オリンピック競技のひとつである「射撃」は、海外ではメジャーな競技ではあるものの、国内では普及が進まず、競技人口も伸び悩んでいるのが現状だ。こうした、射撃競技における課題解決のアプローチとして、「株式会社Bufff(バフ)」がARを活用したシューティングゲーム「バーチャルショット」を開発した。
専用のデバイス銃とスマートフォンがあれば楽しめる
「バーチャルショット」は、公益社団法人日本ライフル射撃協会がスポーツ庁・日本スポーツ振興センターの組織基盤強化支援事業の支援を受け、株式会社Bufffと開発した、「ARを活用したシューティングゲーム」だ。
専用のデバイス銃とスマートフォンの2つがあればプレー可能で、手軽に楽しめるのが大きな特徴。デバイス銃とスマートフォンはBluetoothで連携しており、デバイス銃に装着したスマートフォンの画面に的が表示される。デバイス銃のトリガーを引くと、画面内の的を撃つことができる仕組みだ。
実際の射撃競技と同じく、的を正確に狙って撃ち、そのスコアを競うことができる。
取り組みやすさを高めることで競技への参加のハードルを下げる
「バーチャルショット」が生まれた背景について、株式会社Bufffの成瀬兼人代表は「競技人口の低下やジェンダー平等、地域格差といった射撃競技における課題解決のひとつとして開発しました」と話す。
射撃スポーツは、オリンピック競技の中でも中心的な伝統競技で、老若男女問わず競えるというスポーツの中でも珍しい競技だ。また、プレーしてみたい競技でも上位に選ばれるなど、意外と興味を持っている人が多い。しかし、日本は銃刀法の規制などもあり、射撃スポーツが手軽に楽しめる環境になく、銃に対する抵抗も強いため、スポーツとしての普及が進んでいないのが現状。
このような理由から、競技として取り組んでいる人は少ないが、一方でシューティングゲームを遊んだり、射的を楽しんだりしている人は多く、「潜在的なユーザー」は実は多い。そこで、「バーチャルショット」という形で、手軽に射撃競技に取り組めるようにすれば、「潜在的なユーザー」を巻き込むことができるのでは――と考えたという。
オリンピックの競技・種目になることを目標に掲げる
「バーチャルショット」はまだプロトタイプではあるものの、体験会で遊んだユーザーからは高い評価を受けているという。また、体験会には子供からお年寄りまで幅広い年齢層が参加したとのことで、「年齢問わず誰でも手軽に遊べる」という「バーチャルショット」の魅力がストレートに発揮された結果といえるだろう。
今後の展開について成瀬代表は、「バーチャルショットのように、ゲーム化が可能な競技は多いのですが、競技団体主導・公認でゲームを開発するという例は少なく、おそらく今回が初であると思います。競技団体が主導することで、例えばJOCの承認、さらにはIOCの承認を得ることも夢ではなくなります。最終的にはISSF(国際射撃スポーツ連盟)、IOCの承認を受け、オリンピックの競技・種目にすることを目標に掲げています」と話す。
また、2027年度開催に延期となったものの、世界規模のバーチャル・シミュレーションスポーツ競技大会「オリンピックeスポーツゲームズ」が、サウジアラビアで開催予定なのも、「バーチャルショット」普及の追い風になるだろう。「バーチャルショット」は、射撃競技の課題解決だけでなく、協会が掲げている「共生社会に適合するスポーツにする」というミッションを達成するため重要な役割も担っている。
正式なリリースはまだ未定だが、「競技団体主導で生まれたゲーム」のパイオニアとして、今後どのような影響を生み出していくのか注目したい。
