10カ国調査、チャット/メール/会議……集中力を途切れさせる原因や解決策を提示
仕事中の“集中力の途切れ”で日本は25.8兆円の損失、Dropbox調査
Dropbox Japanは2023年12月12日、ナレッジワーカーの“集中力の途切れ”がもたらす労働生産性損失に関するグローバル調査「In search of lost focus」の結果を発表した。集中力を維持できるように対策を行うことで、調査10カ国全体で年間およそ370兆円(2兆5200億ドル)、日本単体でも年間およそ25.8兆円(1760億ドル)の経済的効果が創出されると試算している。
同日の記者説明会ではDropbox Japan ソリューション本部長の岡崎隆之氏が、今回の調査結果の詳細やDropboxが考える環境改善のための提言、さらに「Dropbox Dash」や「Dropbox AI」「Dropbox DocSend」といったDropboxの最新ツール群がどのように改善をサポートするのかを紹介した。
10カ国/1000人のナレッジワーカーに聞く「集中力の途切れ」の影響
この調査は、北米、欧州、アジア(日本を含む)、オーストラリアなど世界10カ国のナレッジワーカー1000人以上を対象として、Dropboxからの委託を受けたエコノミスト・インパクト(英国エコノミスト・グループの調査機関)が今年実施したもの。ここで言うナレッジワーカーとは、肉体労働よりもデジタルツール使った仕事を主に行う専門家、研究者、教育者、アナリスト、ITスタッフなどを指す。
Dropboxでは今回の調査目的について、「集中力の途切れがもたらす労働生産性損失の算出」「集中力を妨げる原因の特定」「集中力の維持につながる改善策の模索」の3つを挙げている。
「これまでDropbox自身が仕事のやり方をデザインしようと考えたときに、仮説として『ミーティングが多すぎる』『チャットメッセージのせいで集中できない』といった課題が上がっていた。社内サーベイも含めて、そこが課題であることはある程度特定していたが、今回は実際にどのくらいの規模の損失があるのかを調べた。調査の結果、仮説のとおり大きな影響があることがわかった」(岡崎氏)
経済的損失:集中力の維持を助ければ34%もの成長余地がある
まず労働生産性の損失については、冒頭で触れたとおり調査10カ国の合計で年間約370兆円、日本単体でも25.8兆円という大きな数字が算出された。日本のナレッジワーカーの経済的貢献額(年間75.2兆円)と比較すると、集中力の途切れによって34%もの損失が生じていることになる。ただし岡崎氏は、これは「25.8兆円もの潜在的な成長余力がある」と言い換えることもできると指摘する。
ちなみに調査10カ国間で、集中力の途切れにより生じている経済的損失の割合には大きな違いは見られなかったという。
集中力を妨げる原因:仕事のチャットや会議が妨げになる根本原因とは
今回の調査では、調査対象者のの42%が「生産的な作業を1時間以上連続で行うことができない」と回答したという。こうした作業の中断によって、日本のナレッジワーカーは1人当たり年間およそ511時間(64日分)を損失していることも明らかになっている。
集中力を妨げる原因については、「仕事に関するチャットメッセージ」による損失時間が大きい(年間153時間)と分析されている。そのほか「仕事に関するミーティング」(年間79時間)、「仕事に関するメール」(年間72時間)も大きい。
コロナ禍の初期(2020年)に行った調査とコロナ禍以後の調査(今回)を比較したデータ(米国)の変化に注目しても、コロナ禍初期の「リモートワーク環境が十分に整っていない」課題に代わって、今回調査ではチャット、メールといった「リモートワークに必要なツール」にまつわる課題が浮上している。
上記のとおり「原因」として名前の挙がったチャットやメール、ミーティングだが、いずれも仕事に関係のあるものであり、特にコロナ禍以後には必要性も高まっている。これらが集中力の途切れの原因になってしまう流れについて、岡崎氏は次のように説明した。
「たとえば、プレゼンテーション作成にすごく集中しているときにチャットメッセージが届き、作業を中断して返信をする。その結果、プレゼンテーションで何を書こうとしていたのかを忘れてしまい、それを思い出す、考え直す回復の時間が必要になる。あるいは、ミーティングをしている中で『この資料はどうだったっけ』と思いだし、探しているうちに別のチャットが入り、さらにもう次のミーティングが始まる――。そうしたことを繰り返すうちに作業のバックログがどんどんたまり、さらに中断が発生しやすい状況になる。そんな状態なのではないか」(岡崎氏)
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