意外とゲーミング用途もアリ!?
新車のSUVみたいな価格に驚愕!450万円超のAMD Ryzen Threadripper PRO 9995WX搭載PC、どんな人がどんな用途で買うの?
2025年12月20日 11時00分更新
ゲーミングPC界隈ではAMD Ryzen™シリーズが快進撃を続けているが、ワークステーション用途でもAMD Ryzen™ Threadripper™(以下、Threadripper)が人気を集めている。セブンアールジャパンが運営するパソコンショップSEVENでは、その最上位モデルの「Ryzen Threadripper PRO 9995WX」(以下、Threadripper PRO 9995WX)搭載PCを扱っている。
Threadripper PRO 9995WXは96コア/192スレッドというモンスタースペックがウリだが、単品価格は226万円超とお値段も怪物級。必然、それを採用するPCの価格も300~500万円と新車のミニバンやSUVが買えてしまう超ド級のモデルになるが、パソコンショップSEVENには複数のラインアップが存在するというのだから驚きだ。GeForce RTX 5090搭載ビデオカード採用モデルなら、400万円超えのモデルもある。
GeForce RTX 5090搭載ビデオカードとSilverStone「SST-RM52」を採用する、「ZEFT RTH61S」の定価(税抜き)で417万9800円(税込みで459万7780円)。原稿執筆時点(2025年12月16日)では、それが65万1000円引きで352万8800円(税込みで388万1680円)になっていた。ふだん見ているゲーミングPCとはかけ離れすぎており、もはや高いのかお買い得なのかよくわからない額だ……
| ZEFT RTH61Sの主なスペック | |
|---|---|
| CPU | AMD「Ryzen Threadripper PRO 9995WX」 (96コア/192スレッド、最大5.4GHz) |
| CPU クーラー |
SilverStone「SST-XE360-TR5」(簡易水冷、360mmラジエーター) |
| マザー ボード |
ASRock「WRX90 WS EVO」(AMD WRX90、SSI-EEB) |
| メモリー | 256GB(64GB×4)、DDR5-5600 ECC |
| ストレージ | Western Digital「WD_BLACK SN7100 NVMe SSD WDS200T4X0E」 (2TB M.2 SSD、PCIe 4.0) |
| ビデオ カード |
GeForce RTX 5090、32GB GDDR7 |
| 通信規格 | 有線LAN(10GbE)×2、IPMI LAN |
| PC ケース |
SilverStone「SST-RM52」(SSI-EEB) |
| 電源 ユニット |
ASRock「Phantom Gaming PG-1300G」 (1300W、80 PLUS GOLD、Cybenetics PLATINUM、LAMBDA A) |
| OS | Windows 11 Pro |
| サイズ | 220(W)×605(D)×440(H)mm |
| 直販価格 | 459万7780円(税込み) |
本稿では、そんなThreadripper PRO 9995WX搭載PCを囲みながら開催した座談会の模様をお届けする。メンバーはパソコンショップSEVENの中嶋孝昌氏、真重翔氏、中條拓海氏のほか、日本AMDの佐藤美明氏とASRockの原口有司氏にもご参加いただいた。
Threadripper PRO 9995WXを搭載したハイエンドマシン
――今日はよろしくお願いします。まずはZEFT RTH61Sについて、そのコンセプトを説明していただけますか?
中嶋氏:弊社は以前からThreadripper搭載モデルを扱っていまして、非常に高価ですので数が多く出るわけではないですが、その人気は堅調に推移しています。そして、今回のZEFT RTH61Sは、CPUに最新のZen 5アーキテクチャーに基づいたThreadripperの中でも最上位モデルとなる、Threadripper PRO 9995WXを搭載したモデルとなります。このCPUは96コア/192スレッドを誇り、さまざまな用途で活躍できるモデルだと自負しています。
真重氏:今回は最上位モデルのCPUに釣り合うGPUとして「GeForce RTX 5090」を組み合わせています。GPUはゲーミングだけではなく、ディープラーニングや画像生成などの分野でも活きてきますし、ZEFT RTH61Sは現時点で最高性能を誇るワークステーションではないでしょうか。
――Threadripperと同PROはどう差別化しているのでしょうか?
