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新清士の「メタバース・プレゼンス」 第116回

AIが書いた怪談小説が面白い 2分に1本のペースで出力されるのは驚異的

2025年07月21日 07時00分更新

文● 新清士

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2分で1本の小説が書けるのは驚異的

 ただし、AIによる文章がうまいからといって小説として面白いかどうかはまた別の話です。そして、さらに読んでもらえるのかというのも、さらに高いハードルがあります。

 小説はそもそも読むために高い注意力を求めるのに、最初の段階ではすぐに面白いかどうかがわからないため、なかなか関心を持ってもらうこと自体が難しいメディアです。私自身も、「AIが書いた」というのはアピールにならないと感じています。個人的にも、よほど評価を集めた作品でなければ積極的に読みたいとは思いにくいです。人間はAIが作ったものより、同じ人間が作ったものに惹かれるという側面は明確にあると思います。

 AI単体による小説執筆の能力は確実に上がってきていますが、まだ足りません。花笠さんの100本のAI怪談も、個々の短編はちゃんとまとまっていて、実際おもしろいのに、筆者の場合は、何十本も読もうという気持ちまでにはなりませんでした。星新一氏のショートショートのように、今でもなんとなく読み始めると、文庫本の短編を最後まで次々に読んでしまうような読書体験までは得られません。まだ、乗り越えなければならない質的な差が存在するのだろうと思われます。急激に発展していますが、今後さらにAIが発展していくことで、その溝が埋まってくるのかは、今の時点ではわかりません。

 それでも、“読める”レベルの物語を、2分に1本というペースで出力できることは驚異的です。今後は、100本生成して、その面白さを評価させて優れた数本だけを残していくことで質を確保していくというような、これまでと違う小説の書き方も登場してくるのかもしれません。

   

筆者紹介:新清士(しんきよし)

1970年生まれ。株式会社AI Frog Interactive代表。デジタルハリウッド大学大学院教授。慶應義塾大学商学部及び環境情報学部卒。ゲームジャーナリストとして活躍後、VRマルチプレイ剣戟アクションゲーム「ソード・オブ・ガルガンチュア」の開発を主導。現在は、新作のインディゲームの開発をしている。著書に『メタバースビジネス覇権戦争』(NHK出版新書)がある。

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