このページの本文へ

超Liイオン伝導体を新開発、次世代全固体電池を実現=東工大など

2023年07月14日 06時12分更新

文● MIT Technology Review Japan

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

東京工業大学、物質構造科学研究所、東京大学らの共同研究グループは、伝導率が世界最高の固体電解質の「超リチウム(Li)イオン伝導体」を開発し、電極面積あたりの容量が現行の1.8倍の厚膜正極を作製して優れた電池特性を実証した。さらに、開発した厚膜正極と次世代電池材料として注目されているリチウム金属負極を利用して、大容量・大電流特性を示す全固体電池を実現した。

東京工業大学、物質構造科学研究所、東京大学らの共同研究グループは、伝導率が世界最高の固体電解質の「超リチウム(Li)イオン伝導体」を開発し、電極面積あたりの容量が現行の1.8倍の厚膜正極を作製して優れた電池特性を実証した。さらに、開発した厚膜正極と次世代電池材料として注目されているリチウム金属負極を利用して、大容量・大電流特性を示す全固体電池を実現した。 研究チームは今回、従来のLiイオン伝導体の化学組成を高エントロピー化することで、伝導率を大幅に高めた新材料である超リチウム(Li)イオン伝導体を開発。この新材料を固体電解質に用いて、室温25℃で理論値の約90%のエネルギーが取り出せる厚み1ミリメートルの正極を作成し、電極面積あたりの容量を、これまでの全固体電池セルの最高値の1.8倍にした。 同チームが、この新材料の結晶構造を、大強度陽子加速器施設「J-PARC」の中性子回折によって解析したところ、不規則な元素配列があることが判明。同解析に基づいて計算モデルを作成し、Liイオン伝導機構を解析したところ、元素配列に依存してLiイオン伝導の障壁が半分に低下して平滑になり、イオンが伝導しやすくなることがわかった。 従来、全固体電池の固体電解質の伝導率が低いと、正極の厚みを増して容量を増やすことが困難であった。イオン伝導性の高い固体電解質を用いることで、これまでにない電池形態が達成できることを示した今回の成果は、電気自動車やスマートグリッドの成功の鍵を握る次世代の蓄電デバイスに新たな指針をもたらすことが期待される。研究論文は、2023年7月6日付けでに米国科学誌サイエンス(Science)に掲載された

(中條)

カテゴリートップへ

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