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エージェントへの期待が高まる一方、スキル人材/ガバナンス/LLMメスなど課題は山積

やがて来る“AIエージェントの無秩序状態” 重要なのは「コントロール」― Dataiku

2025年04月10日 09時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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ドメイン知識を生かしたAI開発のための「ハブ&スポーク型組織」

 ただし、そうした環境整備だけではまだ不十分だ。先に触れたとおり、企業には「AIスキル人材の不足」という課題もある。AI開発の規模をスケールさせるうえでは、これが足かせとなってしまう。

 特に、この先のAIエージェント開発でビジネス価値を生み出すには、現場の業務プロセスや細かなタスクをふまえたうえで開発しなければならない。佐藤氏も「やはり一部のAI専門家だけでは、すべてのバリューチェーンに適合できないだろう」と指摘する。

 ここでDataikuが提唱するのが「ハブ&スポーク型組織」による、分散型のAI開発だ。専門家による「ハブ」組織がAIやデータの利用をコントロール/支援してセキュリティやリスクの管理を行いつつ、アプリケーションやエージェントの開発はビジネス部門(各ドメインの専門家)側で行う形をとることで、開発のスケーラビリティを高める。加えて、ビジネス現場のプロセスや細かなニーズに即したAI開発が進めやすい。

大規模なAI構築を展開するためには「ハブ&スポーク型組織」が必要だと説明

 実際に、Dataikuの顧客である大手のライフサイエンス企業では、AI開発においてグローバルハブ&スポーク型組織を構成した。「グローバルを統括するハブ組織」「ブランド単位のハブ組織」「地域ごとのスポーク組織」という3レイヤーで、分散型AI開発を実施し、AIユースケースの市場投入までの時間を85%短縮するなど、大きな効果を挙げているという。

 「AI活用をスタートし、促進するために、専門家チームのCOEを構成している企業は多い。ただし、これから大規模にAIを展開していくためには、COEだけでは足りない。全体にコントロールを効かせることも考えると、やはりハブ&スポーク型の組織が必要だ」「日本企業でもこうしたハブ&スポーク型組織を広げていかなければ、日本のAI、デジタルの国際競争力は上がらないだろうと考えている」

大手ライフサイエンス企業での事例

ほかにも、大手タイヤメーカーでの事例を紹介した

 ただし、グローバル展開しているような大規模な組織が、いきなりトップダウンでハブ&スポーク型組織を構成するのも難しいだろう。佐藤氏は、チーム規模からAI導入をスタートし、その後に部門規模へ、そして全社規模へと展開していった別の企業事例も紹介した。利用規模の拡大と同時に、ポイントソリューションからRAGチャットボット、AIエージェントと提供するアプリケーションの幅も拡大している。

 「チーム規模の導入時は特定の人が開発を行ったが、規模拡大に合わせて基盤整備や人材育成を行い、セルフサービス型へと移行していった。(Dataikuの)ユーザー数も、当初の40ユーザーから、12カ月後には7000ユーザーにまで広がった」

ファッション大手での事例。活用する組織/用途/ユーザーを段階的かつ急速に拡大させることに成功したという

 佐藤氏は、ハブ&スポーク型組織をうまく機能させるためには、データとAIの「基盤インフラ層」と「AI開発/運用オーケストレーション層」の2つを分けて考えていくことになるだろうと述べる。もっとも、多くの日本企業はすでにDX投資を通じてデータの基盤インフラ層の整備は進めているため、そこに単一のAI開発/運用層がつながれば「DXへの投資がAIによるビジネス成果になる」(佐藤氏)未来が見えてくる。

基盤インフラ層(左)と、単一のAI開発/運用オーケストレーション層(右)による構成

「日本企業にある多くの『壁』を打破し、国際競争力を」

 Dataikuでは、AIスキルを持たないビジネス現場組織(スポーク組織)でも開発を主導できるよう、RAGチャットボットやAIエージェントを、ノーコードや自然言語で開発できる機能、テンプレートなどを拡充させている。さらに、アプリケーション/エージェント開発時のガードレールとなる「コストガード」「セーフガード」「クオリティガード」といった機能、ハブ組織向けの「GenAIガバナンス」機能なども備えている。

(左)AIアプリやエージェントをノーコードでも開発できる最新機能も (右)コスト、安全性、品質にガードレールも設けられる

 2025年、Dataikuでは「より強力なコントロール」を提供することに注力していくという。具体的には、大規模なエージェントの構築とオーケストレーションを行う環境提供、効率的な開発を支援する再利用可能なアセットの充実、実運用可能なAIガバナンスの組み込み、といった点でプロダクト強化を図っていくという。

 ただし、佐藤氏は「日本にはまだ、いろいろな意味で『壁』が多く残されている」とも指摘する。Dataiku Japanとして、こうした「壁」を取り払い、日本のデジタル国際競争力を高めるための取り組みを進めていきたいと述べた。

 「この壁を打破することができれば、ビジネストランスフォーメーション、つまり企業変革が起きると考えている。そのために、(データ/AI活用に関して)4つのことに取り組んでほしい。『あらゆる人材がちゃんと活用できること』『あらゆるデータが使えるかたちになっていること』『ガバナンスをしっかり取っていくこと』『多くのテクノロジーをつなげていくこと』の4つだ。現状では、分断したツール群でそれぞれを実現している企業も多いが、Dataikuであれば、すべてを一つのプラットフォームでコントロールできる」

日本市場においてはまだまだ「壁」も多いと指摘し、この状況を変えていきたいと話した

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