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T教授の「戦略的衝動買い」 第829回

「手のひらに宿るリッチ」──4万円台のパナの小型電気シェーバー「ラムダッシュ パームイン」を衝動買い

2025年05月31日 12時00分更新

文● T教授、撮影●T教授、編集●ASCII

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陶器のような風合いを持つ高機能樹脂を採用
毎朝の使用体験に小さなぜいたくを感じさせてくれる

 技術的背景として、素材にも注目したい。このES-PV6Aには、パッと見は薄汚れたようにも見えてしまう三井化学の「NAGORI(ナゴリ)」という、陶器のような風合いを持つ高機能樹脂が使われており、手にした時の質感が実に印象的だ。

陶器のような風合いや手触りも製品の価値を高めている

 このNAGORIは、最大75%が海水由来のミネラル成分で構成されており、単なる質感だけでなく、抗菌性・抗ウイルス性にも優れているという。

 熱伝導性の高さもあいまって、シェービング後にサッと触れるたびに“ヒヤリ”と心地よく、毎朝の使用体験に小さなぜいたくを与えてくれる。こうした物性面の工夫もまた、2023年度グッドデザイン金賞受賞につながった大きな要素だろう。「NAGORI」という名も、素材に込められた「名残・余韻」を表現しているという。

 開発者インタビューによれば、「パームイン」は単なる道具ではなく、使い手との「新たな関係性」を築くことを目指した設計思想に基づいているという。こうしたブランド哲学が、製品そのものの独自性を高めている。

 なお、発売後にUSBケーブルに関するリコールが発表されたこともあり、購入後はメーカーサイトの情報確認をおすすめする。筆者のラムダッシュもリコール対象だった。交換用USBケーブルはこれからパナソニックの公式サイトを通じて手配を進める予定だが、こうした不具合への丁寧な対応体制そのものが、プレミアムなブランド製品を選ぶ理由の1つでもあると感じている。

 また筆者は、以前実施されたキャンペーンにより、本体と同色の専用置き台も入手。これが地味に便利で、洗面所での設置安定性を高めてくれている。

専用の置き台も入手済み

 そして最新情報では、さらに上位のES-PV70なる5万円超えモデルも登場しており、このジャンルが単なるニッチから「趣味性のあるプロダクト」へと進化している様相を呈している。

4万円超でも売れる「所有する喜び」がある電気シェーバー
パナソニックの戦略は成功したと言えそうだ

 4万円超という価格設定にも関わらず、「ラムダッシュ パームイン」が受け入れられている背景には何があるのか。単なる「一品豪華主義」なのか、それとも現代特有の「推し文化」なのか。あるいは、シェーバーという日用品に「所有する喜び」を持ち込んだパナソニックの戦略が功を奏したのかもしれない。

 バルミューダ現象のように、限られたセグメントの熱心な支持層が「売れる理由」を創り出す事例とも言える。筆者も当初は後ずさりしたが、使い始めて半年、今では朝の儀式に欠かせない相棒として愛用している。

T教授

今回の衝動買い

・パナソニック「ラムダッシュ パームイン ES-PV6A」
・価格 4万1580円
・購入 ヨドバシ.com

T教授

 日本IBMでThinkPadのブランド戦略や製品企画を担当。国立大芸術文化学部教授に転職するも1年で迷走。現在はパートタイマーで、熱中小学校 用務員。「他力創発」をエンジンとする「Thinking Power Project」の商品企画員であり、衝動買いの達人。

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