今どき珍しい生産を中国に頼らないスマホ
スマートフォンメーカーが大手に集約されていく中で、グローバルでは無名の企業から新しいスマートフォンが発売になりました。meenというブランドの「M60」です。しかも中国ではなくマレーシアからの登場です。meenのスマートフォンを製造販売するMeen Tech Networkはマレーシアでスマートフォンなどの開発や製造を長年続けてきた企業。M60は同社の集大成とも言える製品なのです。
meenのスマートフォンは2023年頭に最初の4Gモデルが登場しており、2023年から本格的にスマートフォン市場に参入しました。近年の新規参入メーカーと言えば「Nothing」の名前を思い浮かべる人が多いでしょう。Nothingはイギリスの企業です。しかし、Nothing Phoneシリーズの製造は中国BYDが請け負っていると言われています。
中国はiPhoneをはじめとする世界のスマートフォン工場でもあり、Nothing Phoneが中国製造でも驚くべきことではありません。ところがmeenの製品はマレーシア産。M60は「マレーシア人がマレーシア人のためにマレーシアで開発製造」したスマートフォンとのこと。これは非常に珍しいと言えます。
M60はmeenのフラッグシップモデルと言えます。しかし、チップセットはSnapdragon 888と古い世代のものを採用しています。メモリー8GB+ストレージ256GB、6400万画素カメラと1300万画素フロントカメラは悪くはないでしょう。大きな特徴になるのはバッテリー容量で6800mAhと大型です。
どうせなら、MediaTekのHelio G99あたりを搭載した4Gモデルとして出したほうが性能は高くできたはずです。ですが、今から参入しても4Gモデルでは競争にならないため、5Gモデルをどうしても投入したかったのかもしれません。
ちなみに、マレーシアの5Gは国営のDNB(Digital Nasional Berhad)が700MHz、2.8GHz、3.5GHzの割り当てを受け、5Gインフラを構築。そのインフラを各キャリアがオークションで購入するという、ちょっと変わった方法でカバレッジを広げています。
キャリア自らがインフラを構築する必要がないこともあり、マレーシアの5Gカバレッジは2023年8月末時点で人口密集地域の68.8%、2024年には80%に達する予定です。
また、M60のアンバサダーにはマレーシアを代表するスポーツ選手であり、バトミントンの男子世界ダブルスで1位になったこともあるプロバトミントン選手のタン・ブンホン氏を採用。ちょっと渋めのアンバサダーですが、M60のターゲットユーザーは若年層よりも上を狙っているからかもしれません。
なお、マレーシアに参入した新規メーカーとしては以前「FreeYond」を紹介しましたが、同社は新興国をターゲットにした格安モデルで勝負をかけているため、meenとは方向性は大きく異なります。
新規メーカーの「FreeYond」とは?
2022年に立ち上がったばかりの、中国をベースとする「FreeYond」。新興国向けにエントリーモデルで勝負をかける
さて、マレーシア発のスマートフォンの人気はどれほどなのでしょうか? 発売になったのは2023年8月頃で、筆者は9月にクアラルンプールを訪れてショップで状況を聞いてみました。まだ知名度がないことから、新しいメーカーということで興味を持ったマニアなどが買っている程度とのことで、まずはブランドや製品名を知ってもらうことから始めなくてはならないようです。
また価格は3499リンギット、約11万円です。Snapdragon 888でこの価格はちょっと高いですね。ちなみにシャオミ「Xiaomi 13T」の16GB+1TB版が同じ価格です。新規メーカーの参入は市場を活性化させるものの、消費者が欲しいと思う製品でなくてはなりません。M60の性能は現時点ではミドルレンジクラスであり、そう考えると価格はもっと引き下げるべきでしょう。M60が果たしてどれくらいマレーシアで売れるのか、気になるところです。
「スマホ好き」を名乗るなら絶対に読むべき
山根博士の新連載がASCII倶楽部で好評連載中!
長年、自らの足で携帯業界を取材しつづけている山根博士が、栄枯盛衰を解説。アスキーの連載「山根博士の海外モバイル通信」が世界のモバイルの「いま」と「未来」に関するものならば、ASCII倶楽部の「スマホメーカー栄枯盛衰~山根博士の携帯大辞典」は、モバイルの「過去」を知るための新連載!
「アップルも最初は試行錯誤していた」「ノキアはなぜ、モバイルの王者の座を降りたのか」──熟練のガジェットマニアならなつかしく、若いモバイラーなら逆に新鮮。「スマホ」を語る上で絶対に必要な業界の歴史を山根博士と振り返りましょう!
この連載の記事
-
第731回
スマホ
スマホ世界シェア4位をうかがう「Infinix」から激薄モデルや折りたたみが続々 -
第730回
スマホ
AQUOS R9 proのカメラ周りをドレスアップ! フィルター装着で広がるスマホの楽しみ方 -
第729回
スマホ
激薄折りたたみ「Galaxy Z Fold Special Edition」のケース3種類を試す -
第728回
スマホ
Xiaomi 14Tにフィルター装着できるMagSafeケース、香港の予約特典に登場 -
第727回
スマホ
Galaxyの2025年モデルがいよいよ登場「Galaxy A16 5G」が販売開始 -
第726回
スマホ
1700万円のシャオミ製スーパースポーツEV「SU7 Ultra」を広州モーターショーで見た -
第725回
スマホ
この冬一番の注目スマホ、超薄型折りたたみの「心系天下W25」がサムスンから登場 -
第724回
スマホ
駅名ごとGalaxy! クアラルンプールの「Samsung Galaxy駅」がスゴすぎた! -
第723回
スマホ
レトロデザインが可愛すぎる!? Nokiaケータイ風リュックの良さを知ってほしい! -
第722回
スマホ
iPhone 16発売直後の深セン、中国でも中古買い取りショップと転売が盛況 -
第721回
スマホ
日本と変わらぬ熱気がスゴイ! 中国・深セン版「ポタフェス」に行った - この連載の一覧へ