佐藤氏:Threadripperは「Ryzen Threadripper」と「Ryzen Threadripper PRO」の2つのシリーズがありまして、Threadripper PROは業務向けという位置付けなんですが、Threadripperのほうは個人の方の利用も意識したモデルとなっています。そして、このThreadripper PRO 9995WXはThreadripper PROの最高峰に位置するモデルです。
――ワークステーション市場において、どのような用途が多いのでしょう?
佐藤氏:ワークステーションの市場というと、設計&製造といった分野や、建築、エンジニアリング、施工といった技術的な分野、それにリアルタイムVFXのようなエンターテインメント分野で使用されていましたが、最近はAIの普及にともなってソフトウェア開発やサイエンスといった分野の市場で伸びが著しいです。これらの分野では、よりハイパワーなCPUを求める声が高まっており、弊社はそれにあわせる形でThreadripper 9000シリーズをリリースしました。実際にCGなどを手がける現場の方からは、ワークステーションのCPUはThreadripperの1択だというありがたいお声もいただいています。
――Threadripper PRO 9995WXを採用するメリットはなんでしょうか?
佐藤氏:Threadripper 9000シリーズの特徴ですが、PCI ExpressがGen 5をサポートした点が大きく、Threadripper PRO 9995WXの場合ですと128レーンをサポートしています。さらに、最大動作クロックは5.4GHzと、Threadripper 7000シリーズに比べて高くなっています。そのほか、システムメモリーも最大8チャンネルのDDR5-6400 ECCをサポートしています。実際にThreadripper 9000シリーズのパフォーマンスを7000シリーズと比べると、ワークステーションベンチマークで16%、AI&ML学習で25%も高くなっています。この性能向上はCPUの最大動作クロックが高くなったことと、メモリークロックが高速化したことで実現しています。
――PCIe 5.0を128レーン持っているのはかなりインパクトがありますね。
佐藤氏:AIの用途でビデオカードを複数枚装着したり、強力なネットワークカードを搭載したり、キャッシュ代わりにSSDをRAIDで積んだりと、高速かつ太いレーン数に対する需要は非常に高いです。Threadripperというと、コア数と価格に注目が集まりがちなんですが、実はThreadripperを活かせるプラットフォーム自体もかなり大切な存在になります。実際に、CG制作などのGPU性能が問われる場面でも、Threadripper 9000シリーズは前世代や競合製品に比べて、高いパフォーマンスを発揮します。
超高価なCPUだが個人で購入する人も「いる」
――Threadripper搭載PCを求めるユーザーになにか共通した傾向はありますか?
中嶋氏:ハイエンド構成の需要が高いのですが、ビデオカードを必要としなかったり、SSDを可能なだけ積んだりと、お客様によっては構成はバラバラですね。「Threadripper搭載モデルならこれ」という鉄板構成がない点が個人的におもしろいなと思っています。
真重氏:弊社では、Threadripper搭載PCでもCPUやPCケースの違いなどで複数のモデルを用意しています。ですので、それほどPCに詳しくなくても、スペックから探していただければお客様の要望に対応できるモデルがご用意できるかと思います。
――Threadripper搭載PCでもPCケースのバリエーションは多いのですか?
真重氏:ZEFT RTH61SはPCケースにSilverStoneさんの「SST-RM52」を採用していますが、ほかにCooler Masterさんの「HAF 700 EVO」を採用した「ZEFT RTH61M」や、「MasterFrame 600」の銀色モデルを採用した「ZEFT RTH61O」など、複数用意しています。
中嶋氏:この中でも弊社においてThreadripper搭載モデルで人気を集めているのがSST-RM52となります。このケースは縦配置でも横配置でも利用でき、会社に置いてもあまり違和感のない外観が喜ばれているのではないでしょうか。
――Threadripperを個人で購入される方はいるのでしょうか?
佐藤氏:いらっしゃいますね。Ryzen Threadripper 9000シリーズは、最大動作クロックとメモリークロックが高いので、実はゲーミング性能も優れています。実際にお話をうかがった中には、レンダリングをしている間に余ったリソースをゲームに使うという方がいらっしゃいました。
9基のファンで強力なエアフローを確保
――Threadripper PRO 9995WXのTDPは350W。冷却面で心配になると思うのですが、そのあたりはなにか工夫をされていますか?
