マザーボードがオーディオ機能を標準装備したおかげで
AMRは事実上モデム専用に
さて、AMRがどの程度普及したか? というと、メーカー製PC向けのマザーボードではちらほら見かけることもあったが、インテルの思惑通りには進まなかった。まず自作市場向けで言えば、もうマザーボード上にAC'97 Codecが搭載されることが急速に一般的となり、これにともないバックパネルにオーディオ入出力端子が標準搭載されるようになった。その代わりにパラレルポートが消え、次いでシリアルポートも消えた。
AC'97 Codecは、Advanced Audioが利用されることはほとんどなく、Basic Audioで十分とされたため、AMRを使ってコーデックを変更可能にするといったニーズがそもそも発生しなかった。したがって、AMRといいつつ実際はモデム専用といった趣であったのだが、モデムは必ずしも内蔵が好まれるとは限らなかった。メーカー製のオールインワンPCの中にはモデム内蔵のものが確かに存在した。
例えば1999年10月にGatewayが発表したオールインワンPCの場合、モデムの電話線接続用コネクターが搭載されていることが記事で紹介されているが、2000年前後になるとモデムではなくダイアルアップルーター経由でインターネットプロバイダーに接続するパターンが増えてきており、こうなると必要なのはモデムではなくイーサネットの端子になる。
外付けのダイアルアップモデムの中にはUSBでの接続に対応しているものもあり、イーサネットがなくてもUSB経由で接続できたから、パソコン通信サービスに接続するなどの限られた用途でないともうモデムの必然性がなくなりつつあった時代である。
余談であるが、それでも2002年かそのあたりまでは、海外出張に行く際にはモデムは必須だった。自宅ではとっくにCATV経由でのインターネット接続になっていたが、海外の、特にホテルからのアクセスは、まだダイアルアップ経由しか方法がなかった時代である。ホテルの部屋に備え付けられた電話機から電話線を引っこ抜いてノートPCのモデムにつないでメールを落としたり記事を送ったり、を実際に行なっていた。
ただこれは国によって前後するのだが、例えばアメリカでは2003年2月に開催されたIDFの取材の折に、FRY'sでLinksysの802.11Gのアダプターを買ってきたスナップが残ってるあたり、このあたりの時代でホテル内でもWi-Fiでの接続が可能になったように記憶している。
それでもしばらくはモデムカードを持ち歩いていたが、2006年頃からはもうモデムカードも持たなくなっただろうか? 出先でさえこれだから、自宅やオフィスで使われるであろうマザーボード向けには、もっと早くニーズがなくなったとしても不思議ではない。
またAMRは、PCIやAGPの右側にスロットを置くことになっていたが、本来ここはCPUやノースブリッジに近い位置なだけに、ここにAGPやPCIを置きたいというニーズは強く、このあたりも不評だった。
加えて言えばAMRはインテルの規格であり、一応これを利用したVIAのチップセット搭載のマザーボード(例えばPC CHIPSのM787CLR)もあったりしたが、規格化にあたって同業他社の意見を一切聞かずに標準化したことでAMDを始めとする互換メーカーの反発を買う。
インテルが他社の意見を聞かずに標準化したAMRに反発
互換メーカーが結束して新たにACRを策定
結局こうした互換メーカーは2000年にAdvanced Communications Riser SIG(Special Interest Group)という団体を作り、ACRの仕様を策定する。これがなかなかすごく、一応AMRとの後方互換性は維持しているが、スロットそのものはPCIのものを流用(上下を逆にして配置)し、マザーボードの一番端に設置できるようにした。
2001年からこれに対応したマザーボードがぼちぼち出始めており、2001年末に秋葉原でもACRカードが(マザーボード同梱の形で)出現している。最終的にAMRとACRは次のCNRに収束することになったので、次回これをご紹介したい。

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