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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第827回

オーディオとモデムを普及させるのに一役買ったAMRとACR 消え去ったI/F史

2025年06月09日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII

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オーディオ機能がオンボードではなく外付けなのが当たり前
そんな時代に生まれたインターフェースAC'97 Codec

 AC'97で「ほとんど」のオーディオ処理は済むわけだが、済まないのがDAC(とADC)である。つまりデジタルの形で表現されているオーディオ信号をアナログに変換する部分だ。ここで利用されるのがAC'97 Codecと言われる小さなチップで、Realtekはいち早くこのAC'97 Codecを出荷したことで既存のオーディオカードベンダーのシェアを丸ごと持って行ってしまった。

 そこで、ICHにはこのAC'97 Codecが外付けされ、そこからオーディオ出力(とマイク音声などのオーディオ入力)が出る形になる。

 問題はこの当時、まだマザーボードにオーディオ入出力端子を設けるのは一般的ではなかったことだ。高価格帯はSound Blasterの高性能品、ミドルレンジ~ローエンドはSound Blaster互換のサウンドカードなどを拡張カードの形で利用するのが一般的で、そもそもバックパネルのブラケットにはオーディオ入出力端子がなかった。

 たとえば2003年のアキバ取材記事に出てくる画像(下の画像参照)がこの当時の一般的なバックパネルの構成であった。

当時の一般的なマザーボードのバックパネル。現在は当たり前に付いているオーディオの入出力端子が存在しない

 もう1つ問題は、特にメーカー製のPCの場合、BTOオプションなどでオーディオ構成を変更することがしばしばあったことだ。さすがにサウンドなしというケースはもうほとんどなかったとは思うが、グレードに応じて構成を変えるのは一般的だった。

 実は先にも少し書いたが、AC'97にはBaseline AudioとAdvanced Audioの2種類の規格がある。これはなにが変わってくるかというとAC'97 Codecに違いが出てくる。つまり低価格な(ただし機能はBaseline Audio準拠の)AC'97 Codecと高性能でAdvanced Audio準拠のAC'97 Codecが存在しえるわけで、これを簡単に入れ替えられるようにしたいというニーズが出る、と読んだわけだ。

 これはモデムについても同じである。モデムは国別に規格が異なるので、オンボードでモデムチップを搭載してしまうと国別に異なるマザーボードを用意する必要がある。なのでモデムは別カードの形にしたいというニーズがそもそもあった。

 そこでこのオーディオとモデムは拡張カードの形で簡単に構成を変更できるようにしよう、ということで生まれたのがAMR(Audio Modem Riser)カードである。

オーディオとモデムを簡単に変更できるようにしたAMR

 AMRのコンセプトが下の画像だ。コネクターはAMR専用の46ピンのものが利用され、途中に切り欠きが用意される。

Audio/Modem Riser Specification Rev 1.01より抜粋。拡張カードスロットの一番左側にこれが来ることを前提にしているのがわかる

 AMRとPCI、それとAGPのコネクターの位置関係をまとめたのが下の画像だ。

AGPのコネクターの位置関係。AGPのさらに左にAMRが来る前提になっているのがわかる

 AMRのコネクター位置はPCIよりも少しだけバックパネル側に近い位置にあるので、例えばAMRのカードを間違ってPCIスロットに装着したりしてもちゃんと入らない(カードエッジがマザーボードに引っかかって押し込めない)ように配慮されている。

2つの茶色いスロットがAMR

 カードそのものはPCIの拡張カードに似ているが、最大174.63mmとしつつもショートカードだと68.78mmと非常にコンパクトにまとまっている。実際モデムを持たないAC'97 Codecだけが載ったAMRライザーだと、このショートカードのものもいくつか存在した。

ショートカードだと幅が68mmしかないが、このサイズのAMRライザーも確か存在した気がする

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