このページの本文へ

前へ 1 2 3 次へ

ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第742回

Ryzen Threadripper 7000シリーズのターゲットはAMDの熱狂的なファン AMD CPUロードマップ

2023年10月23日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 ここのところインテルの話が続いていたので、ひさびさのAMDである。10月19日、AMDはRyzen Threadripper 7000およびRyzen Threadripper Pro 7000 WXシリーズの詳細を発表した。発売開始は11月ということでもう少し先であるが、こちらの詳細を説明したい。

 Ryzen Threadripper 7000(わかりづらいので、以後はAMDが説明会の際に使っていたRyzen Threadripper 7000 HEDTという言い方を利用する)とRyzen Threadripper Pro 7000 WXはどちらもZen 4、つまりGenoaベースのEPYC 9004シリーズをベースとしたハイエンドデスクトップおよびワークステーション向け製品という位置づけになる。

Pro 7000 WXのメモリーは8chに制限
理由は12chにするとE-ATXマザーに収まらないから

 まずはRyzen Threadripper Pro 7000 WXについて。コア数は最大96となり、またI/FもPCIe Gen5対応になったほか、動作周波数も引き上げられている。

Ryzen Threadripper 7000シリーズのターゲットはAMDの熱狂的なファン AMD CPUロードマップ

全製品Zen 4ベースで、Zen 4cベースの製品はない。理由はZen 4cにすると動作周波数を低く抑えないといけないから、だそうだ

 ラインナップが下の画像で、既存の5000シリーズと同じコア/スレッド数であるが、トップエンドに96コア製品が追加されているのが特徴。また全体的に動作周波数が上がり、これにともないTDPも280Wから350Wに引き上げられている。

Ryzen Threadripper 7000シリーズのターゲットはAMDの熱狂的なファン AMD CPUロードマップ

さすがに96コアではベースクロックが2.5GHzまで下がっているが、あとは全体的に400~600MHzほどベースクロックが引きあがっており、またブーストクロックは5GHz超えになっている

 下の画像が内部構造で、一見するとEPYC 9004と違いがない。実際CCDだけでなくIODも完全にEPYC 9004と同じものが利用されている。

Ryzen Threadripper 7000シリーズのターゲットはAMDの熱狂的なファン AMD CPUロードマップ

Ryzen Threadripper Pro 7000 WXの内部構造。この図そのものはEPYC 9004シリーズと共通である

 EPYC 9004との違いは下記のとおり。

  • メモリーが8chになり、DDR5-5200までサポート(EPYC 9004は12chでDDR5-4800まで)
  • メモリーはすべて1DIMM/chに制限(EPYC 9004はDDR5-4400なら2DIMM/chをサポート)
  • PCIeは同じながらCXLのサポートはなし
  • 2ソケットのサポートはなし。1ソケットのみ

 最大のものはメモリーが8chに制限されたことだが、これは現実的な理由もあって「12chにすると既存のExtended-ATXマザーに載らない」らしい。もちろんRyzen Threadripper Proはワークステーション向けの製品なので既存のATXに収まる必要は皆無だが、さすがにExtended-ATXにすら載らないとなるとケースそのものの見直しが必要になる。12chのDIMMスロットの幅は半端ではない、ということだ。

 これはパッケージサイズにも反映される。下の画像は左からGenoa、Instinct MI300、Milanのパッケージである。

Ryzen Threadripper 7000シリーズのターゲットはAMDの熱狂的なファン AMD CPUロードマップ

パッケージサイズ。左のEPYC 9004シリーズは、ダイの代わりに金属板を埋め込んだメカニカルサンプルなので注意

 Genoaはほぼ正方形に近い、75.4×72mmになっているのがわかる。Milanは75.4×58.5mmだから、13.5mmほど幅(このアングルで言えば高さ)が増えている格好だ。

 これはMilanまでの8chから12chにメモリーチャネル数が増えた影響で、信号Pin(というより信号Pad)も相応に増やす必要があり、このためパッケージの大型化を余儀なくされたという意味でもある。これに対し、Ryzen Threadripper Pro 7000 WXのパッケージは既存のsTR4とほぼ同じ(厳密に同じかどうかは確認できていない)で、メモリーも8chになっているから、既存の寸法で収めやすいことになる。

Ryzen Threadripper 7000シリーズのターゲットはAMDの熱狂的なファン AMD CPUロードマップ

Ryzen Threadripper Pro 7000 WXのサンプル。寸法はEPYC 7003シリーズやRyzen Threadripper 5000 WXシリーズのsTR4とかなり近いが互換性はない。上の画像と見比べると、切り欠きがなくなっているのにも注目

 もちろん、ここで12chを出してしまうとEPYCの1ソケット製品との差別化が難しくなるからという事情もあるのだろうが、これらの理由でRyzen Threadripper Pro 7000 WXは8chの構成となった。ちなみにこの新しいパッケージはsTR5とされている。

 CXLのサポートがない点に関しては、「ユースケースがないから」だそうだ。確かに現状CXLはまずサーバー市場に向けて、OSやミドルウェア、アプリケーションの対応作業が進められている状況であり、まだCXL ReadyなOSやミドルウェア、アプリケーションが普通に提供されている状況ではない。

 技術的には既にCXL対応になってはいるものの、Ryzen Threadripper Pro 7000 WXがターゲットとするプロフェッショナル向けのOSやアプリケーションが対応を打ち出すまでは、プラットフォーム側でサポートしても無駄なサポートコストが増えるだけだろう。

 そのsTR5プラットフォームの構成が下の画像だ。EPYCの場合は基本専用のチップセットはなく(最低限のものはCPU側で提供される)、もし必要ならOEM側で用意する(が、普通はない)のに対し、Ryzen Threadripper Pro 7000 WXではWRX90チップセットが用意される。ワークステーション用途を考えると、これは妥当な配慮だろう。

Ryzen Threadripper 7000シリーズのターゲットはAMDの熱狂的なファン AMD CPUロードマップ

サウンドはCPU側から出る、というのが少しおもしろい。CPUからは合計128レーン(うちGen 5が120レーン、Gen 3が8レーン)+チップセット接続用にGen 4が4レーンのPCIeが出る。チップセットからは合計8レーンのみで、合計136レーンとなる計算だが、144レーンとされているあたりは、さらに未使用の8レーンが用意されているということだろうか?

前へ 1 2 3 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事