このページの本文へ

世界最大テックイベント「CES 2025」現地レポート 第8回

AMD、CES 2025にて「Ryzen 9 9950X3D」「Radeon RX 9000シリーズ」の概要を発表

2025年01月07日 05時30分更新

文● 加藤勝明(KTU) 編集●北村/ASCII

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

RDNA 4世代のディスクリートGPU「Radeon RX 9070 XT」「Radeon RX 9070」
(2025年第1四半期発売予定)

 Radeonもついに「RDNA 4」世代へと突入する。4nmプロセスにはじまりAI MatrixアクセラレーターやRayアクセラレーターが更新され、AIやレイトレーシング性能が向上。さらに動画エンコードや出力系をつかさどるRadianceディスプレーエンジンも一新された。

 これらの更新部分がどういった技術的背景を持つかは不明だが、AIやレイトレーシングといったこれまでのRadeonにおける苦手要素を克服するための強化が織り込まれていると考えられる。

RadeonはRDNA 4世代に突入。注目したいのは左のチップ画像(レンダリング)で、RDNA 3世代のようにチップレット構造になっていない。RDNA 3でInfinity Fanout Linkを介したインターコネクト技術を開発したが、配線密度が極めて高くコストも高くつく(RDNA 3のL3が大幅に減った理由)ので、コストダウンのためにチップレットを廃止したと考えられる

RDNA 4に関する技術的な資料はこれだけ。AI Matrix AcceleratorとRay Accelerator、Radiance Display Engineがそれぞれ新世代になった、という話

 そしてこのRDNA 4を採用したRadeon第1弾としてRadeon RX 9070 XTとRX 9070の2モデルが2025年第1四半期に発売される。今世代よりRadeonの命名ルールがGeForceの型番と直接比較しやすいフォーマットに変更された。

 そして興味深い点として、今回投入されるRX 9070 XTとRX 9070の2モデルは既存のRX 7900 XTXを超えるハイエンドモデルではない、ということだ。RX 9070 XTおよびRX 9070はRX 7900 XTの領域を置換することを意図している。

 次の図はRDNA 4のカバーする領域を図示したものだが、おそらくRX 9070 XTは来たるRTX 5070 Tiないし5070と真っ向から衝突する製品になるだろう。RTX 5080や5090に相当する製品がないのは、ハイエンドに開発費を投じて回収に苦労するよりも、手堅いメインストリームを獲る方が良い、という判断なのだろうか。

RX 9070 XT/ RX 9070の位置付けは、RX 7900 XT~RX 7800 XT、すなわちプレミアムWQHDゲーミングから4Kゲーミングの入り口までをカバーするものとなる。そしてその下にRX 9060シリーズが控えている。この図の右側には「直接の競合製品と比較するため」と命名ルール変更の理由が明記されている。RTX 5070とRX 9070が激突することになるだろう

 ハイエンドをあきらめた分価格を抑え、RTX 50シリーズに対する競争力(VRAM、価格、性能、そして消費電力)を確保してくれれば、ユーザーとしてのメリットは大きい。具体的なパフォーマンスや価格といった購買意欲を刺激する情報が開示されなかったことだけは残念だ。

RX 9070 XTおよびRX 9070はさまざまなメーカーから発売される。発売時期は2025年第1四半期と漠然としたものにとどまる

 今回の発表ではRX 9000シリーズの新要素について具体的に触れられることはなかったが、唯一の例外が「FSR 4」、つまり「AMD FidelityFX Super Resolution 4」だ。

 FSRは特定ハードへの紐付け(DLSSにおけるTensorコアの関係)を否定するというテーゼのもと生まれたAMD主導による超解像技術(後にフレーム生成技術も追加される)であるが、FSR 4は「RDNA 4のために開発された技術」とAMDは断言している。

 FSR 4ではアップスケール時に機械学習を利用することでFSR 3の弱点とされた画質の改善を狙ったものだが、このAIの処理にRDNA 4のAI Matrixアクセラレーターをフル活用するであろうことは想像に難くない。

FSR 4は機械学習を利用したアップスケーラーだが、RDNA 4のために開発された技術と表現されている。NVIDIAのDLSSと同じ囲いこみならば、FSRはDLSSを攻撃する口実を1つ失うことになる

 だが筆者は「RDNA 4のために……」という文言が気になる。この文言通りなら第2世代のAI Matrix アクセラレーターを備えたRX 9000シリーズでないとFSR 4が利用できないと読めるが、そうなるとFSRの存在意義は消失する。DLSSに対するFSRのメリットを訴求する際、AMDは必ずといっていいほど特定ハードへの紐付けがないことをネタにしていたからだ。

 ただインテルのXeSS SRのように特定のハード以外でも運用は可能だが、AI処理を行なうニューラルネットワークが簡素になる(=画質も下がる)といった実装になっている可能性も残されている。この方式ならFSRを名乗っていても違和感はない。

RadeonはGeForceに比べてAI環境の構築が面倒だという風評があるが、AMDが提供する「AMD Adrenalin AI」を利用することでLLMや画像生成等を手軽に動かせるようになる。具体的なリリース日は不明だが、メーカーがお墨付きの生成AI環境が手軽に導入できるようになるのはありがたい

カテゴリートップへ

この連載の記事