6月11日から25日まで、ライアットゲームズのタクティカルFPS「VALORANT」の世界大会「VCT 2023 Masters Tokyo」が開催されました。賞金総額は100万ドル(約1.4億円)で、世界各国から12チームが出場しました。
日本のeスポーツはすごいことになっている
実感が確信に変わった「VCT 2023 Masters Tokyo」
昨年末に実施された「Riot Games One」(関連記事)でサプライズ発表された本大会。発表の際には、MC・実況解説を務めたOooDaさんや岸大河さんもうれし涙を流し、私もグッときた覚えがあります。
eスポーツを詳しくご存知ない方だと、これがどういったことなのかというのは、イマイチ実感できないかもしれません。格闘ゲームといったほかのジャンルのゲームでは、日本人が世界一になったタイトルもいくつかあります。しかし、FPSというジャンルにおいて、日本は長い間ほかの強豪国、チームとの差があり、なかなか成績を残すことができませんでした。
しかし、昨年に開催された「VCT 2022 Stage 1 Masters」にて、日本のチーム「ZETA DIVISION」が世界3位という好成績を残し、世界でも日本のFPSが通用するということをしらしめてくれました。
そういったZETA DIVISIONを始めとした日本チームの活躍により、日本のVALORANTシーンは大きく盛り上がっていきました。それこそ昨年のさいたまスーパーアリーナで開催された「2022 VALORANT Champions Tour Challengers Japan Stage2:Playoff Finals」や、横浜アリーナで実施された「Riot Games One」など、大規模な会場で大会やイベントが開催されたというのも、日本のeスポーツの盛り上がりを実感できる理由の1つでした。
日本のeスポーツシーンは、本当にすごいことになっているかもしれない。日本のeスポーツ、VALORANTのeスポーツシーンを応援している人たちのなかで、ここ1~2年でじわじわと実感してきていたことが、確信に変わったのが、VCT 2023 Masters Tokyoの開催決定だったというわけです。
日本チームの不在をものともせず
会場には多くのファンが集結
VCT 2023 Masters Tokyoは、日本で世界大会を観ることができる! ということで、発表時には大きな話題になりました。しかし、大会前には1つ気がかりなことがありました。それは、日本チームが出場できなかったということでした。
というのも、VCT 2023 Masters Tokyoに出場できるチームは、各リージョンのトップ3+VCT LOCK//IN S ão Paulo優勝チームの所属エリアは+1という狭き門でした。日本チームは、「ZETA DIVISION」と「DetonatioN FocusMe」が、VCT PACIFICに参戦していましたが、残念ながらトップ3には入ることができませんでした。
日本チームが出ない世界大会、果たしてみんな観に来るのだろうか……勝手にそう思っていたのですが、大会が始まってみれば、そんなことはただの杞憂だったということを、実感しました。
予選と決勝トーナメントの途中までは「TIPSTAR DOME CHIBA」で、最後の2日間となるLower Final、Grand Finaは幕張メッセで開催されました。私は残念ながら仕事でどちらも1日ずつしか行けませんでしたが、生放送を観戦していると、そこには多くの観客が足を運んでおり、出場チームを応援していました。結果として、VCT 2023 Masters Tokyo(12日間)の総来場者数は3万7000人超のファンが会場に足を運んだそうです。
中には、選手やチームのプレートを自作してきている人や、タブレットにユニークなイラストや応援メッセージを表示させている人などもいて、日本以外のチームも多くのファンが追いかけているんだなということを、改めてしることができました。
加えて、新たな推しチームを発掘した人も多かったのではないでしょうか。個人的に推しになったのは、EDward GamingのZmjjKK選手。キャラコン、フリック、エイム、どれを挙げても本当に同じ人間? と思えるほどのスーパープレイを連発し、とくにオペレーターを使ったキルは、多くの人が度肝を抜かれたのではないかと思っています。
また、大会に挑む熱のこもった姿勢にも、感化された気がします。私のように、本大会を観戦して、推しのチームやファンができたという人は、結構多いのではないかと思っています。
今まで観戦してきた世界大会の会場が、日本にある!
