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年次イベントで「これまでのCRMは『壊れている』。変革の時」と、次世代CRMへの変革をアピール

CRM市場参入のServiceNowが他社を“挑発” 「360度の顧客ビューでは不完全だ」

2025年05月13日 07時00分更新

文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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CPQ(製品構成/価格設定/見積もり)領域もカバーへ、単一基盤の強み

 それでは、ServiceNowが「次世代CRM」と位置付けるServiceNow CRMはどのようなものなのか。

 先述したとおり、ServiceNowはすでに、カスタマーサービス/カスタマーサポート、フィールドサービス、フルフィルメントといった領域をカバーしている。これらを単一のプラットフォーム上で構築、統合している点がポイントだ。

 そして2024年にはセールス/受注管理領域(SOM:Sales and Order Management)も追加した。「このソリューションの顧客数は、最初の9ヶ月で予想の2倍となった」(チェシャー氏)。

「ServiceNow CRM」の全体像

単一プラットフォームで統合されているメリットを強調

 セールス領域の顧客らが求めた次のステップが、「CPQ」と呼ばれる領域の自動化/効率化だ。CPQは、「Configure(製品やサービスの構成)」「Price(価格設定)」「Quote(見積もり)」の頭文字を取ったものである。

 CPQには、セールス、開発/設計、パートナーなどさまざまな役割の人が関与する。さらに、構成できる部品の互換性、バンドル時の特別価格、顧客ごとの割引など、複雑なルールもある。そのため、処理に手間と時間がかかるプロセスになっている。

 そこでServiceNowでは今年4月、AIを活用したCPQソリューションを提供するLogik.aiの買収計画を発表した。数カ月以内には買収完了の見込みだ。

 チェシャー氏は、Logik.aiの高速なCPQエンジンと、ServiceNowのエンドツーエンド(セル、フルフィルメント、サービス)の機能が、単一プラットフォームで統合される点が大きな価値であり、「顧客のエクスペリエンスを変革する。われわれは差別化された価値をもたらすことができる」と期待を述べた。

従来のCRMと比較しながら、ServiceNow CRMで「カスタマーエクスペリエンスを変革する」と宣言した

 単一プラットフォームに統合されているため、サービス間のデータ連携や、AIの適用も進めやすいという。

 ServiceNowでは今回、これまでの「Now Platform」という呼称を「ServiceNow AI Platform」とリブランドし、データ/AIエージェント/ワークフローの統合基盤と位置付けている。これにより、異なるシステム、異なる部門をまたぐ形でワークフローを構築し、非効率なプロセスを削減できるとアピールしている。

市場アナリストはServiceNowのCRM市場参入に肯定的な評価

 すでに現在、CRMはServiceNowのワークフロービジネスの中で最も急速に成長する領域になっている。2024年末時点で、CRM領域の年間契約価値(ACV)は14億ドルに達し、前年比30%の成長を記録している。

 基調講演では、PureStorageの導入事例が紹介された。PureStorageは顧客サービスを目的にServiceNow CRMを導入し、レスポンス時間を7倍改善した。さらに、顧客サービスのケースの72%を、顧客がレポートする前に解決したという。このほか、BT、Xerox、National Hockey League(NHL)、LumenのロゴがServiceNow CRMの導入企業として並んだ。

ServiceNow CRMはすでに多くの大手顧客を抱えている

 さて、ServiceNowはCRM市場を揺るがすことができるのだろうか? 米国の市場調査会社、Constellation ResearchのVP 兼 主席アナリストであるマーティン・シュナイダー氏は、肯定的な見解を示した。

 「エンタープライズ市場では、Salesforce Sales CloudやSAPのCXといった多くの“レガシー”なCRMが導入されているが、AI対応になっていない。AI時代に入るにあたって、企業はCRMへのアプローチを再検証しており、ServiceNowは説得力のあるCRMの提案ができる。課題は、データの品質向上とAIの効果的な活用のための『データ量の確保』だ」(シュナイダー氏)

 合わせてシュナイダー氏は、ServiceNowが多面的にアプローチできることも優位性につながると指摘する。既存のCRMをすべてリプレースする必要がなく、たとえば注文管理やAIエージェントのフローを通じて、SalesforceのデータをServiceNowと連携させるなど「共存」のシナリオも考えられるという。

 「従来、ほとんどの販売システムは単独で導入され、システムが持つデータはそこで入力されたものに限られた。それに対してServiceNowは、エンタープライズサービスの管理側から顧客や製品情報を活用できる背景と実績がある。ここは大きな違いだ」(シュナイダー氏)

※訂正:見出しにあった誤記を修正しました。(2025/05/15 編集部)

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