Gang of NineがEISAの後継となる規格を模索
今回の話は前回の続きとなる。前回の消え去ったI/F史で説明した通り、EISAとMCAバスが泥仕合……というよりも、後から改めてみるとMCAを採用したIBMが勝手に自滅していった感はあるのだが、この当時の"Big Blue"の威光は半端なく、"Gang of Nine"はゴリアテに挑むダビデという捉えられ方をしていた。このあたりの雰囲気というのは、この当時にPC業界に身を置いた人でないとおわかりいただけないかもしれない。
それはともかく、インテルはEISAのサポートを表明するものの、社内では別の動きをしていた。1991年、インテルはIAL(Intel Architecture Lab)という組織を発足させている。このIALは将来のPCに必要とされる技術を独自に開発することを目的としていた。
PCIやUSB、AGPやFireWire、H.323、Indeo、HomeRF、etc...とさまざまな技術がこのIALを由来としているのだが、最終的にEISAやMCAを置き換えることになるPCIが登場するのはもう少し後であり、しかもPCI-SIGという形で標準団体を1992年に結成するまでの間は水面下での活動だったこともあって、実は業界での認知度はそれほど高くなかった。
そんなわけでEISAを制定したGang of Nineの各企業ではあるが、「その次」に関して悩むことになった。EISAはピーク性能でISAの2倍、実効性能はもう少し高くて3倍近い性能が出た(それだけISAの効率が悪かったという話でもある)が、それでも性能は33MB/秒程度とそれほど高いものではなかった。バスクロックは8.33MHz(これはISA由来)で、データ幅が32bitになっただけなので、これはやむを得ない話である。
VESAが誕生しVL-Busが策定される
もっと高速なバスが欲しい、というニーズは主にグラフィックスの市場からやってきた。1990年前後というと、画面サイズの大型化が始まった時期である。IBM-PC/ATだと標準でEGA(640×350pixel)の表示が可能だったが、PS/2でVGA(640×480pixel)の表示が可能になった。
VGAカードそのものはPS/2向けなのでMCAベースだったが、すぐに多くのメーカーがISAで動作するVGAカードを開発する。さらに各社とも単にVGA互換というだけでなく、独自の拡張モードを入れたりしていた。この中には画面サイズの拡張も含まれており、720×540ピクセルや800×600ピクセルといった、VGAよりも広い画面サイズを可能にする製品も含まれていた。
ただ各社とも拡張方式に違いがあって、このままでは互換性が取れない。そこでNEC Americaは1988年11月、Super VGA computer display standardという組織を立ち上げ、これが最終的にビデオ規格の標準化を行なうVESA(Video Electronics Standards Association https://vesa.org)という業界団体の設立につながった。
このVESAは現在も活発に活動しているのだが、そこにバスの規格の標準化をやらせよう、と思いついたのが誰なのかは定かではない。ただ理屈としては、「ビデオカードが今のままだとバスの帯域がボトルネックになって性能が上がらないので、ビデオカードの高速化に向けた専用のローカルバスの標準化をしよう」というお題目を唱えられたら、確かに正面切って反論するのは難しいものがある。
おそらく1990年の早い時期あたりから、VESA内部ではこのローカルバスの仕様策定に関する作業がスタートし、最終的に1992年8月にVESA Local Bus(VL-Bus)という名称でこの新しいバスの仕様が決まった。
もっとも新しいと言いつつ、実態はi486の信号線をそのまま流用するという仕組みだし、バスの調停機構はISA/EISAのものを流用しているという話は連載107回で説明した通りである。

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