真重氏:ZEFT RTH61Sでは、CPUクーラーにはSilverStoneさんの「SST-XE360-TR5」というThreadripper向けの簡易水冷クーラーを採用しています。このクーラーは、ラジエーターのサイズが360mmで、AMDさんも推奨しているモデルです。弊社でも実際にテストを行い、問題がないことを確認しています。また、PCケースファンにはNoctuaさんの120mm角ファンを3基と、140mm角ファンを1基搭載していまして、冷却面でもお客様に安心してお使いいただけると思っています。
ZEFT RTH61Sの内部の様子。フロント側(写真左側)には3基のPCケースファン、そのすぐ横には3連ファンの360mmラジエーターが位置している。リア側(写真右側)には140mm角の大型ファンもあり、強力なエアフローを連想させる
――動作音についてなにか要望を受けたことはありますか?
中嶋氏:これまで多くのThreadripper搭載モデルを販売してきましたが、動作音に関するお問い合わせをいただいたことはないです。とはいえ、「問い合わせがないので配慮しない」ということはなく、高負荷時でも動作音を抑えることができるようにNoctuaさんのファンを選んだ次第です。先ほどのレンダリング中にゲームを遊ぶといった使い方であれば、このNoctuaさんのファンは喜ばれるのではないでしょうか。
マザーボードはASRockのWRX90 WS EVO
――マザーボードはThreadripper 7000シリーズにあわせて用意されたモデルですが、9000シリーズでも問題はないでしょうか?
原口氏:マザーボードの「WRX90 WS EVO」は、Threadripper 7000シリーズのときにもセブンアールジャパンさんに採用していただいたモデルです。このマザーボードは、Threadripper 9000シリーズにも対応しており、動作に問題はありません。WRX90 WS EVOの発売日は2024年4月26日と、Threadripper 9000シリーズの1年前の製品になりますが、弊社は未来のCPUにも対応させるというのが設計のベースにあります。このマザーボードもThreadripper 7000シリーズが登場した際に、オーバークロックを行うことで700Wとか1000WとかCPUで消費させても安定動作するかを前提として開発していますので、Threadripper 9000シリーズが登場してきても問題がないというわけです。
――なるほど。将来を見据えた設計をされているというわけですね。
原口氏:はい。あと、このWRX90 WS EVOはなんでもできるように設計しています。例えば、高性能なCPUが欲しいけどGPUは安価なもので十分だという人もいれば、ストレージをできるだけ多く搭載したいという人や、CPUのグレードを落としてビデオカードを4枚搭載したい人など、さまざまな需要がありますが、このWRX90 WS EVOはどのような使い方にも対応できる高い柔軟性を備えています。ですので、どんなお客様にも最適な形で使っていただけるような形を、体現したマザーボードになっているのかなと。
――電源ユニットは製品名でゲーミングを謳っていますが、ワークステーション向けでも通じる性能を備えているということでしょうか?
原口氏:はい。 弊社の電源ユニットのラインナップでは、 最上位にTaichiシリーズがありますが、このPhantom Gamingシリーズでも12V-2x6コネクターの保護機構や、USB機器の安定性を高める+5VブーストモードといったASRock独自機能は同じで、トータルパワーエクスカーションや変換効率の違いがあるものの、瞬間最大消費電力は220%なのでワークステーションとしても安心してお使いいただけます。
――ちなみに、電源ユニットの容量はほかにもあるのでしょうか?
中嶋氏:はい。定格出力が1300W、1200W、1000Wのものを用意しています。お客様には構成にあわせて適宜BTOで選択していただければと思います。ちなみに、このPhantom Gaming PG-1300Gは、弊社のほかのモデルで非常に高い人気を誇っています。
――ふだんゲームしかしないような多くのエンドユーザーからすると、Threadripperは距離感が遠いもののような気がします。
原口氏:先ほど佐藤さんからThreadripper 9000 シリーズのゲーミング性能が優れているというお話がありましたが、実際にプロゲーマーの中にはThreadripperを使ってる方がいらっしゃいます。さすがに、Threadripper PRO 9995WXのような96コアではなく、Threadripper 9970Xのような32コアモデルのほうなのですが、配信しながらゲームをプレイするといった用途で使っているそうです。
――たしかに、1台のPCでゲームプレイ&配信だとCPUのコア数は重要ですよね。
原口氏:その方はビデオカードとキャプチャーカード、それに高速なLANカードを搭載して、配信とゲームプレイ、それに動画編集とアップロードをすべて1台行っているそうです。そういった用途では、Threadripperが最適なプラットフォームなようです。最近では動画のエンコードにGPUを利用する場面が少なくないですが、Threadripperのプラットフォームであれば、そのために別途ビデオカードを装着して、エンコード中にもう1枚のビデオカードでゲームをプレイするといった使い方も可能です。
――ビデオカードはGeForce RTX 5090以外の選択肢はありますか? 例えば、AMDだと「Radeon AI PRO R9700」(以下、AI PRO R9700)のご用意はあるのでしょうか?
