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「すべての企業が“インテリジェンス製造企業”に」 Dell Technologies World 2024のメッセージ

“オンプレミス回帰”方針を明確に、デル年次イベント発表まとめ

2024年06月24日 07時00分更新

文● 大河原克行 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 デル・テクノロジーズは2024年6月18日、5月下旬に米国で開催した「Dell Technologies World 2024」における発表内容をまとめて解説した。今年のDell Technologies Worldは、同社が創業40周年の節目を迎えたことを参加者と祝うとともに、「Accelerate AI adoption to unlock innovation」をテーマに、AIに関するさまざまな発表が相次ぐものになった。

 デル・テクノロジーズ 上席執行役員 システムズエンジニアリング統括本部長の藤森綾子氏は、「今回のイベントが“Dell Technologies World AI Edition”と称されていたことからもわかるように、AI一色の内容だった」と総括した。なお日本からは、顧客やパートナー企業から170人以上が参加したという。

「Dell Technologies World 2024」は米国ラスベガスで5月20日~23日(現地時間)に開催された。最大のテーマは「AI活用の加速」

デル・テクノロジーズ 上席執行役員 システムズエンジニアリング統括本部長の藤森綾子氏

オンプレミス回帰の動きに対応し「Dell AI Factory」発表

 同社 会長兼CEOのマイケル・デル氏は、開催初日の基調講演「Igniting Innovation(イノベーションに火をつける)」のなかで、すべての企業が“インテリジェンス製造企業”になる時代が訪れているという「The Age of AI」のメッセージを打ち出した。そのうえで「Dell AI Factory」を核にした数多くのソリューションを発表した。

AIを中心とした今回の発表の全体像

 「これまでの進歩はすべて前座であり、これからAIの時代に移行していく。“AI is Everywhere”の時代がやってくる」と語ったデル氏は、AI活用を中心に考えたIT基盤と組織の改革が必要になっていること、データが存在する場所でAI処理を実行できる環境が重要であること、そうした“データ重力”やLLM(大規模言語モデル)の推論コスト効率を背景として「オンプレミス回帰」が進むことなどを予測した。

 こうした将来像に基づき発表したのが「Dell AI Factory」である。AI処理向けに設計されたPC、サーバー、ストレージ、ネットワークなどのハードウェアインフラの提供、さまざまなソフトウェア連携を可能にするオープンエコシステムの実現、AI活用に向けた戦略やユースケースなどを提案するサービスを一気通貫で組み合わせ、顧客のAI活用を促進するフレームワークだ。

今回、最も重要な発表と言える「Dell AI Factory」

 Dell AI Factoryの位置づけについて、藤森氏は「ひとつの製品や、ひとつのソリューションを指すものではない。インテリジェンス製造企業に向けた、フレームワークの提案である」と位置づける。

 AI Factoryを動かす原料は「データ」である。企業の最も貴重なデータはオンプレミスに存在するため、そこにAIを導入することを支援していく。ストレージ関連では、スケールアウトファイルストレージ「PowerScale」に、新たな並列ファイルシステムアーキテクチャ「Project Lightning」を統合し、大規模で複雑なAIワークフローのトレーニングを高速化することなどが発表された。

 同社によると、Dell AI Factoryはすでに数百件以上の試験運用がスタートしており、さまざまな業種におけるユースケースを顧客に紹介できる段階にあるという。

Dell AI Factoryの詳細

 なお、この発表に先立つ3月には、NVIDIAとの提携による「Dell AI Factory with NVIDIA」が発表されている。今回はこちらでも拡張が発表された。「Dell Native Edge」との統合、NVIDIAソリューションの自動展開、「NVIDIA NIM」への対応、デジタルアシスタント向けサービスの提供などだ。なお、同ソリューションに基づくデジタルアシスタントの事例として、米国テキサス州のアマリロ市におけるユースケースも紹介された。

データ活用の加速に向けた「5つの基本理念」

 開催2日目の基調講演は、「Making AI Real(AIを現実のものにする)」をテーマに掲げ、同社 副会長 兼 共同COOのジェフ・クラーク氏が登壇した。クラーク氏はAI活用に向けた「5つの基本理念」として、データこそが差別化要因であること、AIの側をデータに近づけること、ITを適切な規模で利用すること、オープンなモジュラーアーキテクチャーを採用すること、幅広くオープンなエコシステムを活用することを挙げた。

 「生成AIは桁違いの加速を続けており、ゲームチェンジャーになりうる。データを基に大規模な並列処理をGPUで行い、これを高速AIファブリック、高速AIストレージと組み合わせることでデータがインテリジェンスに変換される。生成AIという獣にデータという餌を与える。AI導入を加速するためには5つの基本理念を考える必要がある」(クラーク氏)

クラーク氏は、AI活用の加速に向けた「5つの基本理念」を提唱

 さらにクラーク氏は、AI Factory実現のための個別コンポーネントを詳細に説明した。データセンター製品としては、高速コンピューティングのGPUサーバー「PowerEdge XE9680L」、高速ネットワーキングの「PowerSwitch Z9864F」、高速ストレージの「PowerScale F910+Project Lightning」のほか、オープンエコシステムを通じて40を超えるターンキーソリューションを提供。一方、クライアントPCとしては、AIワークロードに適したハードウェアを搭載するAI PCを紹介した。クアルコムのSnapdragonプロセッサーを搭載する「Copilot+ PC」は3機種5モデルが発表されている。

 AI関連エコシステムのソリューション発表も相次いだ。

 Broadcomとは、「Tomahawk 5」チップセット搭載の高速ネットワークファブリック「PowerSwitch Z9864F-ON」を発表。Metaとは、OSS化された「Llama 3」LLMをDell AI Factoryに組み込めるようにした。Hugging Faceとは、同サービスがホストするLLMをDell向けにカスタマイズした「Dell Enterprise Hub on Hugging Face」を発表。そしてMicrosoftとは、Copilot+ PCを使ったリアルタイム翻訳のデモを実施し、インターネット接続しなくてもローカルでCopilotが利用できるメリットを紹介した。

 藤森氏は「とくにHugging Faceとのエコシステムでは、Dell Enterprise Hubによって、カスタマイズしたオープンなLLMを、オンプレミスで簡単に、かつ安全にトレーニング、展開できる」と強調。生成AIモデルに最適化したオンプレミス環境を提供できる、最初のインフラプロバイダーだと述べた。

「データがあるところにAIを持って行く」デルの戦略が明確に

 デルのAI戦略は、同社製品にAIを搭載する「AI in」、同社製品を活用してAIを実現する「AI On」、AIエコパートナーとの連携によってAIを提供する「AI with」で構成されている。今回のDell Technologies World 2024では、いずれの領域においても新たな製品やサービス、ソリューション、ユースケースなどが発表された。また、同社社内でAIを活用する「AI for」に関するセッションも用意されたという。

 藤森氏は、人類の進歩のためにAIは必要である一方で、AIの導入には責任が伴うこと、サステナビリティへの取り組みも必須であること、生成AIを正しく使うための訓練が必要であることなどにも触れた。

 Dell Technologies World 2024では、デルのAI戦略において「オンプレミス回帰」という姿勢を明確に打ち出していた点が興味深い。それは、デル氏が打ち出した「AIにデータを持っていくのではなく、データがあるところでAIが処理する」という表現に集約されよう。PC、サーバー、ストレージ、ネットワークなどのインフラ製品に強みを持つデルならではの戦略といっていい。デルのAI戦略の行方は、オンプレミス回帰の視点で捉えると明確になると言えそうだ。

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