Backlog 20周年企画 チームワークとマネジメントを語り合う

Backlog20周年記念対談 経営者から見たチーム作りとは?

チーム作りの苦労を語ったサイボウズ青野氏とヌーラボ橋本氏の対談が本音過ぎた

文● 大谷イビサ 編集●ASCII 写真●永山亘

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「十数年経って、まだここかよ」とは思っています

大谷:kintoneは開始から14年、Backlogは20年になるわけですけど、「チームワークに貢献したな」とか、「ゴールに近づいたな」みたいな手応えってあります?

橋本:お客さまからよく聞くのは、Backlogでタスクを作ったり、コメントしたときに、スターを付けられる機能があるんです。これって正直に言えば「合理的」とは言いにくい機能なんですよね(笑)。でも、これをすごく気に入ってくれるユーザーがいて、「気持ちが伝わる」というフィードバックをいただけることが多い。

実はこのスター機能は僕自身もこだわって、開発チームに強く働きかけて、新入社員の研修として実装してもらったものなので、この機能を褒められると本当にうれしい。そもそもこの機能を作りたかった理由は、仲間同士でもっと気軽に褒め合えるようにしたかったからなんです。やっぱり同僚から褒められるのって、すごい誇らしいんですよ。それをシンプルに表現するのがBacklogのスター。そういう“気持ちが通い合う仕掛け”が、実際に役立っていると感じられると、「作ってよかったな」と思えます。

青野:1日で何千、何万のスターが飛び交っているわけですね。

橋本:その通りです。その数の感謝が飛び交っているわけですから、すごいです。

大谷:kintoneで作りたかった世界の進捗はどうなんですか?

青野:僕が作りたかったのは、現場の人たちが自らの手で業務改善できる環境。まさにTVCMで豊川悦司さんが魅せてくれている「オレでもできちゃった」という世界観です。

契約中の社数は3万8000社を超えて、多くの方に使っていただけるようになりましたが、道半ば感はまだあります。地球の裏側まで行きたいタイプなので、「十数年経って、まだここかよ」とは思っています。

大谷:でも、kintoneって昔から情シス以外での導入が圧倒的に多いじゃないですか。今までのIT製品の市場とは違う現場の声に応えてきたわけで、そこはすごくユニークですけどね。

青野:最近では次のステップに進んでいて、情シスの方々にkintoneを理解していただくための取り組みを強化しています。情シスも現場の声を拾って、いちいちアプリ開発するのは大変でしょうって思うんですよ。だから、全社でkintoneを導入して、そこを情シスがサポートしてくれれば、みんながアプリを作って、現場で業務改善してくれまっせと。

たとえば現場で個別にExcelでやっていたものが、きちんと統合したプラットフォームに載ってきて、情報も一元化され、ガバナンスも効くようになります。最近はこんな話をエンタープライズの情シスの方々も前向きに聞いてくれるようになり、kintoneを導入されるケースが増えてたので、日本ではセカンドフェーズに差し掛かってきたという感触があります。

大谷:エンタープライズというより、情シスやその上の人、つまり“キーマン”の理解が重要なんですね。

青野:あれだけTVCMをやっていても、大企業で反応してくれるのはごく一部です。残りのにどうやってリーチするかを考えると、やはり上から行くかと。導入してもらうため、経営の人たちの納得感を高める活動を進めています(関連記事:エンタープライズ、振り向いてよ kintoneは中小企業向けだけじゃない)。

「仲がいいこと」「ケンカすること」は果たして善か悪か

大谷:次にお二人のチームの話を伺いたいのですが。橋本さんは「会社は仲良しクラブでいい」、青野さんは「チームのことだけ、考えた。」という書籍を出していますね。

青野:サイボウズ社内では「仲間」とか、「仲がよい」というキーワードはあまり使わないんです。でも、橋本さんは「仲間」って、普通に使うじゃないですか? あれってどういう思考なんですか。

橋本:すごーーーく、仲悪い時期があったからです(笑)。

青野:(笑)。えーっ!?

橋本:そのときに「関係性がこじれると、仕事の目的や目標よりも感情のぶつかり合いが優先されてしまう」という経験をしたんです。本来の仕事が全然進まない。だから、互いに気持ちよく仕事ができる関係性を大事にしたいなと思うようになりました。

あと、僕は人がケンカするのを見るのが本当に苦手なんです。見たくもない。だからなおさら仲良くやってよと思います。

青野:それって橋本さんが誰かと仲悪いわけじゃなくて、社員の誰かと誰かが…ということですよね?

橋本:はい。そうなると、状況によってはどちらかの肩を持たざるを得なくなることもあって、そういう状況は極力避けたい。なので、できるだけよい関係性を築いてほしいなと。

ただ、これに関しても「会社は仲良しクラブでいい」という書籍のタイトルが一人歩きしてしまっている部分もあります。本当の意味で仲がいいって、時には辛辣なフィードバックができるくらいの関係だと思っています。そういう関係性を築けている相手って、僕にとっては数えるほどしかいません。逆に「腫れ物に触れない程度」は仲良くなる前の関係だと思っているのですが、世間的にはこれを「仲良し」と言っていることもあるんだなと感じています。

大谷:サイボウズ社内の「仲」はどうなんですか?

青野:サイボウズの場合は、僕も含めて仲が悪かった時期がありましたね(笑)。ただ、僕は仲が悪いことを悪いと思っていないんですよ。

というのも、強いサッカーチームの監督の話を聞くと、実はメンバー同士が仲悪いこともあるんですよ。お互いに「オレにボール回せよ!」みたいな自己主張が強いので、衝突してしまう。ただ、最終ゴールである「相手に勝ちたい」が勝る。「勝ちたい」の欲求が勝れば、プライベートは面倒だけど、試合中は共通のゴールに向かうんです。

だから、サイボウズのメンバーが仲いいか、仲悪いかは個人的にはあまり関心なくて、ただ「いいグループウェアを作って、世界を目指せ」という一点の目標は全員に強制しています。

橋本:そうなんですよね。そこに関しては僕も同じなんですけど、本当に仲が悪くなると、「オレはこいつを倒したい」みたいな感情が勝ってしまうときがある。ゴールを目指して、ケンカするのは、僕は「仲がいい」ととらえています。

青野:なるほど。「ケンカするほど仲がいい」と言いますもんね。

橋本:はい。本当に仲が悪いのは、ゴールを忘れて、相手を打ち負かすことが目的になってしまう関係なんです。そこまで来ると、もうチームとしては機能しなくなる。

ここまで説明すると、仲がよい方がいいよねという話になるのですが、実際にそこまでの状況を経験したことがない人には伝わりにくい。「そんな話あります?」みたいに理解できない方もけっこういます。僕は仲が悪い状態っていうのは、本当にいやですね。

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