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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第859回

組み込み向けのAMD Ryzen AI Embedded P100シリーズはZen 5を最大6コア搭載で、最大50TOPSのNPU性能を実現

2026年01月19日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII

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すべてZen 5コアで構成されている
Ryzen AI Embedded P100シリーズ

 Ryzen AI Embedded P100シリーズのコア数は4ないし6ということで、Krackan PointベースのRyzen AI 5 330/340と、今回のRyzen AI Embedded P100シリーズの仕様をまとめたのが下表である。

Ryzen AI 5 330/340シリーズとRyzen AI Embedded P100シリーズの仕様
Ryzen AI Ryzen AI Embedded
型番 5 330 5 340 P121 P132 P121i P132i P122a P132a
CPU(GHz) Zen 5 1 3 4?(1?) 6?(3?) 4?(1?) 6?(3?) 4?(1?) 6?(3?)
Zen 5c 3 3 0?(3?) 0?(3?) 0?(3?) 0?(3?) 0?(3?) 0?(3?)
Max Clock
(GHz)
Zen 5 4.5GHz 4.8GHz 4.4GHz 4.5GHz 4.4GHz 4.5GHz 3.65GHz 3.65GHz
Zen 5c 3.4GHz 3.4GHz ? ? ? ? ? ?
Base Clock
(GHz)
2GHz 2GHz ? ? ? ? ? ?
L3 Cache
(MB)
8MB 16MB 8MB 8MB 8MB 8MB 8MB 8MB
GPU Core 2 4 2 4 2 4 2 4
GPU Clock
(GHz)
2.8 2.9 2.7 2.8 2.7 2.8 2 2.4
NPU(TOPS) 50 50 30 50 30 50 30 50
Memory
(MT/s)
LPDDR5x 8000 wo/ECC 8000 wo/ECC 7500 w/ECC 8000 w/ECC 7500 w/ECC 8000 w/ECC 7500 w/RAS 8000 w/RAS
DDR5 5600 wo/ECC 5600 wo/ECC 5600 w/ECC 5600 w/ECC 5600 w/ECC 5600 w/ECC N/A N/A
TDP(W) Default 28 28 28 28 28 28 28 45
cTDP 15~28 15~54 15~54 15~54 15~54 15~54 15~30 25~45

 単純にEmbedded向けに転用しただけ、とは言い難く、変更箇所が多い。まずぱっと見てわかるのが、Ryzen AI 5 330/340はZen 5コア(1or3)+Zen 5cコア×3の構成なのに対し、Ryzen AI Embedded P100ではすべてZen 5コアと明記されている。

 現実問題としてはコアを作り替えたりはしておらず、Ryzen AI Embedded P100の方もZen 5+Zen 5cの混載になっているはずだが、例えばRyzen AI Embedded P132の仕様を見ても、Zen 5/Zen 5cの区別をせずに6コア/12スレッドだけ明記されているあたり、このあたりEmbedded SKUでは細かく区別しないのかもしれない。

 動作周波数に関しては、Ryzen AI Embedded P100のベースクロックが明記されていない。最大クロックはRyzen AI 5 330/340に比べるとやや控えめに設定されている。特にAutomotive GradeのP122a/P132aに関しては、3.65GHzまで動作周波数を落としているのは、やはり自動車環境では放熱が厳しくなることへの対応かと思われる。

 3次キャッシュはRyzen AI 5 340が16MBで、おそらく物理的には16MBが搭載されていると思うのだが、Ryzen AI Embedded P100は全製品8MBに制限されている。理由は不明であるが、やはり実質的な消費電力を減らしたいのだろうか?

 メモリーは、Ryzen AI Embedded P100の方は4コアのP121/P121i/P122aがLPDDR5x-7500までに制限されている(6コアの方はLPDDR5x-8000までサポート)。そして全製品ECCのサポートが付いており、特にAutomotive Gradeの方はRAS機能も付加されている。というより、本来Ryzen AI Pro向けのRAS機能を有効化しているというべきだろう。

 さらに、自動車向けのP122a/P132aはDDR5 DIMMのサポートがないが、これは振動の多い車載環境ではDIMMソケットを利用するのは非現実的で、基板上に実装するのが一般的である。であればLPDDR5xのサポートだけで十分と判断されたものと思われる。どうしてもDIMMが必要というのなら、DIMMを基板に水平になるように実装し、この上から緩んで外れてしまわないような堅固なカバーを被せるなどの対処をする形になるが、コストと実装面積が上がるだけでメリットが皆無である。

 全製品ともNPUは有効化されているが、4コア製品に関しては30TOPSに性能が下げられている。これはおそらく製品差別化の目的だろう。余談になるが、Ryzen AI 5 330/340に搭載されるNPUは、マイクロソフトのCopilot+以外では現状利用できない。これは単純にROCmのサポートがStrix Pointだけで、Krackan Pointをサポートしていないためである。

 少し古いところではROCm 6.4.4(2025年9月24日付)のリリースノートではサポート製品に「AMD Ryzen AI 300 Series (Strix Point only)」と明記してあるし、最新のROCm 7.1.1(2025年11月26日付)のLinux support matrices by ROCm versionにはサポート機種が「AMD Ryzen AI 9 365」と明記されており、Krackan Pointはサポート外であることが言外に示されている。ただこれは純粋に製品差別化のための措置と思われ、Ryzen AI Embeddedは全製品ROCmのサポートがある(厳密には差があるのだが、これは後述する)。

 TDPはRyzen AI Embedded P132a以外28Wで、cTDPは15~28Wである。P132aが45Wと高めなのは、車載向けの場合放熱が非常に厳しいので、45W相当くらいまでの冷却設備が必要ということかと思われる。逆に言えばP122aは、実質的には20W未満の消費電力になっており、28W設計でも対応可能と思われる。

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