「Uber Eats」時代の新しいコンセプト
なぜBALMUDA The Toasterの妹分とも言える「リベイカー」を作ったのか。寺尾玄社長によれば、きっかけはまるごとソーセージです。
「私は1973年生まれ、茨城県育ち。中高生の頃、ほとんど毎日『まるごとソーセージ』を食べていて、体の5パーセントぐらいは“まるソー”とでできている。それくらい非常に重要な食べ物なので、これをあたためて食いたいなぁって前から思ってたんです。で、これを普通のトースターで何度も焼いてみたんですが、真っ黒焦げになって、内側を温めることができない。そういう長年の宿願みたいなものがあったんです。BALMUDA The Toasterを作ったときに『もしかしたら……』と思って、『フランスパンモード』で試したら、アツアツで外が焦げずにサックリになった。『クロワッサンモード』だと、上が少しだけ焦げておいしくなった。それで、クロワッサンモードとフランスパンモードの中間が一番いいっていう結論になったんですよ。で、作ったのがリベイカーです」
要するに「まるごとソーセージを一番おいしく焼けるトースターを作りたかったので」ということ。社長がそんな乱暴なストーリー語ってていいのかという話ですが、以前から16歳のころ学校に行かずにバイク乗り回して夜明けに食べてたカップヌードルがうまかったなどと話しているので平常運転です(「バルミューダ、おいしいコーヒーにこだわった電気ケトル『BALMUDA The Pot』」)。
そして、リベイカーを作るうえでのもうひとつのキーワードがマックポテト、Uber Eatsに代表される食文化です。
「うちの息子に『一番家でうまく食べたいものは?』って聞いたら『マックフライポテト』って言うんです。日本で一番Uber Eatsで配達されているのは、たぶんマックフライポテトなんですよ。日本でUber Eatsの利用率はマクドナルドが日本一なんで、何のセットにもついてくるから」
コロナ禍をはさみ、テイクアウトやデリバリーが当たり前になり、冷凍食品やお総菜、コンビニフードも“自炊”に入ってくるような食文化が定着しました。そこで「家の外」と「家の中」を軽やかに結ぶキーワードとして、“リベイク”をコンセプトにした新たな製品を作ったという流れです。
「そのときの食文化と衝突すると、ものすごくでかい輝きと熱量を持つので。その辺がいまは時代的に面白いところじゃないかなと思います」
そのため、リベイカーの販促イメージも背景は家ではなく街。リベイカーの足部分はこれまでのBALMUDA The Toasterよりもやや高く、より躍動感あるデザインになっています。
実際、BALMUDA The Toasterが売れたのは高級食パンブームまっただなか。時代に即した製品が実需を生むという読みは正しいのかもしれません。寺尾社長は「学生時代、喫茶店のおいしいトーストを知った世代」に当たったと分析していましたが、そういうところもあるかもしれません。