高層ビルや歴史的建造物など、丸の内の建築群を現場のレポートを交えながら紹介する連載「丸の内建築ツアー」。今回は、高度経済成長期のモダニズム建築が令和の世にも残る「新東京ビルヂング」を紹介します。
新東京ビルヂングの建設
1960年前後の高度経済成長期に丸の内のオフィス需要は急拡大しており、その需要に応えるべく、丸の内と有楽町エリアのちょうど中間地点にあたる場所に建っていた1910年代竣工の「三菱仲6号館」、「三菱仲8号館」、「三菱仲8号館」、「三菱21号館」の4棟を建て替え、延床面積10万平米クラスの大規模オフィスビルを建設する計画が浮上します。
しかし、岩戸景気による輸入の増加によって国際収支が悪化している時代背景もあり、建設投資を抑制する方針を国が示していました。新東京ビルヂングの建設によって地下への変電所設置や駐車場整備によって丸の内エリア全体の公益に資することから、南東側の「三菱21号館」以外の部分を先行して着工する認可が得られます。
1961年11月15日に第1期として、南西側から北西側、北東側のL字平面形状で着工、1963年6月24日に竣工します。続いて、1962年には建設投資抑制政策が解除されたことから、1963年11月6日に第2期として南東側部分が着工、1965年4月28日に全体が竣工し、地上9階、地下4階、塔屋3階、高さ31m、延床面積102,768.18㎡という規模となりました。
1960年代に建設されたモダニズム建築のデザイン
1960年代前半に竣工した新東京ビルヂングですが、外観デザインは横連窓に白い腰壁という組み合わせのモダニズム建築となっており、当時としては珍しく建物の角部に丸みを帯びたアールの外壁も採用し、昭和の頃のレトロフューチャーが具現化されたオフィスビルとなりました。
建物内部は、1階は十字に通路が伸びており、中央部の吹き抜け天井部には円形の幾何学模様が独特な大型照明、床や壁にはモザイク調のアートタイルが配置されているほか、矢橋六郎作のモザイク画「彩雲流れ」が設置されていることが特徴となっています。
また、1階から地下へ向かう階段は、赤い壁面にらせん階段という派手なものとなっており、高度経済成長期の「近未来」が内装面でも表れていました。
3階以上には、オフィスの執務室が入っており、建物形状も中央部が屋外の吹き抜けとなっている口の字型に建物が配置されています。エレベーターや階段、トイレなどの設備関係が口の字型の内側に配置され、大半の執務室が外側に配置されていますが、一部は内側にも配置されており、その採光面もあり、口の字型になっているものと思われます。
築60年以上経過した今、再開発や建て替えではなく大規模リニューアル
1963年に第1期が竣工して既に60年以上が経過した新東京ビルヂングですが、こちらは再開発や建て替えではなく、大規模なリニューアルがなされることになりました。
1階の北西角にはピロティ空間が新たに設けられるほか、横連窓の外観デザインは残しつつも窓ガラスを最新の「Low-E複層ガラス」にすることで熱負荷の低減を図り、環境性能の向上が行われます。
内装面では、1階中央部の円形照明や床、壁のモザイク調アートタイルを残しつつもデザインの刷新を図り、3、5階には約30点のアート作品も設置されます。通常は廃棄される周辺ビルの仮囲いアートをリメイクした作品も導入するとのことで、どのようなアートが設置されるか気になりますね!
昭和の高度経済成長期のレトロフューチャーを夢見た「新東京ビルヂング」ですが、令和の世でもまだまだ近未来へ突き進む現役オフィスビルとして活躍してくれそうです。
以上で今回の建築ツアーは終了。再開発や建て替えが進む丸の内のビル群にあって、新東京ビルヂングは大規模リニューアルを選択。いったいどんなビルとして生まれ変わるのでしょうか。
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