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GeForce RTX 50シリーズまとめ 第27回

RTX 5070、RTX 4060 Ti、RTX 3060 Ti、RTX 2060 SUPERと比較

GeForce RTX 5060 Tiの16GB版を検証、“xx60 Tiの欠点”は克服できたのか?

2025年04月16日 22時00分更新

文● 加藤勝明(KTU) 編集●ジサトライッペイ/ASCII

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VRAM 16GBがすべてのAI処理で強いわけではない

 続いては、同じくUL Procyonから「AI Computer Vision Benchmark」を使用する。こちらは画像生成やLLMが流行する前に一般的だった画像分類や超解像といった処理を行うテストだ。総合スコアーのほか、スコアー算出の根拠となる推論回数も比較する。推論デバイスはGPUを選択し、Tensor RT/ FP16設定でテストを実施した。

GeForce RTX 5060 Tiの16GB版を検証、“xx60 Tiの欠点”は克服できたのか?

UL Procyon:AI Computer Vision Benchmarkの総合スコアー

GeForce RTX 5060 Tiの16GB版を検証、“xx60 Tiの欠点”は克服できたのか?

UL Procyon:AI Computer Vision Benchmarkにおける推論回数(その1)

GeForce RTX 5060 Tiの16GB版を検証、“xx60 Tiの欠点”は克服できたのか?

UL Procyon:AI Computer Vision Benchmarkにおける推論回数(その2)

 このテストもRTX 50シリーズ対応のTensorRTが組み込まれているのだが、MobileNet V3の推論回数が前世代から伸びていない傾向は、既存のRTX 50シリーズとほぼ同じ(ただし、今回はRTX 4060 Ti 8GBに負けている)。それ以外のテストでもほぼRTX 5060 Ti 16GBとRTX 4060 Ti 8GBの間に差はない。

 しかし、唯一Real-ESRGANの推論回数だけは、RTX 5060 Ti 16GBをかろうじてRTX 4060 Ti 8GBの上に押し上げた格好だ。とはいえ、このAI Computer Vision BenchmarkはVRAMをあまり使わないため、16GBもVRAMがあっても決定打にはならないのだ。

 画像生成AIのパフォーマンスを見るUL Procyonの「AI Image Generation Benchmark」も試してみよう。最も重い「Stable Diffusion XL (FP16)」を選択し、1024ドット四方の画像を16枚出力するというテストを実施した。すべてデフォルトのTensor RTを使用している。

GeForce RTX 5060 Tiの16GB版を検証、“xx60 Tiの欠点”は克服できたのか?

UL Procyon:AI Image Generation Benchmarkにおける総合スコアー

GeForce RTX 5060 Tiの16GB版を検証、“xx60 Tiの欠点”は克服できたのか?

UL Procyon:AI Image Generation Benchmarkにおける画像1枚あたりの出力時間

 VRAM 8GBでは厳しく、12GB以上を推奨(GeForceの場合)するテストだが、RTX 5070でもVRAMが極端に不足することはない。そのため、総合スコアーも1枚あたりの処理時間もRTX 5070がトップで、以降はGPUの序列ごとに美しくスコアーが整列した。

 ただし、RTX 4060 Ti 8GB以下のVRAM 8GBモデルは時折フリーズしたように固まってしまう状況も観測した。この時の結果を集計し、グラフに反映させるべきか悩んだが、毎回発現するわけではなく、発現条件も絞り込めなかったので外れ値として除外した。いずれにせよVRAM 8GBでは安定しなかった処理も、RTX 5060 Ti 16GB環境であれば安定していたということだ。

 最後に、「Topaz Video AI」を用いて動画にさまざまな処理(超解像・HD化・スローモーション処理など)をかけた際のフレームレートを計測しよう。このベンチマークは機能として組み込まれているものをそのまま利用した。入力ソースは1920×1080ドットを選択。処理ごとに多種多様な学習モデルが使用されるため、代表的なものを抜粋して比較する。

GeForce RTX 5060 Tiの16GB版を検証、“xx60 Tiの欠点”は克服できたのか?

Topaz Video AI:Artemis 2X/ Gaia 2X(アップスケール)、Nyx 2X(ノイズ除去)、Rhea 4X(超解像)処理におけるフレームレート

GeForce RTX 5060 Tiの16GB版を検証、“xx60 Tiの欠点”は克服できたのか?

Topaz Video AI:Hyperion HDR 1X(HDR化)、Chronos(4Xスロー再生)、Aion(16Xスロー再生)処理におけるフレームレート。RTX 2060 SUPERではAionはエラーで終了した

 まず最初のArtemis〜Rheaまでの結果は、GPUの格付け通りの序列になっている。VRAMはさほど消費されないため、ここでの決め手はGPUコアの世代差とメモリー帯域だと思われる。ただし、2番目のグラフはやや混迷気味だ。

 スローモーション処理であるChronosとAionに関してはGPUの序列通りだが、HyperionだけはなぜかRTX 3060 Tiがトップ、RTX 5060 Tiは最下位(RTX 2060 SUPERとほぼ同じ)という結果になった。

 Topaz Video AIの処理のクセが強い説もあるが、使用したv6.2.0はRTX 50シリーズ対応のTensorRTが組み込まれている。そのため、Hyperionの処理がRTX 50シリーズにうまく対応できていない、といったところだろうか。

RTX 5060 TiはRTX 4060 Tiの欠点を克服したGPU

 以上でRTX 5060 Ti 16GBのレビュー前編は終了だ。やはり今回のRTX 5060 Tiにおいても、描画性能の向上度合いは比較的おとなしい。とはいえ、グラフィックパフォーマンスは前世代より20%程度、条件が揃えば30%程度まで差が拡大するという結果は喜んでいいだろう。

 約2年前にRTX 4060 Tiをレビューした際は、RTX 3060 Tiと比べて大差ないこともしばしばあったが、今回はVRAM搭載量が効くシチュエーションにおいて性能アップが実感できた。特に、重めの学習モデルを利用したLLMの処理ではRTX 5070を蹴散らす性能を発揮した。

 しかしながら、RTX 4060 Tiは16GB版を確保できなかったので、RTX 5060 Ti 16GBが一方的に殴るような形になったのは少々悔いが残る。ただし、動画エンコード(UL Procyon)など、VRAMの搭載量よりも帯域が効きまくる状況を観測できたことは僥倖だった。

 RTX 4060 Tiの弱点は128bit幅という細いメモリーバスにあるが、メモリー規格をGDDR7にアップデートすることでGPU側の設計を大きく変更しない(メモリーバスを拡幅すれば消費電力も増える)まま、メモリー帯域を太くすることができる。

 そして、それがしっかり効いているシチュエーションが今回の検証では確認できたわけだ。つまり、RTX 4060 Tiの弱点を補ってより盤石にしたものが、今回のRTX 5060 Tiということになる。後編はゲーム検証だ。いましばらくお待ちいただきたい。

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