初の建設業界向けユースケース、NTTと安藤ハザマがIOWN Global Forumで一般公開
1000km離れたオフィスからトンネル建設の施工管理を IOWNのユースケース公開
2025年08月12日 13時45分更新
NTTと安藤・間(安藤ハザマ)は、次世代通信基盤「IOWN」技術を用いた、トンネルの建設現場における「施工管理の遠隔化・自動化」を推進している。IOWN技術の活用によって、遠隔/リアルタイムでの施工管理が可能となる。両社によると「1000km離れていても、安全で、効率的なトンネル建設の管理が可能になる」という。
その実現に向けた一歩として、2025年8月7日、重点的に取り組むべき業務領域を定め、問題や課題を解決する複数のユースケースを策定した。さらに、効果を評価するための基準となるドキュメント「Use Case and Technology Evaluation Criteria-Construction Site」をまとめ、IOWN Global Forumの正式承認を受け、一般公開されている。
このドキュメントをゼネコンや専門工事業者、受注者、機器/サービス提供事業者などに提供することで、データドリブンでトレーサブルな施工管理の実現、工事リスクの予測強化などが実現する。これにより、安全で品質の高いプロジェクトの遂行、工事事業者や発注者といった関係者間の“物理的な距離を超えた協力体制”を実現するほか、施工後の構造物の維持管理の高度化を実現できる。建設業が抱える労働者不足、低い労働生産性、危険な労働環境の改善にもつながるとしている。2026年3月までに実証実験を通じて、ユースケースごとの有効性や実装可能性を評価する予定だ。
安藤ハザマ 技術研究所 フロンティア研究部 宇宙技術未来創造室 室長の船津貴弘氏は、「トンネル工事は“現場中心”であり、しかも熟練作業者への依存傾向が高い。建設現場での作業と施工管理を高度に融合したデジタルトランスフォーメーション(DX)が求められているのが現状だ。IOWN技術を活用した、1000km遠隔施工管理のユースケースを明確化することで、安全性や生産性の飛躍的向上を目指す」と述べている。
トンネル工事の現場と遠隔地のオフィスを低遅延ネットワークでつなぐ
山岳トンネルの工事では、重機による岩盤への穿孔、火薬による発破、支保工建込み、コンクリート打設など、さまざまな工程がある。一方で、掘削後には現場の形状を確認するために、3Dスキャナーなどを用いて計測したデータを現場事務所に送信し、分析をしてから次の工程に進む。そのため、一般的には「1日あたり5~6メートルずつ」というスピードでしか進まない。
今回公開したドキュメントでは、トンネル工事の現場と遠隔地のオフィス、データセンターをIOWN APN(オールフォトニクスネットワーク)で接続することで、トンネル施工管理の遠隔化と自動化の実現を目標として、4つのユースケースを示している。
ひとつめのユースケースは「定常的な監視とデータ収集(遠隔監視)」だ。現在の工事では、安全点検の多くを「専門家の目視」に頼っており、現場の状況変化すべてをリアルタイムに追うことができないという課題がある。現場での目視に頼らず、現場の変化を把握して、安全リスクを早期に検知できる仕組みが求められている。
「安全確認不足によって事故が発生するおそれもある。インフラ整備に大きな影響をおよぼす工事の中断、さらに人命にかかわる事故にもなりかねない。IOWN APNを使って、複数の建設現場から高解像度映像やセンサーデータを遠隔地のオフィスに集約し、AIによるリアルタイムな自動分析による常時監視、および早期安全リスク検知を実現し、工事の安全性を高めることができる」(船津氏)
2つめは「施工中必要時のデータ分析(遠隔解析)」だ。船津氏は「完成後にトンネル内で事故が発生したり、あとから施工不良がわかった場合には、トンネルの通行停止だけでなく、周辺住民の生活環境への影響も懸念される。そうしたことを防ぐためにも、施工中のデータ解析が重要になる」と説明する。
現在、設計どおりに掘削できているかどうかの確認は、落盤の危険がある切刃(きりは、掘削の最先端エリア)で、熟練者が時間をかけて測量するかたちで行われている。この工事中断時間を最小限に抑え、安全性確保とも両立させる体制づくりにIOWNを活用する。具体的には、IOWN APNの柔軟な光パス設定技術を用いて、計算手法に合わせて接続先をオンデマンドに切り替えながら、遠隔地の計算リソースを活用したデータ解析を行う。これにより、大容量の点群データ解析にかかる時間を60秒にまで短縮できるという。














