フランス人社長・ベッカー氏と10周年の軌跡を振り返る
売り上げは100倍以上、思い出はプライスレス。JAPANNEXTの10年で変わったものと変わらないもの
提供: 株式会社JAPANNEXT

千葉県いすみ市に本社を構えるディスプレーメーカー、JAPANNEXT。近年は量販店のディスプレーコーナーやネットショッピングでも、その名を目にする機会は多いのではないでしょうか。同社は2024年の実績で166機種もの製品を市場に投入しているとのこと。つまり、2日に1機種くらいの頻度で新製品をリリースしていることになります。これは驚異的なペースです。
そんなJAPANNEXTは2025年9月、同社設立からはじめてのプレスカンファレンスを開催しました(関連記事:【期待しかない】JAPANNEXTが6Kディスプレーを予告 新デュアルディスプレーや初の充電器も一挙公開)。同社は今年で設立から10年(前身となる会社は2006年に起業)の歴史を経ており、このプレスカンファレンスはそんな節目を振り返る記念すべき会でした。
ASCII.jpではこのプレスカンファレンスの様子を前日準備から取材しており、(関連記事:前日準備から撤収まで密着取材!JAPANNEXTはじめてのプレスカンファレンスの舞台裏から感じたもの)同社の代表取締役社長であるベッカー・サムエル氏に、本カンファレンスの経緯についてお聞きしました。その際には、JAPANNEXT10年の歩みについて、かいつまんでお聞きすることができたのですが、こうも思ったのです。
「あれ?これ掘り返したらまだまだいろんなエピソードを聞けそうだぞ?」と。
そこで、今回はJAPANNEXTの10年を振り返るというテーマで、再びベッカー氏にインタビュー。創業時の思い出や印象深かった製品・出来事などをお聞きしながら、同社が日本でも有数のディスプレーメーカーに成長するまでの軌跡を深堀りしていきたいと思います。
10年経った今、創業時の様子を振り返る
インタビューに指定された待ち合わせ場所は、東京某所の隠れ家的なバー。「マスター、いつものを」とベッカー氏は手短に注文を済ませ、胸ポケットからシガーを……というのは冗談で、こちらは最近できた同社のオフィスの1つ。なんと室内にバーカウンターがあるんですね。これだけでもJAPANNEXTの自由な社風がうかがえる気がします。
ご存じない方に一応説明しておくと、ベッカー氏はフランス出身で日本の大学に留学後、そのまま日本で起業しました。当初はガジェットの輸入・輸出業を営んでおり、10年前にディスプレーに注力して事業展開するために、JAPANNEXTを立ち上げたと言います。(関連記事:17歳で日本縦断ヒッチハイク!ディスプレー市場の新星、JAPANNEXTのフランス人社長が色々スゴイ)
一体そこからJAPANNEXTはどのような道を歩んできたのか、早速ベッカー氏にお聞きしていきましょう。
――本日はよろしくお願いします。今回はJAPANNEXT10周年ということで、まずは創業時の経緯をお聞かせください。
ベッカー氏:JAPANNEXTを立ち上げる前は、国内で家電やゲーム機、PCなどの輸入・輸出業を10年ほど営んでいて、さまざまな製品を扱ううちに教わることも多かったです。ただ、それだけたくさんの商品を扱っていても、自分で製品開発を行わないでただ買ったものを売るだけということに思うところがあり、自分たちで自信を持てるものを作って、それを販売したいと思うようになりまして。それでJAPANNEXTを立ち上げました。
――ディスプレー事業を創業するにあたって、当時のディスプレー業界はどのような状況だったのでしょうか?
ベッカー氏:会社を立ち上げた2015年ごろのディスプレー業界は、アスペクト比4:3の製品がほぼなくなってフルHD(1920×1080ドット)が主流になり、20型から22型、23型と画面サイズが大きくなっていった時期でした。ただ、当時だと4K(3840×2160ドット)のディスプレーはまだ少なくて、WQHD(2560×1440ドット)でもハイスペック扱いで少し高価な時代です。私の環境だと、それくらいの高解像度のほうが使いやすかったのですが、なかなか手に入りにくい状況でした。
――立ち上げ当初は、どのような指針で製品開発を行っていたのですか?
