AWSジャパンは新たな金融戦略「Vision 2030」を策定
みずほ銀行が勘定系の一部をAWSへ 障害を前提としたレジリエンス強化を目指す
2025年03月03日 07時00分更新
2026年までに勘定系システムの一部をAWSに移行
みずほ銀行がAWSの本格利用を開始したのは2019年からだ。同行の執行役員 副CIOである山本健文氏は、「セキュリティ対策を中心に体制を整備し、共通基盤を構築するところから始まった」と振り返る。体制については、クラウド有識者を集めたバーチャルな「CCoE(Cloud Center of Excellence)」を立ち上げ、グループ横断で知見を共有しつつ、共通プラットフォームを整備した。
その後、パブリッククラウドの活用を加速して、クラウドテナント数も右肩上がりに。現在では、目的に応じて使い分けられるよう“マルチパブリッククラウド”でハイブリッドクラウド環境を構築しているが、「現時点でもAWSの利用が大多数」(山本氏)だと言う。市場系や国際系、チャネル系、情報系など、200以上のシステムがAWS上で稼働する。
加えて2024年から、勘定系システム「MINORI」の一部機能や開発環境をAWSに移行中だ。MINORIは、疎結合なオープン基盤を導入し、大量処理はメインフレーム系、それ以外はオープン系(プライベートクラウド)というハイブリッド基盤で構築されている。AWSへの移行を進めているのは、オープン系の「計表」や「日計」、「データマート(情報提供機能)」のコンポーネント。現在、テストの後半工程に入っており、2026年度の移行完了を目指している。
なぜ移行先としてAWSを採用したのか。ひとつは、障害を前提としたメンタルモデルへの転換が、オペレーショナル・レジリエンスの確保を推進するAWSの方向性と合致したことだ。「これまでメインフレームの世界では、システム障害をゼロにすべくチャレンジしてきた。しかし、ハイブリッドクラウド環境では、障害発生は起こるものとして、サービス継続のために何ができるかが重要になる」と山本氏。
加えて、IT人材が不足する中で、将来的に開発者を確保しやすいAWSを選択した。
クラウド基盤における業務DXや生成AI活用にも取り組む。例えば、Amazon Bedrockを活用して「面談記録作成AI」の開発を進めている。顧客との面談音声をテキスト化して、議事録のドラフトを自動生成するアプリケーションであり、1件あたり約20分の作業時間削減やアウトプット品質の平準化を見込んでいる。
山本氏は、AWSの「Vision 2030」について、「日本社会の安定した基盤を提供するために、成長領域への投資拡大やレジリエンシーの強化を図るというビジョンは、われわれの目指す世界と合致している」と言及。加えて、「AWSと協力して、AI活用によるビジネスのアジリティ向上やIT人材の確保に取り組むことで、経営基盤を強化していきたい」と展望を語った。












