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OpenShift、RHEL、Ansible、エッジなど「Red Hat Summit 2023」で発表された新製品や新機能

レッドハット、MLOps基盤「OpenShift AI」など最新発表をまとめて紹介

2023年06月08日 11時35分更新

文● 大河原克行 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 レッドハットは2023年6月6日、米国ボストンで5月下旬に開催した年次イベント「Red Hat Summit 2023」での発表内容について、日本のメディア向け説明会を開催した。「Red Hat OpenShift」「Red Hat Enterprise Linux」「Red Hat Ansible」「Red Hat Device Edge」などの製品について、それぞれの担当者が発表された新たな製品や機能、サービスなどを説明した。

OpenShift:MLOpsを実現する「Red Hat OpenShift AI」など発表

 OpenShift関連では「AI」「開発効率化」「セキュリティ」の3つのカテゴリーで、5つの新発表が行われた。

「Red Hat OpenShift」関連の新発表

 なかでも注目されたのが「Red Hat OpenShift AI」である。

 OpenShift AIは、コンテナ環境でのAI/ML(機械学習)活用を推進するプロダクトファミリーであり、今後、OpenShift上でAI/MLワークローやAIアプリケーションの開発/実行環境を拡充する方針が示された。

 このうち一般提供開始(GA)となったのが「Red Hat OpenShift Data Science」だ。標準化されたAI/MLモデルの学習、推論環境をOpenShift上で展開し、モデルの学習から提供まで、AIアプリケーションのライフサイクル全体をサポートするMLOpsを実現。OSSの「Ray」を活用して、大規模モデルの分散学習やファインチューニング(転移学習)を実施する基盤を提供する。

「Red Hat OpenShift AI」および「Red Hat OpenShift Data Science」の概要

 なお、先ごろIBMが発表したビジネス向け生成AI「watsonx」の大規模モデルは、OpenShift AIを活用して開発されているという。

 開発効率化の観点では、開発チームのコラボレーションを加速する開発者ポータル(IDP:Internal Developer Portal)として「Red Hat Developer Hub」が発表されている。これはOSSの「Backstage」をベースとした開発者ポータルであり、OpenShift上で開発者向け製品を統合し、生産性を加速。Red Hatからもプラグインを提供し、プラットフォームエンジニアリングを推進することができる。2023年7月から、プレビュー版を提供する。

「Red Hat Developer Hub」の概要

 「Red Hat Trusted Software Supply Chain」(プレビュー版)は、Red Hatが培ってきたDevSecOpsのベストプラクティスを適用することで、安全なソフトウェアサプライチェーンを実現するクラウドサービス。

 セキュリティカテゴリーでは、コンテナクラスターのセキュリティを保護するマネージドサービス「Red Hat Advanced Cluster Security Cloud Service」が発表された。これまでもOpenShiftにインストールすれば利用可能だったが、これをクラウドサービスとして提供することで、パブリッククラウドが提供するKubernetesサービスでも利用可能にした。CPU数に応じて従量課金で提供する。

 「Red Hat Service Interconnect」は、ハイブリッドクラウド環境においてパブリッククラウド/データセンター/エッジ間のセキュアかつ柔軟な通信を実現する。OSSの「Skupper」をベースに開発されており、複雑なネットワーク設定を必要としないため、アプリケーション開発者自身が簡単にネットワーク接続を構成できるという。

「Red Hat Service Interconnect」の概要

RHEL:アップデート4年間提供オプション、「CentOS 7」移行支援も

 Red Hat Enterprise Linux(RHEL)は、施策面を中心とした発表となった。

 まず、新たなサポートライフサイクルである「Enhances Extended Update Service(EEUS)」が発表された。脆弱性/バグ修正アップデートの提供期間を、これまで(EUS:Extended Update Service)のマイナーリリース後2年間から、4年間に拡張するもの。EEUSの提供により、余裕を持ったアップデート計画が可能になるとした。

RHEL「Enhances Extended Update Service(EEUS)」の概要

 「Red Hat Enterprise Linux for Third Party Migration」は、2024年6月30日にEOLを迎える「CentOS 7」ユーザー向けにRHELへの移行を支援するもので、2023年第3四半期から提供を開始する。

 そのほかにも、管理機能を提供するSaaSの「Red Hat Hybrid Cloud Console」から、RHELをはじめとするすべてのRed Hat製品が統合的に管理できるようになっている。

アプリ移行/モダナイズ:「Red Hat Application Foundations」など紹介

 アプリケーションサービス関連では、ハイブリッドクラウドにおけるシステム連携の開発アプローチが紹介された。API基盤、プロトコルとデータの変換、データ連携、イベントストリーミングなどの機能を提供する「Red Hat Application Foundations」により、インテグレーションのさまざまなユースケースに対応する。

