Backlog 20周年企画 チームワークとマネジメントを語り合う
Backlog20周年記念対談 経営者から見たチーム作りとは?
チーム作りの苦労を語ったサイボウズ青野氏とヌーラボ橋本氏の対談が本音過ぎた
チームワークマネジメントの概念はサイボウズの理念とシンクロする
大谷:最後にヌーラボさんが提唱しているチームワークマネジメントについてもちょっと意見をいただきたいかなと。ヌーラボの原田 泰裕さんに説明してもらいます。
原田:ありがとうございます。チームワークマネジメントは異なる組織や立場のメンバーで構成されているチームを前提に、「共通の目的」に向かってお互い助け合いながら、自律的に動ける状態を作るための考え方です。
具体的には、「目的を共有する」「役割を明確にする」「リーダーシップを発揮する」「コミュニケーション設計」「心理的安全性」の5つの要素から構成されています。このチームワークマネジメントを実現するためのツールがBacklogという位置づけです。
青野:「リーダーシップを発揮する」が深いですね。これはリーダーだけじゃないんですね。
原田:リーダーシップはリーダーだけが持つべき資質ではなく、メンバー全員がもつべきもの。他のメンバーに波及する行動をとるのが、リーダーシップだと思います。
青野:コミュニケーションも単にコミュニケーションではなく、コミュニケーション設計なんですね。理系的な発想ですね。
原田:コミュニケーションの手段はあるんですが、ルールが決まってないという会社がけっこう多かったんです。でも、ルールを設計していかないと、情報が拡散してうまくいかない。なので、コミュニケーション設計が重要です。
大谷:私もいろいろなSaaSを取材していますが、コミュニケーションの機能って基本どこも持っているんです。kintoneだって、Backlogだって、コミュニケーションの機能はあります。でも、どの内容をどこでコミュニケーションするかを決めておかないと、データは溜まらないし、トピックを探すのは大変だし、まったくうまく機能しません。だから、設計が必要だと思うんです。
あと、心理的安全性はチームワークで必ず上がるトピックですが、今回の話では、たぶん「ドトールのコーヒー代出せ」という話がそもそも議論の俎上に上がるのは、サイボウズが組織に心理的安全性を持っているからだと思うんです。そんなこと言えない日本企業はいっぱいあるし、言えるサイボウズは会社としてヘルシーだなと。
橋本:確かに、青野さんはそこをちゃんと明示して、「言っていいよ」と伝えている印象があります。
青野:ありがとうございます。ただ、僕はそれを逆に倒していて、「言わないヤツが悪い」と言っています。「言わないで、陰で愚痴るのは卑怯者だ」と言うと、みんな言ってくれます。そしてそれがエスカレートすると、僕が攻撃されると。僕の心理的安全性はどこに……という話ですが(笑)。
大谷:なるほど。チームワークマネジメント全体を見てどうお考えですか?
青野:全部サイボウズ用語に置き変えたら、まったく同じと言っていいくらいシンクロしてます。たとえば、「目的を共有する」はサイボウズでは「理想への共感」。目的を決めて、さらに共感までしけおけという話です。
ほかにも「リーダーシップを発揮する」はうちでは「自主自律」だし、「コミュニケーション設計」は「対話と議論」、「心理的安全性」は「多様な個性を重視」です。ただ、「役割の明確化」は、われわれはあまり言わないですね。
大谷:Backlogのような製品だと、やはりタスクは誰がやるのかが重要になるので、この概念がより明確なのかと。ただ、ほぼ完全にサイボウズの概念とチームワークマネジメントがここまでシンクロしているのは驚きです。
青野:最終的にどの言葉を選ぶのかは、会社ごとに違ってよいのかなと。「リンゴ」といって、社員全体が「あれね」と思えれば、それでいい。大事なのは、どういう目的に対して、どういう組織であるべきかの姿ですね。
ソフトウェアはユーザー企業の文化に影響を受ける だからチーム作りが大事
大谷:ソフトウェア会社の視点からみて、チームワークマネジメントがなぜユーザーにとって大事なんでしょうか?
橋本:チームワークマネジメントは、ソフトウェアのさらに先にある文化の話です。ソフトウェアをお客さま向けに作っていると、その先にあるユーザーのカルチャーの影響を受けます。だからこそ、お客さまのカルチャーを醸成し、整備しておかないと、ソフトウェアの仕様が蛇行してしまいます。
青野:言い換えると、いい会社じゃないと、僕らのソフトウェアが導入されても定着しません。Backlogの例で言うと、先ほどのスター機能があっても、人を褒めない文化の会社に入れても使われません。たぶん余計な機能をつけないでと言われるはずです。
橋本:実際ときどき言われます(笑)。
青野:グループウェアの場合、海外製品は自分のスケジュールを見るのが前提です。サイボウズ Officeはクローズにしない限り、基本は公開になるのでカルチャーからすると逆方向です。できることは同じなんだけど、アプローチが違う。
ノーコード・ローコードにしても、海外製品はプロがコードを書かずに楽して作るためのもの。だからマニュアルもエンジニア向けで、内容も難しい。でも、それだと現場の人が救われないので、なるべくアマチュアでも使えることを大事にしているのがkintoneです。同じカテゴリーに見えて、目指している世界観がまったく違う。そのあたりBacklogはどうなんですか?
橋本:海外製品だとプロジェクトマネージャーがガントチャートを引いて、このラインはあなた、このラインは僕といった感じにアサインしていきます。トップダウン前提の設計が多いです。
でも、Backlogはメンバーそれぞれがタスクやスケジュールを登録していくと、ガントチャートが自動的にできあがる。かつ主体的に自分がやるコミットメント仕組み化されています。各自がリーダーシップを持っていないといけません。
青野:ボトムアップ型なんですね。
大谷:確かにボトムアップ型であるが故に、目的の共有とチームの設計をきちんとやっておかないと、うまくワークしないという側面もあります。だから、チームワークマネジメントというメソッドが必要なんですね。腑に落ちました。
本日はありがとうございました!
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