次は本技術を用いた量子コンピューター試作機の開発を目指す
量子計算エラーを0.1%未満に! 富士通がダイヤモンドスピン量子ビットで誤り訂正の実現へ
2025年03月25日 15時00分更新
富士通は、2025年3月24日、デルフト工科大学および同大学内の研究機関であるQuTechと共同で、「ダイヤモンドスピン方式」量子コンピューターの量子ゲート操作において、“エラー確率0.1%未満”の操作精度を達成したことを発表した。超伝導方式など、他の量子コンピューター方式を含めても最高水準の精度であり、ダイヤモンドスピン方式での達成は世界初。「誤り訂正」による量子計算エラーの低減が可能であることを示す成果だという。
ダイヤモンドスピン方式は、ダイヤモンドの結晶内に存在するカラーセンターと呼ばれる特殊な欠陥によって形成される「スピン」状態を量子ビットに用いる方式である。超伝導方式の動作温度(-273.13℃付近)よりも高温(-269℃付近)で動作するため、小型の冷凍機でも対応できるのが特徴だ。さらに、相互に量子状態を伝送できる光接続が可能であり、スケーラブルな量子コンピューター実現が期待できるという。
今回、量子誤り訂正が可能なレベルの高精度量子ゲート操作を実現するにあたり、高純度なダイヤモンドを用いることで環境ノイズの原因を除去。加えて、環境ノイズを低減する制御の仕組みを設計して、量子ビットの状態を安定化させたほか、高精度な量子ゲート操作の評価手法である「ゲートセットトモグラフィ」を適用して、量子ゲート操作を最適化している。
富士通 富士通研究所のフェロー 兼 量子研究所長である佐藤信太郎氏は、「今回の結果は、実用的量子コンピュータ実現を目指すうえで、ダイヤモンドスピン方式の高いポテンシャルを示すものです。本技術を活用し、今後ダイヤモンドスピン方式量子コンピュータのプロトタイプ機開発を目指します」とコメントしている。