中嶋氏:もちろん、BTOではほかのGPUも選べます。GeForceだけではなくRadeonも多数ラインナップしております。AI PRO R9700については、お客様のご要望があれば別途対応したいと考えています。お二方(AMDの佐藤氏とASRockの原口氏)がいらっしゃるのでお聞きしたいのですが、AI PRO R9700をゲーミングとして使うことは可能なのでしょうか?
佐藤氏:AI PRO R9700の中身はほぼ「Radeon RX 9070 XT」(以下、RX 9070 XT)なので、ゲーミング用途でも高い性能を発揮します。AMDはAI推論にフォーカスしていますが、クリエーター向けのアプリケーションでも高性能が期待できます。現在、セガさんでAI PRO R9700を検証してもらっているのですが、結構いい感触をいただいています。
原口氏:AI PRO R9700のシリコンはRX 9070 XTと同じなんですが、ビデオメモリー容量が32GBとRX 9070 XTの倍になっています。ゲーミング用途で32GBのすべてを使い切る場面はほとんどありませんが、レンダリングやビデオエンコードといった用途ではこの大容量が活きてきます。
――実際にZEFT RTH61Sを使ってみていかがですか?
中條氏:ZEFT RTH61Sはラジエーターも含めると、全部で9基のファンを搭載しており、強力なエアフローを確立しています。CPUに負荷をかけ続けても、Threadripper PRO 9995WXの温度は60度前後で安定していました。消費電力はシステム全体で900Wを超えてしまいましたが……。動作音に関しては、自宅で使用するのであれば、少々うるさいかなというのが率直なところです。会社など職場に置く場合は環境音でかき消えるのかなと思います。
――メモリーは64GBモジュールのお取り扱いがはじまったのですね。
中嶋氏:以前は32GBモジュール8枚で256GBとさせていただいてましたが、実際にもっとメモリー容量を望むお客様からの問い合わせをいただいていましたので、64GBモジュールの取り扱いをはじめました。ですので、現在はZEFT RTH61Sでは最大512GB(64GB×8)もお選びいただけます。
――予算を気にしない状況だとして、個人的にThreadripper搭載PCは欲しいですか?
中嶋氏:ゲームでのパフォーマンスが高さが思っていた以上で驚きました。原口さんのおっしゃったプロゲーマーの方が使用されている話は興味深いです。ゲームしながらなにかをするPCというより、負荷の高い作業をするついでにゲームができる究極のPCで、欲しくなります。
真重氏:価格を考えなければ欲しいですね。自分がもし購入できたら、このマシンでこれだけのコア数があれば、どれだけのことができるのか、なにができないのかを試しはじめると思います。例えば、生成AIをローカルで実行したり、動画を編集してみたり、レンダリングしてみたりと、いろいろなことを試して性能の高さを実感したいですね。ZEFT RTH61Sは、そういったワクワク感を思い出させてくれるPCではないでしょうか。
中條氏:Threadripperは夢ですね。ビデオカードをいっぱい装着して、ゲームをいっぱい起動したいです。キーボードを5個ぐらい用意して5面のディスプレー全部でFPSをプレイするとかおもしろそうです。
――ありがとうございました。
ZEFT RTH61Sの直販価格は、標準構成でも税込みで459万7780円。さすがに個人では手が届くものではないものの、CG制作などを請け負う会社などの社用ワークステーションなら、有力な選択肢ではないだろうか。また、パソコンショップSEVENといえば、よく大幅な値引きになるセールも行っているので、その際に購入すればだいぶお買い得な買い物になるはずだ。
ZEFT RTH61SをBTOからダウングレードして、個人購入を検討してみるのもおもしろいかもしれない。メモリーを64GB×2、ビデオカードをGeForce RTX 3050にすると40万円近く安くなる。さすればいくぶん現実的な価格に……なりはしないほど高価だが、まずは下記のリンクからチェックしてみてほしい。



















