AIエージェントに選択肢 「AWS re:Invent 2025」レポート 第7回
これ1本でわかる!re:Invent 2025の基調講演ハイライト
200万人が視聴し、6万人がラスベガスに集うre:Invent 2025 4つの基調講演で見えたAWSの進む道
2025年12月12日 07時00分更新
20年間の蓄積があるからこそAIワークロードも満足させられる
4日目は2つの基調講演が行なわれた。午前中に開催されたのは、例年初日の夜に行なわれていたピーター・デサントス氏による講演。シリコンやシステムまで深掘りし、20年取り組んできたAWSの技術的なコアを紹介する内容となった。
デサントス氏が強調したのは、AI時代になった今こそクラウドのコア属性である「セキュリティ」「可用性とパフォーマンス」「弾力性」「コスト効率」「俊敏性」が重要になるという点だ。その点、AWSは2010年代からベアメタルサーバーのパフォーマンスを仮想化環境で実現するNitroシステムを構築し、自社製のGravitonの開発と継続的な改善にも踏み込んだ。
今回は前世代の5倍のL3キャッシュを搭載した「Graviton5」を新たに発表し、EC2で最高の価格性能比を実現した。また、AIに関してもTrainiumチップを強化し、コスト性能比の高いワークロードを実現。同じサーバーボード上にTrainium、Graviton、NitroというAWSのカスタムチップを搭載し、高いコスト効果を実現しているという。
ソフトウェア面では、新たにPythonからAWSハードウェアへのアクセスを可能にするNKI(Neuron Kernel Interface)を発表。さらにPyTorchのネイティブ環境を提供し、CUDAからNeuronへの変更のみでTrainiumを利用できるようになった。シリコンと開発環境のレベルでもAIの革新を支援しており、登壇したAIスタートアップのDecart(デカルト)は、リアルタイムなビジュアル生成AIを会場で披露し、聴衆も大いに沸いた。
デサントス氏の基調講演は、AI時代においても20年培ってきたAWSの基盤がいまだ持って有用であることのアピールだった。自社製のカスタムチップ、ハードウェアを制御するレイヤーまで含めて、最適化を続けた結果として提供されるAWSの最新サービス。飽くなきイノベーションへの探求は、20年間変化せず、これからも変わることはないだろう。
エンジニアは終わるのか? ボーガスCTOがビルダーに訴えたかったこと
4日目午後の基調講演は、re:Inventで長らくビルダーの進むべき道を示してきたヴァーナー・ボーガスCTOのラスト基調講演になる。
コードまで書いてくれるAIまで現れた今年、多くのエンジニアの頭をかすめた「エンジニアは終わる?」という疑問に対して、ボーガス氏は「Meybe(たぶんね)」と冗談めかしつつ、「みなさんが進化するなら、それはNoだ」と力強く答える。
アセンブリが生まれた1950年代にさかのぼり、コンパイラー、構造化言語、オブジェクト指向、モノリスからサービスへ、オンプレミスからクラウドへ、そしてLLMをベースとした新たな開発へ。エンジニアの職を脅かすとされてきた新しい技術は、あくまでツールの進化であり、その仕事は長らくエンジニアがやってきたものだ。これは今も変わらないとボーガス氏は訴える。
歴史から学ぶのはボーガス氏の得意とするところだが、今回はさまざまな科学者が好奇心を持ち、科学や芸術の面でさまざまな進展を見せたルネッサンス期にさかのぼる。そして、そのルネッサンス期の科学者の資質に学ぶべきだとボーガス氏は訴える。ルネッサンス期の開発者としての資質としてボーガス氏が挙げたのは、「好奇心を持つ」「システムとして考える」「コミュニケーションする」「自らが当事者となる」、そして知識の深さと広さを持つ「Polymathである」ことの5つだ。
ボーガス氏が最後にビルダーに語ったのは、「自分たちの仕事に多くの人たちは気づかない」という事実。Amazonの購入ボタンをクリックする人も、商品カタログを見る人も、サプライチェーンに関わる人も、エンジニアの仕事について語ってくれることはない。だからこそ、「自分の仕事に誇りを持ってほしい。プロとしての誇りを持ち、最高のビルダーとしてきちんと仕事することが大事」というのがボーガス氏の最後のメッセージ。「私はみなさん方、ビルダーを非常に誇りに思っている」と胸いっぱいの感謝の気持ちを告げたボーガス氏は、満席のスタンディングオベーションの中、講演を終えた。

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