歴史的建造物と高層ビルが融合! 都市開発マニアが案内する「丸の内建築ツアー」 第26回
こいつがあるから有楽町はおもしろい! ”エンタメの街”という色付けの発信地「有楽町マリオン」はいかにして建てられたのか?
高層ビルや歴史的建造物など、丸の内の建築群を現場のレポートを交えながら紹介する連載「丸の内建築ツアー」。今回は、建築において窓と窓の間に縦方向配置される飾り柱「マリオン(Mullion)」で覆われた象徴的な外観デザインに加え、数寄屋橋の待ち合わせ名所として親しまれる大型からくり時計を備えた都市型複合ビル「有楽町マリオン(有楽町センタービル)」についてご紹介します。
有楽町マリオン(有楽町センタービル)のデザイン
有楽町マリオン(正式名称:有楽町センタービル)は、JR有楽町駅と東京メトロ銀座駅にほど近い、東京都千代田区有楽町二丁目に建つ大複合商業施設・文化施設等から構成される超高層複合ビルです。丸の内と銀座という都内有数の商業・業務エリアの中間地点に立地し、商業、映画・劇場、文化発信機能を高密度に内包する都市型複合施設として広く知られています。
建物は1期ビルとして建設されたT棟とA棟からなる「本館」と、2期ビルとして建設された「別館」の二棟で構成され、延床面積は約89,515㎡に及びます。規模は地上14階、地下4階、塔屋2階、高さ78.4mで、構造は鉄骨造、鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄筋コンクリート造を組み合わせた構造となっています。百貨店や専門店に加え、映画館や劇場、ホールといった多様な目的かつ、不特定多数の利用者が来館する施設を有することから、高い耐震性と防災性能が重視されて設計・計画されています。建物全体を1期ビルの4つと2期ビルの1つの計5つのブロックに分節化し、各ブロックの間に、水平・垂直の緩衝帯(バッファゾーン)を設けることで、火災時の二重の防火区画による延焼防止や全館同時避難時の混乱を避けるといった機能を有しています。更に9階以上には映画館やホール等があり、緊急時は8階の水平バッファゾーンに設けられた屋外広場に避難すれば、地上まで降りなくても屋外に出ることが可能となっています。
施設構成の特徴として、低層部には商業機能、中高層部には映画館や劇場、ホールなどのエンターテインメント機能を集約している点が挙げられます。現在は、107店舗が集積する「ルミネ有楽町」および成人男性をメインターゲットとした「阪急メンズ東京」を中心とする商業ゾーンに加え、有楽町朝日ホール、ヒューリックホール東京、I’M A SHOW、プラネタリウム、ドルビーシネマなど、多様な文化・娯楽施設が立体的に配置されています。こうした構成により、「劇場街・有楽町」という地域イメージを現代的に継承・発展させる役割を担っています。
建築デザインにおける最大の特徴は、外装に採用されたカーテンウォールと、縦方向のリズムを強調したファサード構成です。建物の愛称であるアルミ製の「マリオン」と熱線反射ガラスを組み合わせた外観は、巨大な建築ボリュームでありながらも軽快で洗練された印象を与えています。晴海通り側には緩やかな曲面を持たせることで、敷地条件を活かしつつ、四方正面性を意識した造形が採用されています。
内部空間では、建物中央部を貫くギャラリー状の歩行者空間「センターモール」や、吹き抜けを活かしたセンターロビーが特徴的です。特に8階から11階にかけて展開されるロビー空間は、照明やガラスの反射効果によって幻想的な雰囲気が演出され、映画館や劇場へ向かう動線そのものが非日常的な体験となるよう設計されています。
また、南側の数寄屋橋側ファサードには大型からくり時計「マリオン・クロック」が設置されており、有楽町エリアを代表する待ち合わせスポットとしても知られています。このからくり時計は、午前10時から午後10時までの間、毎正時に直径約2.6メートルの時計盤がせり上がり、約4分半にわたるからくり演出が行われるのが特徴です。内部の装置は圧縮空気を用いて駆動しており、登場する人形は高さ約50センチメートルとされています。
毎正時に行われる演出は多くの人々を惹きつけ、長年にわたり待ち合わせの名所として親しまれてきました。セイコータイムシステムと乃村工藝社が共同制作したこのからくり時計は、建築と都市生活を結びつけるランドマークとして有楽町マリオンの印象を強く形づくるとともに、1980年代のからくり時計ブームを象徴する存在の一つともなっています。
ちなみに、1984年の開業と同年に公開された特撮映画「ゴジラ」では、有楽町マリオンの壁が破壊され、目の前を通過していた新幹線を鷲掴みにする印象的なシーンが描かれていました。この場面をめぐっては、「撮影当時、オープン前の建物を破壊してはならないという指示があった」といわれた一方で、2018年の中野昭慶特技監督インタビューでは「数寄屋橋交差点を踏み抜く演出上の必要から、結果的に建物が壊れた」とされています。ビル関係者からカットを求める声が上がったことも当時あったようですが、公開初日に有楽町マリオン内の日劇東宝で鑑賞していた観客からは歓声が上がったと伝えられており、建物そのものが話題性を持つ存在であったことを象徴するエピソードとなっています。
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