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アーキテクチャ改革を進めてきたSAP、その狙いはAIが働きやすい環境

SAP CEOが「次の大きなマイルストーン」と発言、“Suite as a Service”とは?

2025年06月23日 10時00分更新

文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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データとAIに必要な技術を備えた「Business Data Cloud」が鍵

 「AIが価値を実現するために必要なもの」とは何か。アラム氏は「AIがエンドツーエンドのコンテキスト(文脈)を見て、データ上の推論に基づくアクション(行動)をとる仕組みが必要」だと答える。

 「(AIは)サプライチェーン管理、財務といった実務のシステムで、実際にアクションを行えなければならない。そのためには、ビジネスのコンテキストを理解できるデータモデル、統合されたアプリケーションセットが不可欠だ」(アラム氏)

 さらにアラム氏は、「価値(ビジネス価値の源泉)は、より上流に移行している」ため、インフラの構築や運用、アプリケーションの統合や管理といった繰り返しの作業から「解放されなければならない」と語る。

 ではその「仕組み」とは何か。それがBDC(SAP Business Data Cloud)である。

 データプラットフォームのBDCは、さまざまなデータプロダクトに対して統一的なセマンテックレイヤー、ナレッジグラフなどの機能を提供する。これにより、AIはビジネスのコンテキストが理解できる。また、Databricksとの統合によって、SAP以外のアプリケーションにも対応できる。

 BDCというパーツがそろったことで、Business Suiteをサービスとして提供するSuite as a Service/Best of Breed as a Serviceが実現できると言える。

 「Best of Breedが存続してきたのは、Suiteプレイヤー(Suite製品の提供ベンダー)が各ドメインで迅速にイノベーションを行ってこなかったから。だが、SAPはSuiteプレイヤーとして、財務、サプライチェーン管理、HCM、CXの各領域において、真に最高クラスの機能を提供し、そのまますぐに使える状態で(=サービスとして)提供できる土台を整えた」(アラム氏)

(左から)CEOのクライン氏、プロダクト/エンジニアリング担当のアラム氏、CAIO兼CTOのハーツィク氏

 記者会見のあと、SAPジャパンにあらためてSuite as a Serviceについての説明を求めたところ、「従来のSaaSがソフトウェアを1つずつ使う形であるのに対し、Suite as a Serviceは最初から必要なソリューションが連携された形で、まとめてすぐに使えるパッケージ(として提供される)。AIやデータも最初から組み込まれている」(SAPジャパン広報)との回答だった。

 今回のSapphireでは、BDCをベースとした「Intelligent Applications」というカテゴリが発表された。その名前のとおり“インテリジェントなアプリケーション”であり、すぐにデータとAIを活用して業務が進められるという。「People Intelligence」「Finance Intelligence」などが発表された。

 SAPジャパンでAPACカスタマーアドバイザリー SAP Business AI Leadを務める本名 進氏は、「アプリケーション、データ、AIを統合的に提供するアプローチをとることで、従来は企業が個別に構築/運用していたBIダッシュボードは、各業務領域ごとに最適化されたAI活用型分析アプリケーションとなり、サービスの一部として提供していく」と説明する。

Suite as a Serviceでは、アプリケーション、データ、AIが加速しながら成長する“フライホイール効果”を生むとしている

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