オーディオ機能がオンボードではなく外付けなのが当たり前
そんな時代に生まれたインターフェースAC'97 Codec
AC'97で「ほとんど」のオーディオ処理は済むわけだが、済まないのがDAC(とADC)である。つまりデジタルの形で表現されているオーディオ信号をアナログに変換する部分だ。ここで利用されるのがAC'97 Codecと言われる小さなチップで、Realtekはいち早くこのAC'97 Codecを出荷したことで既存のオーディオカードベンダーのシェアを丸ごと持って行ってしまった。
そこで、ICHにはこのAC'97 Codecが外付けされ、そこからオーディオ出力(とマイク音声などのオーディオ入力)が出る形になる。
問題はこの当時、まだマザーボードにオーディオ入出力端子を設けるのは一般的ではなかったことだ。高価格帯はSound Blasterの高性能品、ミドルレンジ~ローエンドはSound Blaster互換のサウンドカードなどを拡張カードの形で利用するのが一般的で、そもそもバックパネルのブラケットにはオーディオ入出力端子がなかった。
たとえば2003年のアキバ取材記事に出てくる画像(下の画像参照)がこの当時の一般的なバックパネルの構成であった。
もう1つ問題は、特にメーカー製のPCの場合、BTOオプションなどでオーディオ構成を変更することがしばしばあったことだ。さすがにサウンドなしというケースはもうほとんどなかったとは思うが、グレードに応じて構成を変えるのは一般的だった。
実は先にも少し書いたが、AC'97にはBaseline AudioとAdvanced Audioの2種類の規格がある。これはなにが変わってくるかというとAC'97 Codecに違いが出てくる。つまり低価格な(ただし機能はBaseline Audio準拠の)AC'97 Codecと高性能でAdvanced Audio準拠のAC'97 Codecが存在しえるわけで、これを簡単に入れ替えられるようにしたいというニーズが出る、と読んだわけだ。
これはモデムについても同じである。モデムは国別に規格が異なるので、オンボードでモデムチップを搭載してしまうと国別に異なるマザーボードを用意する必要がある。なのでモデムは別カードの形にしたいというニーズがそもそもあった。
そこでこのオーディオとモデムは拡張カードの形で簡単に構成を変更できるようにしよう、ということで生まれたのがAMR(Audio Modem Riser)カードである。
オーディオとモデムを簡単に変更できるようにしたAMR
AMRのコンセプトが下の画像だ。コネクターはAMR専用の46ピンのものが利用され、途中に切り欠きが用意される。
AMRとPCI、それとAGPのコネクターの位置関係をまとめたのが下の画像だ。
AMRのコネクター位置はPCIよりも少しだけバックパネル側に近い位置にあるので、例えばAMRのカードを間違ってPCIスロットに装着したりしてもちゃんと入らない(カードエッジがマザーボードに引っかかって押し込めない)ように配慮されている。
カードそのものはPCIの拡張カードに似ているが、最大174.63mmとしつつもショートカードだと68.78mmと非常にコンパクトにまとまっている。実際モデムを持たないAC'97 Codecだけが載ったAMRライザーだと、このショートカードのものもいくつか存在した。

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