Backlog 20周年企画 チームワークとマネジメントを語り合う

Backlog20周年記念対談 経営者から見たチーム作りとは?

チーム作りの苦労を語ったサイボウズ青野氏とヌーラボ橋本氏の対談が本音過ぎた

文● 大谷イビサ 編集●ASCII 写真●永山亘

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殴り合いの結果としてクリエイティブな落とし所になることもある

大谷:サイボウズって「チームのことだけ、考えた」で「100人100通りの働き方」というフレーズがありますが、ダイバーシティというか、相手との違いを認める文化なのかなと思うのですが。

青野:相手の意見をすぐに却下するのはやめようという文化はありますね。正直、僕からするとよくわからない主張も社内ではいっぱい来ます。経費精算の話で「ドトールのコーヒー代を出してほしい」とか、「出張のお土産代は精算対象か?」とか(笑)。ただ、なぜそう思うのかを確認しつつ、「世界一のグループウェア会社になる」というゴールに向けて、合理性があれば、検討できます。

大谷:先ほどのケンカの話も含めて、けっこう目的至上主義。目的に向けて合理性があるかどうかが鍵なんですね。橋本さんはどうですか?

橋本:僕は正直、そういう議論自体があまり得意じゃなくて、「やりたいならどうぞ」って思っちゃいますね。経費精算したいならすればいいのではと考えるタイプです。

青野:議論する時間がもったいないという意味では、それはそれで合理的ですね。

橋本:ただ、そういう前例をつくってしまうことで「⾔えば通るんだ」みたいな発想が⽣まれちゃうのも少し気になります。正直、その議論のためになぜ取締役が⻑時間使わなければならないのかもわからない。基本的には信頼して任せるスタンスでいたいですし、その時間を使ってやるべきことに集中したいんです。

大谷:私もどちらかというと橋本さんタイプですね。もめてる時間がもったいないから、さっさと手を動かそうよと思ってしまいます。

青野:それで言うと、サイボウズは役員クラスがそうした議論にじっくり時間をかけています(笑)。すごく費用かかってます。

大谷:以前、株主向けのイベントに登壇させてもらったとき、青野さんから株主とも、社員とも、とにかく時間をかけて納得いくまで議論を重ねていく必要があるみたいな話をしていて、青野さんはそういう会社作ったんだなあと思いました。

青野:個人的にはバトルを見ているのが好きなんです(笑)。

大谷:それ、単に青野さんがプロレス好きだからという話じゃないですか。

青野:それもありますね(笑)。もちろん、罵倒しあうまでいっちゃうと不毛なので、サイボウズでは議論のフレームワークがあります。現実はなんですか? 理想はなんですか? コンセプトはなんですか? 事実はなんですか? みたいなことをサイボウズ用語で議論すると、それなりに建設的になってきます。

一見すると、殴り合ってるんだけど、結果的に「なるほど。その手があったか」みたいなところに落ち着くことがあるんですよ。そこにクリエイティブな瞬間があるんです。それを見てしまうと、バトルにちょっと期待してしまうところあります(笑)。

橋本:その耐性は僕にはないなあ。でも、今度ちょっと試してみます(笑)。

青野:ただ、見ている分にはいいんですけど、その矛先が自分に向いてくるときがあって。「あのXの投稿はどうかと思います」みたいな話題で、90分間、社員100対社長1で詰められるみたいなこともありました(笑)。

橋本:業務時間ですよね。すごいコストかかってるじゃないですか(笑)。

青野:もちろん、その時間が本当にクリエイティブだったかは別ですが、僕もこのレベルまで行くと社員の心理的な負担が大きいということがわかりました。僕自身も辛かったし、二度と経験したくないけど、成果はあったなと思っています。この手の議論は時間かかりますが、それでもやろうというのがサイボウズっぽいですかね。

橋本:僕にはなかなか難しそうです(笑)

大谷:この手の社長対談って、だいたい共通の落とし所で、お互いが共感する流れになるんですが、今回全然違いますね(笑)。

多様な人は許容できるけど、いがみ合いは許容できない

大谷:チームと言えば、両者とも多様性は重視していると思います。

橋本:ヌーラボは外国人のメンバーも多いですし、僕自身も多様な人と働きたいなあと思います。

大谷:やはり多様な人と働くのは重要なんですね。

橋本:僕の頭の中では、「お客さまも多様である」というのが理由です。もともと受託開発の請負をやっていたときは、完全に男社会でした。お客さまも男ばかりで、こっちも男ばかり。だから考え方も行動もある意味で似通った部分はあったです。

でも、Backlogを開発して、少しずつ多くの方に使ってもらえるようになってきた頃から 、お客さまも多様化してきました。性別も文化も、職種も環境も、働き方もまるで違う。だからこそ、僕らの側も多様でなければ、そうしたお客さまたちの気持ちを想像することも難しいんじゃないかと思ったんです。

あとは単純にいろんな人と話すと、僕の人生が豊かになるから。多様性を受け入れるというか、小さい頃に受けていたバイアスのかかった教育や環境から脱皮していく感じですかね。

青野:アンラーニングを自らしていくのが楽しいんですね。お話聞いていると、橋本さんはそれを着実に実践している気がしますね。ただ実際はいろんな人たちがいると面倒くさいこともありますよね?

橋本:多様な人たちがいることによる面倒くささは許容できますが、その人たちがいがみ合っているのは許容できないですね。

青野:それは僕も同じですね。多様性があること自体が目的ではなく、多様な人たちが協力して仕事するのが目的。だから一線を越えないようにするのが大事です。

大谷:サイボウズも海外進出しているので、外国のメンバーも多いし、女性比率も高いじゃないですか。多様性の高い組織ですよね。

青野:お客さまが多様だから、こちらも多様性を鍛えなければというのは、橋本さんと同じ考えですね。たとえば地球の裏側に行こうと思ったら、ポルトガル語もできて、その地の文化も理解してくれる人が必要。こっちも相当に受け皿が広くなければとは思っています。

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