ソフトとハードのロボットで大きく変わる物流現場

ロジザート、ユーザックシステム、ラピュタロボティクス、物流現場の自動化を語る

文●大谷イビサ 編集●ASCII

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 物流の自動化ソリューションを展開している3社は、物流現場の自動化について語るトークセッションを開催した。登壇したのは、クラウド型WMS(倉庫管理システム)を手がけるロジザート、RPA製品を提供するユーザックシステム、庫内作業の自動化に向けたロボットを手がけるラピュタロボティクスの3社になる。

ロジザートの亀田尚克氏

倉庫管理を効率化するWMS RPAとロボットでさらなる自動化へ

 モデレーターをつとめたロジザートの亀田尚克氏は、倉庫管理の課題を解決するクラウドWMS「ロジザートZERO」について説明した。WMSとはWarehouse Management Systemの略で、商品の入荷、保管、出荷までを一元的に管理する倉庫管理システムになる。

 WMSがないと検品は目視とExcelを使った在庫管理になり、他の業務・自動化ツールとの連携も不可能だ。WMSを利用すると、基幹システムや業務効率化、ロボットなどとの連携が可能になる。むしろ単体で利用されることは少なく、基幹システムや販売や受注システムとつなぐのが一般的。「昔はファイルやAPIで連携することが多かったが、昨今はRPAを活用することがすごく増えています」と亀田氏は指摘する。

WMSとRPAやロボットと連携させ、自動化を推進

 ユーザックシステムの渡辺氏は、物流事務におけるRPAの活用例を披露する。たとえばFAXでの受注管理の場合、当然紙なのでWMSや基幹システムを介した出荷指示や納品書の発行はすべて人手による転記作業が発生する。「朝9時から出荷を始めるために、夜中に来たFAXを朝早くに来て転記しなければならない。この時代に、なかなか人手を割くのは難しい」と渡辺氏は指摘する。

 その点、RPAを使えば、出荷前の事務処理も自動化できる。メールに添付されたExcelファイルや、取引先のWebサイトに登録されている発注書をRPAが取得し、データをWMSや基幹システムに自動登録してくれる。亀田氏は、「私たちがWMSをご提案しても、そもそもお客さまのところに出荷データがない。WMSにいちいち入力するなんて無理と昔はよく言われました(笑)」と振り返ったが、RPAを使えば自動的に行なってくれる。

 事後処理の自動化も可能。基幹システムやWMSから送り状を発行したり、納品書と出荷をひも付けたり、取引先に出荷を通知するのもRPAを利用できる。「納期の問い合わせや確認で忙殺されてしまうのは、お客さまにとっても、取引先にとってもマイナスでしかない。WMSにデータがあるなら、出荷を通知してあげればいい」と渡辺氏は語る。通知業務のために人手をかけずに済み、大量の取引先でも納期通知の漏れがなくなる。

RPAの活用事例

RPA導入は運用をイメージできるかがカギ

 RPAは人が教えた(設定した)とおりに、PC上でマウスとキーボードを操作してくれるロボット。教え込む手間はあるが、定型作業の自動化に向いているという。一方で課題としては、具体的には対象業務の選定、RPAエンジニアの不足、効果測定・ロボットのメンテナンスなどが挙げられる。これらは導入後の運用をイメージできていないことに起因するという。

RPA導入後の課題

 対象業務の選定に関しては、RPAに向かない業務を選んでしまうこと。「できないことはないけど、教えるのが難しい業務が存在します」と渡辺氏は語る。ユーザックシステムのRPAはノーコードツールなので、プログラミングは不要だが、業務マニュアルを作るようなイメージで動作の条件を設定する必要がある。当然ながら、取引先ごとに、スケジュールごとに複雑なルールが設けられていたら、RPAに覚え込ませるのも難しい。

 業務を理解していない情シスがRPAに覚え込ませるのに苦労すると、情シスから現場に丸投げされてしまう。しかし、現場は逆に操作に慣れないため、設定に苦労してしまう。もちろん、RPAを専門に扱うエンジニアを雇うのは難しいが、技術に明るい人である必要はないという。「RPAは覚え込ませたことを、そのまま動作する。だから、人に教え込ませるのが苦にならない人が向いている」と渡辺氏はアドバイスする。

 ロボットのメンテナンスも重要だ。日常業務は、たとえばネットワークが不調でサイトにアクセスできなかったり、あるいは取引先のWebサイトの構成が変わることもある。RPAの運用には、こうしたトラブルや変更にも柔軟に対応できる体制が必要になるし、長期的な効果測定も必要になる。導入時のみではなく、継続的なサポートという点でも、ユーザックシステムはユーザーから高い評価を受けているという。

人とロボットの協働でピッキングを効率化

 後半は庫内作業の自動化を実現するラピュタロボティクスとのセッションになる。物流ロボットソリューションを手がけるラピュタロボティクスは、チューリッヒ工科大学に在籍していたスリランカ人の創業者が立ち上げたスタートアップ。本社は東京にあるが、20カ国170名の社員が在籍するグローバルな会社だ。

 ラピュタロボティクスの「ラピュタPA-AMR」は、人とロボットの協働を実現する物流用のロボット。商品をつかんで入れる作業は人間に任せ、ラピュタPA-AMRは運ぶことに特化している。既存の倉庫のレイアウトを変えることなく導入でき、導入現場では約2倍の生産性を実現しているという。

ピッキングアシストロボ ラピュタPR-AMR

動画で動作を披露

 プロダクトマネージャーである小堀貴之氏は、「倉庫の作業者の1人としてロボットを入れてもらえる。ピッキング作業者は手ぶらで移動でき、商品を指示通り入れればいいので、作業効率が上がる」とアピールする。全体最適を考慮して、ラピュタPA-AMRが自律的に移動するので、ピッキング作業者は最寄りのロボットで作業していけば、スピーディに作業を終えられるという。

 導入するのは3PL(Third Party Logistics)と呼ばれる物流事業者や大手メーカーなど。2024年問題の人手不足は課題に持っているが、大型な設備投資は難しいという企業がスモールスタートで導入しているという。また、WMSとの連携も進んでいる。「ピッキングロボットの場合は、番地情報を持っているWMSとの連携がむしろ前提となる。WMSは実行された結果を記録するところに重きを置いているが、ロボットはその実行をいかに効率化するかに重きが置かれている」と小堀氏は語る。

 導入の課題は投資対効果、運用、そして物流ならではの関係者の多さだ。亀田氏は、「とはいえ、投資対効果の考え方はずいぶん変わっている。今後、労働者が少なくなるという切迫した危機感を持つ企業が増えている」と指摘すると、小堀氏は、「当初は省力化・少人数化を意識していたけど、そもそも物流のインフラを維持するための中長期的な計画で検討してもらうことが増えた」と語る。

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