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西田宗千佳の「AIトレンドトラッキング」 第2回

開発はオープンに、活用はローカルに

生成AI、無償提供の「Llama 2」「SDXL」が話題(西田宗千佳)

2023年08月03日 07時00分更新

文● 西田宗千佳

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さまざまなトピックに関した質問をボットが素早く回答 Quoraが高速AIチャット「Poe(ポー)」日本語サービス開始(7月24日)

 生成AIを使ったビジネスとして「チャットボット」がまず有用なのは間違いない。一方でチャットボットには色々な性質のものがあり、質を上げるためには自社の目的にあったチューニングが必須だ。目的によっては賢さよりもスピードが重要になる。利用者はLLMの種類を見てチャットボットを使っているわけではないので、どれをどう使うかも大切だ。

 すでにチャットボット構築サービスは多数あり、ある意味レッドオーシャン的な印象すらあるのだが、複数のサービスを試して導入できることは重要だろう。

OpenAI、AI判定ツールそっと取り下げ 精度不足で(7月27日)

 「生成AIが作ったモノかどうかを判定したい」というニーズはあるのだが、実際のところかなり難しそうだ。OpenAIのツールは「いくつかの企業が出しているものより有望」という話もあったのだが、それでも精度は不足していたようだ。

 技術的に生成物を見分けるよりも、「その内容に責任を持てるのか」「本人が書いた内容として不自然な部分はないか」というところで判断した方が良いように思える。

 文章では難しい部分もあるが、画像では「電子透かし」系の技術を使った「来歴記録」の方が有用だろう。

ZHD、OpenAIと全てのAPI契約。LINEとヤフーの約2万人に導入(7月27日)

 日本でも多くの団体や企業が、OpenAIやマイクロソフトとの契約を結びつつある。すでにマイクロソフト系のサービスを導入している企業の場合には判断がしやすい、という部分は大きいだろう。

 Azure OpenAIは政府の定めるセキュリティ評価制度「ISMAP」認定にも登録予定(8月末認証完了とされている)で、政府調達も楽になる。

 当然、AWSやグーグルも同様に「日本で導入しやすい環境」を整えていくだろうが、スタートダッシュでOpenAI+マイクロソフトが大きなリードを得たのは間違いない。

最新の画像生成AI「Stable Diffusion XL(SDXL)1.0」ついに公開 簡単に試す方法あります(7月27日)

 公開が遅れていたSDXL(Stable Diffusion XL)がようやくスタート。

 特に画像生成については、自由な制作のためにローカルで動かすニーズも大きい。SDXLについてはゲーム向けに作られたメモリー搭載量が少なめ(8GB程度)のグラフィックボードでも、一定品質の画像を生成できるのが特徴とされている。

 クラウドで動作するものとローカルで動作するものはどんどんニーズや使われ方が乖離していき、それぞれ別の存在になると予想している。画像生成AIは特にその傾向が強いのではないか、と筆者は考えている。

Adobe Photoshop、画像生成AIついに日本語対応「ここに猫を足して」可能に(7月28日)

 同じ画像生成AIでも、クラウド側の典型例がこちら。まだベータ版なので商用利用はできないが、日本語にも対応した。

 「Photoshop」+生成AI「Firefly」の組み合わせは、ユーザーインターフェースの良さで差別化に成功している。「作業の中で生成AIを使う」ならこのパターンが有利であり、ゼロから画像を生成するサービスとは完全に別物として使われていくだろう。そしておそらく、単純な利用量ではこちらのタイプが増えていく。

「ChatGPT」Android版が配信開始 日本でも利用可能(7月28日)

 iOS版に続いてAndroid版も。スマホ上での利用はそこまで増えていないようだが、それは「生成AIを実際に使う人」がマスではなく、やはり相当、先端層に偏っているからだろう。カジュアルな利用には、プロンプトをゼロから書くのではなく、ユーザーインターフェース的な工夫があるものが求められそうだ。

 とはいえ、すでに「道具としてChatGPTを使う」のが当たり前になってしまった人には、スマホからも使えるのはありがたい話であるのは間違いない。

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