もう1つ感動したのは、大会会場の雰囲気です。TIPSTAR DOME CHIBAでは、競輪のコースがある会場を上手く利用し、めちゃくちゃカッコいい会場が設営されていました。あ、これ世界大会で見たことあるやつだ! とすごくテンションが上がりました。
加えて、TIPSTAR DOME CHIBAまでのモノレールには、VCT 2023 Masters Tokyoのラッピングが施された便が用意されており、会場に向かう道中でもワクワクさせてくれる要素が盛り込まれていることにも、いいなと感じました。
そして幕張メッセでの2日間の会場も、ド派手な花道から続く中心のステージに、ほぼ360度の観客席から熱視線がおくられる、有終の美を飾るにふさわしい雰囲気づくりとなっていました。
今回とくによかったなと感じたのが、観客の目線より高い位置にステージがあり、その周りに柵が整備されていたものの、柵の外側にはスペースがあり、すごく近くで選手をみることができました。試合の前後には選手が手を振り返すこともあり、いい交流だなと思いながら眺めていました。加えて、日本のファンの素晴らしいところは、試合中に近づくことはせず、しっかりと自分の席で観戦していたということです。もちろん警備の方はいましたが、試合中に近づきすぎて注意されているファンの人は、私は見かけませんでした。
加えて、出場退場はもちろんのこと、両チームのスーパープレイが出れば、大きな歓声で称賛したり、勝敗が決まれば会場がゆれるくらいの歓声があがったりと、会場が一体になるファンの方々の応援は、感動するレベルです。これは、あまりeスポーツシーンに詳しくなくても、この一員になるというだけで、行く価値があるレベルだと感じます。
Fnaticが世界大会2連覇!
VCT 2023 Masters Tokyoは、リアルタイムやアーカイブで試合をチェックしていましたが、どのチームもスゴイプレイを繰り出して熱戦を繰り広げていました。その中で、ちょっと飛びぬけて強いなと感じていたのが、Fnaticでした。
決勝リーグからFnaticは盤石に勝ち上がって行っていた印象で、決勝まで進んでいきました。そして、決勝はFnatic対Evil Geniusesというマッチアップに。結果は、BO5で3連勝し、ストレートでFnaticの優勝となりました。
FnaticはLOCK//INに続いて世界大会2大会連続の優勝となります。Fnaticは、スパイギアさんが所属していたり、別タイトルでは日本のチームがあったりと、日本とも親交が深く人気が高いeスポーツチームとなっています。今後、この快進撃が続くのか、はたまたこの快進撃を止めるチームが現れるのか、今後も楽しみですし、今回Fnaticのファンになったという人は、今後の動向もぜひチェックしてほしいです。
日本よ、日本のeスポーツの熱量はスゴイぞ
今回、実際に会場に取材に行って、やはり一番感じたのは日本のファンの熱量の高さです。しかし、私の周りでいうとあまりeスポーツに興味がない人は、VALORANTをプレイしていたとしても、「そういえばやってたんだ」くらいの温度感です。
日本のeスポーツの熱量の高さは、まだまだ現場にいる人達以外には伝わっていない印象です。いつかは、野球やサッカーの世界大会のように、普段観ていない人たちも、会場やパブリックビューイング、バーといったさまざまな場所で観戦するといったことが起きてほしいなと思えるほどに、会場の盛り上がりは素晴らしかったです。
今回の大会を通じて感じたのは、世界というよりは日本の方たちに、この盛り上がりをもっと伝えたいなと感じました。日本のeスポーツの熱はスゴイぞ! というのが、多くの人に伝わってほしいです。
ぜひ今回の盛り上がりを感じたライアットゲームズの方が、再び日本での世界大会の実施を検討してくれることを願っています。またあの感動と興奮を、日本で味わいたいです。
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