ベッカー氏:当時ディスプレーに関しては、個人向けの製品を展開している日本メーカーが少なくなっていて、残っているのはプロクリエイター向けの高価な製品を扱っているところくらいでした。一方で、安価な製品は海外メーカーのものがたくさんあったので、うちとしてはその間を取ることにしました。ハイスペックだけど日本の大手メーカーほどではない、かつ海外メーカーとの価格競争にも手を出さないという戦略に定めて、当時はスタートしましたね。
――ちなみに、そのころの拠点はどちらだったのですか?
ベッカー氏:立ち上げた当初は自宅を拠点にしていましたね。千葉県の一宮町で3階建ての家を借りて、1階がオフィス、2階が倉庫、3階が住まいという形でした。それから駅の近くに倉庫兼オフィスを借りたのですけど、製品を置くとすぐいっぱいになってしまって……。それで同じ一宮町で、閉業したスーパーマーケットの跡地をオフィスにしたんです。1年で2回くらい移転しましたね。
――当初はかなり頻繁に移転していたのですね。
ベッカー氏:最初の拠点を移した理由は、海の近くだったので津波の心配があったというのもあります。当時は2015年でしたが、2011年の東日本大震災のイメージはまだ鮮明に残っていました。自分たちは避難できても商品は持ち出せないので、高価なものを置いておくのは心配だったんです。
――3つ目の元・スーパーマーケットのオフィスは、どのくらいいらっしゃったのでしょうか?
ベッカー氏:そこは2022年くらいまでいたので5、6年くらいかな。自宅の近くでしたし、東京に比べれば家賃も安くてスペースも700平米くらいあったので、結構長かったですね。それでもすぐに狭くなってしまって、倉庫は外部の管理サービスに委託するようになりましたが。
――やはり、事業の成長にともなって倉庫のスペースは問題になってくるのですね。
ベッカー氏:倉庫もですが、修理の作業スペースやパーツの管理スペースも必要になっていったことも大きかったですね。倉庫を外部に委託しても、そうしたスペースだけでパンパンになってしまいました。あとは物流の問題もあって、一宮町だとそもそも大量の製品を輸送するインフラがあまりなくて、一宮町の北にある茂原市の業者さんが、わざわざうちのためだけにトラックを出してくれていました。ただ、65型などの大きなディスプレーを積むとそれだけで荷台がいっぱいになってしまって……。1日で2台来てもらうなんてこともありましたね。
――なるほど、それで在庫の管理は外部に移したのですね。
ベッカー氏:それでも、事業を拡大するにつれてオフィスのスペースは足りなくなるので、もっと大きなオフィスを求めていった結果、3年前に廃校を買い取って、現在の本社があるという形です。(関連記事:山を開墾する案も!? ディスプレー会社JAPANNEXTは、なぜ田舎の廃校を本社にしたのか)
――いすみ市の現在の本社は、倉庫も兼ねているのでしょうか?
ベッカー氏:いえ、本社には新品の在庫は置いていなくて、事務所のほかに修理スペースや交換品などが置いてあります。それでも体育館を丸ごと使うくらいの規模ですが(笑)。
――ちなみに、創業当初は何人程度の規模だったのでしょうか。
ベッカー氏:企画段階は社外のパートナーなど少しいましたが、社員でいうと私1人で、2016年の販売開始直前で2人、開業してから1年ぐらい経った2017年時点で5、6人の規模でした。今だとパートの方なども入れて、国内で50人くらい、海外には10人くらいのスタッフがいますね。最近になって女性スタッフが10人まで増えたことで、製品開発にも新しい視点が入れられるようになりました。
――初期から見て10倍以上の規模になっているのですね。
ベッカー氏:そうですね。売り上げでみれば、1年目で1億円近くになっていましたが、それから現在は100倍以上になっているので、事業規模的にはスタッフ数以上にかなり大きく成長していると思います。
――当初、製品開発の技術的な監修はベッカーさんが担っていたのですか?
ベッカー氏:技術スタッフは早い段階で入れて、協力会社さんともいっしょに開発していましたが、私が主導して行っていましたね。
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