 また「Apache Camel」の開発ツール(CLIツールの「Camel JBang」とローコードツールの「Camel Karavan」)活用により、インテグレーション機能をより簡単に実装することができる。

 アプリケーションモダナイゼーションについては、システム利用状況やビジネスインパクトに基づいて6つの「R」(6R:Retire、Retain、Reshot、Replatform、Refactor、Repurcase)から適切な方法を選ぶべきだと説明。このうちRehostやReplatformでは「Microsoft Azure」と「JBoss EAP」による動作環境を、またRefactorでは軽量/高速で生産性が高い次世代Javaフレームワーク「Quarkus」を提案した。

 さらに、既存アプリの移行やクラウドネイティブ化においては「Migration Toolkit for Application」を紹介。加えて、モダナイズに必要なスキルを習得できるハンズオン「Modern Application Development(MAD) Roadshow」を、日本でも2023年6月から展開することを明らかにしている。

アプリのモダナイズ戦略として6つのR(6R)を紹介。リファクタリング(Refactor)では次世代Javaフレームワーク「Quarkus」を推奨した

Ansible:生成AIによるIaC支援機能、イベントドリブン自動実行など

 IT基盤の構築や運用などを自動化する「Red Hat Ansible Automation Platform」については、データセンター/クラウド/エッジのすべてを統合した自動化環境が実現することを強調。今回のRed Hat Summit 2023においては「Ansible Lightspeed」と「Event-Driven Ansible」の2つが発表の肝になったと語った。

 Ansible Lightspeed(今年後半にテクノロジープレビュー提供予定)は、生成AIを用いて開発者を支援する機能だ。開発者が自然言語で「実現したいこと」を指示するだけで、Ansibleのコードが自動生成される。初心者ユーザーのタスク自動化を容易にする一方で、経験豊富なユーザーにとってもコード作成の負担を軽減することができ、自動化の視野を広げることができると説明した。

「Ansible Lightspeed」の概要

 Event-Driven Ansibleは、他のシステムが発信するイベントに基づいて、Ansibleの自動化シナリオを実行する機能。人間が実行を指示することなく、自律的な自動化環境を構築できる。たとえば監視システムと連携させてシステム運用の自律化につなげたり、大量デバイスからのメッセージに応じた自動処理などを実現したりできるという。こちらはRed Hat Ansible Automation Platform 2.4(近日リリース予定)から利用できる。

「Event-Driven Ansible」の概要と利用例

エッジ:シーメンスのIT/OT事例、ABBの産業向けSaaS連携など紹介

 最後はエッジソリューション関連の新発表が紹介された。ここでは導入事例、パートナーシップ発表が中心だった。

 独シーメンスでは、同社のアンベルク工場においてOpenShiftを用いた注文管理システムのモダナイゼーションに取り組み、タイムトゥマーケットや柔軟性向上、効率化向上を実現した。OpenShiftを導入し、コンテナ化したマイクロサービスとモジュールを実行。さらに、ITとOTの融合のためにAPIゲートウェイやデータストリーミングの技術を活用し、PLCなどの製造現場システムと、PLMやERPなどのエンタープライズシステムとの連携を可能にしたという。

 またABBの産業向けSaaS「Ability Edgenius」とのパートナーシップにおいて、Red Hat Device Edgeがエッジデバイスの課題解決に活用されていることを紹介。ミリ秒単位で生成されるオートメーションシステムのデータと、EPR(Extended Producer Responsibility)のデータを組み合わせることで、工場内の資産とプロセスを最適化することができるという。黒海の洋上風力発電所を例に挙げ、Red Hat Device Edgeの運用監視の最適化に貢献していることを示した。

 Red Hat Device Edgeは、2023年5月からテクノロジープレビュー版を提供している。RHEL 9.2をベースにしたRHEL for Edgeと、軽量版OpenShiftである「MicroShift」をパッケージングして、エンタープライズをサポート。一般提供開始は2023年9月に予定している。

「Red Hat Device Edge」の概要

 エッジソリューション戦略についても説明された。レッドハットでは、エッジへのワークロード展開の迅速化とエッジ管理の効率化を両立させるために、エッジとクラウドを連携したハイブリッドクラウドアーキテクチャーによる共通プラットフォームを提案。拡張性、相互運用性、一貫性を実現するために、OpenShiftを中心にしたコンテナプラットフォームを使用し、エッジとクラウドのアプリケーション運用環境を標準化する。さらに、エッジとクラウドのデータ連携や、クラウドからエッジを一元管理するためのソリューションも組み合わせて実現するという。

 また、OpenShiftをエッジ環境に導入する際には、CPUやメモリサイズ、トポロジーに応じて、複数の選択肢を提供しており、ネットワークの接続性やリソース制約の大きい環境においても展開が可能になっていることを強調した。

OpenShiftはエッジの規模に合わせてさまざまな展開パターンを用意している

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