤めたアイレットを2026年3月で卒業し、新たなチャレンジに身を投じる。事業会社に転職し、AIを前提としたサービス設計や組織作りを推進。クラウドやAIを組織にインストールし、顧客体験を向上していくサービス構築を行なっていくという。

 卒業の理由について後藤さんは、「会社も1500人くらいまでの規模になり、頼れるメンバーも当然多くなってきていて、さらにビジネスと技術を掛け合わせて自身を進化させることができるエンジニアも増えてきました。個人としては会社の成長に合わせてセールスやマーケティングチーム、新規事業、一通りやらせてもらい、全方位的にやりきった感があります」とコメントする。

 その上で、「子供が産まれたことやその他にも細かなきっかけがいくつか重なった時期に、次にチャンスがあるならば身近な人が喜んでくれるような体験価値の向上にチャレンジしてみたいと思っていました。この歳だけど、大好きな新しいことに、ワクワクすることにチャレンジする機会がワンチャンあるんじゃないかと」ということで、ITやAIを使う側の事業会社に転職するという。

 技術革新のすさまじいAIを、事業会社にどのようにインストールしていくかが大きなテーマ。今後について後藤さんはこう語る。

「クラウドが『本当に使えるのか』と問われた時代から、誰もが当たり前に使う時代になったように、AIも数年後には特別なものではなくなると確信しています。アイレットでの16年間、エンジニアリングだけでなく事業開発や組織作りまで全方位で駆け抜けた経験は、新しい技術を社会に届けるための大きな糧になっています」

「次の挑戦では、この事業と技術を掛け合わせる知見を活かし、AIをサービスや組織に自然に溶け込ませ、これまでにない顧客体験を創造することで、企業価値の向上を牽引していきたいと考えています」

後藤さん、卒業おめでとうございます!

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