「Lenovo Tech World @ CES 2026」レポート
スーパーエージェント「Qira」やギガワット級AIファクトリーを発表 Lenovo年次イベント
2026年01月09日 07時00分更新
スーパーエージェントの第一歩となる「Qira」を発表
Lenovoでは、ギガワット規模のインフラと並行して、ユーザー体験を変革する技術開発も進めている。ハイブリッドAIを実現するユーザー中心の技術について、LenovoのCTOを努めるトルガ・クルトグル(Tolga Kurtoglu)博士が解説した。
LLMの世界では、すでにさまざまな特徴を持つモデルが登場している。クルトグル氏は「AIの未来はモデルの宇宙であり、私たちが望むようにAIに機能してもらうためには、多様なモデルが必要だ」と語る。
たとえば、軽量なモデルをスマートフォン上で動作させることで、オフラインの状態でも素早く文章を修正したり、簡単な質問に答えたりすることができる。一方、複雑な画像や動画を生成させたり、高度な分析処理を行ったりする場合は、データセンターのハイパワーなサーバーで動作する大規模モデルが必要だ。
それぞれのモデルは特定の用途に特化しており、それを適材適所で使い分けることで、ユーザーの能力を拡張し、生産性を高めることができる。最終的に必要なのは、こうした複数のAI機能を統合し、ユーザーの意図を深く理解して複雑なタスクを自律的に実行できる次世代のAIアシスタント「スーパーエージェント」である。
このスーパーエージェントを実現するためには「3つの要素が必要だ」と、クルトグル氏は語る。
要素の1つ目は、モデル間の調整と協調を図る「インテリジェントモデルオーケストレーション」。専門モデルのプールにアクセスし、ユーザーのニーズに最適なものを特定する。2つ目は「エージェントコア」。パーソナライズされた知識ベースを持つ高度な認知エンジンで、例えば過去6ヶ月間の会議記録から今朝のメッセージまでをレビューし、ユーザーの意図を理解して行動することができる。。3つ目は、複数のAIエージェントが協調動作する「マルチエージェントのコラボレーション」だ。
今回のTech Worldで、Lenovoはスーパーエージェントの初期段階といえる「Qira」を発表した。これは、LenovoとMotorolaが提供するPC、スマホ、タブレット、ウェラブルのデバイスで動作する“統合型パーソナルAI”であり、ユーザーの同意に基づいてデバイス、アプリ、サービス全体で連携するという。
ThinkSystemブランドの推論サーバー
NVIDIAとのAI Cloud Gigafactoryに加え、Lenovoは「ThinkSystem」ブランドの推論サーバーも発表した。
ヤン氏は「LLMが主導したAIコンピューティングが現在、推論の時代に入りつつある」と述べる。この変化を、「AIを構築することから、AIを活用することへのシフト」としながら、推論ではオンプレが重要な役割を果たすという。「推論はデータが生成される場所の近くで処理を行う必要がある」とヤン氏。推論とデータ生成が近接すれば、より速い応答が得られるからだ。また、データ主権(ソブリン性)やセキュリティの要件も後押しになる。
エッジAIで推論を行うことで、たとえば工場ではリアルタイムのメンテナンスアラートを受け取ることが可能となり、小売ならば在庫が少なくなったときに即座に通知を受け取り、欠品を防ぐことができる。「オンプレミスにおけるAI推論は、企業に真の競争優位性をもたらす」とヤン氏は強調する。
実際に、Futurumの予測によれば、AI推論インフラのグローバル市場規模は、2024年の50億ドルから2030年には488億ドルへ、年平均成長率46.3%というペースで急拡大する見込みだという。
Lenovoが新たに発表したのは、「Lenovo ThinkSystem SR675i/SR650i/ SE455i」の3機種だ。中でも最上位のThinkSystem SR675iでは、AMDの「Helios Rackscale AIアーキテクチャ」を採用し、AMDのEPYC CPUとInstinct GPU(業界最高レベルの高帯域幅メモリを搭載したMI455X)を統合している。AMDのCEOであるリサ・スー(Lisa Su)氏は、「大量のデータを高速に処理し、大規模なAI処理を効率的に実行できる」と太鼓判を押す。すでに2025年12月、Hewlett Packard Enterprise(HPE)がHelios AIラックを発表済みだが、「Lenovoも最初に(Heliosを)採用するベンダーの1社になる」とスー氏は喜んだ。
こうしたAIシステムに加えて、AIの戦略立案段階から設計、実装、管理まで支援する「Lenovo AI Service」も提供される。さらに、従量課金モデルの「Lenovo TruScale」により、企業は柔軟なスケーリングが可能だという。AIユースケースライブラリの「Lenovo AI Library」には、数百の実証済みソリューションが含まれ、90日以内に価値実現が可能だ。
Lenovo AI Service担当のケン・ウォン(Ken Wong)氏は、AI Libraryで提供するユースケースの例を3つ紹介した。
1つ目は、AI駆動のサプライチェーンプラットフォーム「iChain」だ。Lenovoの「ThinkBook Plus Auto Twist AI PC」は2700点以上のコンポーネントで構成されるが、iChainを利用することで、AIを使用してすべての部品を適切な時に適切な場所に届けることができているという。天候や供給不足などの問題に迅速に対応できるようになり、180市場への出荷を支援していると述べた。
2つ目は、Lenovoが公式テクノロジーパートナーを務めるFIFA(国際サッカー連盟)向けに開発した「Football AI Pro」だ。ペタバイト級のデータ、5000億ページ相当のテキストを数秒で検索する能力を活用するもので、コーチは相手に対する戦術を検討したり、選手は試合分析をパーソナライズでき、アナリストはビデオクリップや3Dアバターを使用してチームのパターンを比較できる。多言語対応により、2026年ワールドカップ出場全チームの言語をサポートしているという。
最後に、AIロボティクスの分野から、世界最大級の電力網のためにAI搭載ロボットを開発した事例を紹介した。このロボットは移動しながら送電グリッドを検査し、98%の精度で問題を検出できるという。危険な環境から人間の作業員を遠ざけることができ、場合によってはその場で修理も行うという。
ヤン氏は最後に、Lenovoの強みを次のように説明した。
「ハイブリッドインフラ、データ、AIモデル、エージェントプラットフォームを統合することで、営業から法務まで、バリューチェーン全体をカバーするAIソリューションライブラリを構築した。これがLenovoのハイブリッドAIの強みだ」








