ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第789回
切り捨てられた部門が再始動して作り上げたAmpereOne Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU
2024年09月16日 12時00分更新
AMDのGenoaよりも性能消費電力比が30%以上高い
そんなAmpereOneであるが、同社初のチップレット構成である。メモリーコントローラーおよびPCIeは外付けのチップレットの構成となる。したがって、8ch DDR5のAmpereOneと12ch DDR5のAmpereOne Mは、同じダイであり単にメモリーコントローラーの搭載数が異なるという形になる。
8ch DDR5のAmpereOneと12ch DDR5のAmpereOne Mは、メモリーコントローラーの搭載数が異なる。"Same building block"とはあるが、パッケージが共通かどうかは不明。現実問題としては8ch版のAmpereOneと12chのAmpereOne Mではパッケージが異なるように思えるが、さてどうだろう?
このチップレット同士の接続は、同社独自のインターコネクトを使っているという説明である。最大2.8TB/秒とあるが、これは全チップレットを接続した場合の数字であり、おそらくチップレット1個当たりは180GB/秒程度。16bit幅とすれば信号速度は11.2GT/秒程度と考えられる。あるいは32bit幅で5.6GT/秒かもしれないが、それだと配線が大変そうだ。
AmpereOneのドキュメントを読んでもDDR5とだけしか書かれていないが、8chで16DIMMが最大構成ということから1chあたり2DIMMになるので、すると速度としてはDDR5-4400のRegistered DIMMと考えられる。ということは1chあたり35.2GB/秒、2chでも70GB/秒少々なので、180GB/秒の帯域があれば十分だろう。仮に1DIMM/チャンネルに制限してDDR5-6400を使ったとしてもチャンネルあたり51.2GB/秒、2chで102.4GB/秒に過ぎないからだ。
コンピュート・チップレットの構造が下の画像で、4つのCPUコアで1つのクラスターを構成し、このクラスターを6×8で48個搭載し、合計192コアという形だ。
チップレットへの接続用のPHYは16グループ用意されており、当初からAmpereOne Mの構成を想定に入れていることがわかる。このコンピュート・チップレットはTSMC N5だが、I/Oチップレットの方はTSMC N7であると発表されている。
性能としては、SPEC CPUの結果はAMDのGenoa/Bergamoと比較して、Genoa比で最大50%、Bergamo比でも15%性能消費電力比が向上したとしており、ラック当たりの性能で言えば34%高いとしているが、性格からすればGenoaよりもBergamoとの比較が正しいと思われ、この場合は10%程度の向上に過ぎない。
またクラウド・ワークロードに関してもGenoaと比較して性能消費電力比が32~58%向上、より少ないラック数/消費電力で同等の処理が可能としている。
先ほども書いたが、現状Armベースでユーザーが購入できるサーバー向けプロセッサーは意外と少なく、それもあってAmpere Alter/AlterMAXが多く利用されていたわけだが、こうした市場向けにより高い性能消費電力比のプロセッサーを導入するという同社の目論見に対応した最初の製品が無事出荷開始されているのはとりあえずは喜ばしい。
Genoa/Bergamoには勝ててもTurinにはどうか? Sierra Forestとはどうだろう? などいろいろ疑問はあるが、そのあたりのデータも今後出てくるかもしれない。

この連載の記事
-
第852回
PC
Google最新TPU「Ironwood」は前世代比4.7倍の性能向上かつ160Wの低消費電力で圧倒的省エネを実現 -
第851回
PC
Instinct MI400/MI500登場でAI/HPC向けGPUはどう変わる? CoWoS-L採用の詳細も判明 AMD GPUロードマップ -
第850回
デジタル
Zen 6+Zen 6c、そしてZen 7へ! EPYCは256コアへ向かう AMD CPUロードマップ -
第849回
PC
d-MatrixのAIプロセッサーCorsairはNVIDIA GB200に匹敵する性能を600Wの消費電力で実現 -
第848回
PC
消えたTofinoの残響 Intel IPU E2200がつなぐイーサネットの未来 -
第847回
PC
国産プロセッサーのPEZY-SC4sが消費電力わずか212Wで高効率99.2%を記録! 次世代省電力チップの決定版に王手 -
第846回
PC
Eコア288基の次世代Xeon「Clearwater Forest」に見る効率設計の極意 インテル CPUロードマップ -
第845回
PC
最大256MB共有キャッシュ対応で大規模処理も快適! Cuzcoが実現する高性能・拡張自在なRISC-Vプロセッサーの秘密 -
第844回
PC
耐量子暗号対応でセキュリティ強化! IBMのPower11が叶えた高信頼性と高速AI推論 -
第843回
PC
NVIDIAとインテルの協業発表によりGB10のCPUをx86に置き換えた新世代AIチップが登場する? -
第842回
PC
双方向8Tbps伝送の次世代光インターコネクト! AyarLabsのTeraPHYがもたらす革新的光通信の詳細 - この連載の一覧へ















