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東北大など、磁石に潜む「電子の宇宙」の室温制御に成功

2024年04月24日 06時54分更新

文● MIT Technology Review Japan

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東北大学、日本原子力研究開発機構の共同研究チームは、電子の量子状態が持つ「電子の宇宙」に相当する量子計量を、室温、卓上の磁性体中で実験的に制御することに成功。従来法則から外れた特異な電気伝導を検出し、これが制御された量子計量の証拠であることを解明した。一般相対性理論の効果として、強い重力の働く宇宙空間では直進する光の経路が、「計量」と呼ばれる、時空のひずみに沿って曲がることが知られており、同様の現象が、物質中の電子の流れである電気伝導でも見られると理論的に予測されている。

東北大学、日本原子力研究開発機構の共同研究チームは、電子の量子状態が持つ「電子の宇宙」に相当する量子計量を、室温、卓上の磁性体中で実験的に制御することに成功。従来法則から外れた特異な電気伝導を検出し、これが制御された量子計量の証拠であることを解明した。一般相対性理論の効果として、強い重力の働く宇宙空間では直進する光の経路が、「計量」と呼ばれる、時空のひずみに沿って曲がることが知られており、同様の現象が、物質中の電子の流れである電気伝導でも見られると理論的に予測されている。 研究チームは今回、スピン(個々の原子が持つ磁気)が三角形状に配位し、全体として磁力は持たないが、磁力を示す物質と類似した電気伝導の特性を持つとして注目されている「カイラル反強磁性体」に着目。カイラル反強磁性体の一種であるマンガン・スズ合金(Mn3Sn)と白金(Pt)の積層薄膜において、非オーム的な電気伝導の一種である「非線形ホール効果」の信号を実験で捉えた。 研究チームは、理論モデルを用いた計算により、測定された非線形ホール効果が電子の量子計量を起源として現れたものであることを解明。磁場方向や温度を変えることでMn3SnとPtの界面のスピンの構造が変化し、それに伴って電子の波動関数に内在する量子計量が変化すると考えることでのみ、実験結果を説明できることを明らかにした。さらに、この量子計量に基づき理論的に試算される非線形ホール効果が、今回の実験結果と一致することを示した。 同チームによると、昨年米国のチームが極低温、高磁場での量子計量の制御が報告されたが、今回の研究は室温、低磁場(卓上)で実現した点に革新性があり、得られた知見が今後、整流器やセンサーなどの新規量子スピンデバイスへと発展していくことが期待されるという。研究論文は、ネイチャー・フィジクス(Nature Physics)に2024年4月22日付けで掲載された

(中條)

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