横浜中華街流行通信~地元発のディープな街歩き~ 第16回

横浜中華街のDX化!?~ビッグデータとカンパイの相関係数について~

文●石河陽一郎(横浜中華街発展会協同組合副理事長)

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 今日はちょっとデータの話なんかも交えながら、横浜中華街のDX化についてについてお話ししたいと思います。(エッヘン!!)

 データって僕、いまだに苦手なんですよねー。

 DXって本気で「デラックス」の事だと思ってましたからね。(笑)

 小学校の頃、苦手な算数を克服するため、公文に通ったものの、教室があったお寺は近所の子供達の溜まり場にもなっていたので、勉強よりも友人たちとの遊びがメインで通っていました。お寺がいつしか近所でそれぞれの子供達が採ってきたカブト虫やクワガタの試合会場になっていて、思い出すと今ではその記憶しかありません。

 月謝を払ってくれたお父さんお母さん、ごめんなさい。

 そんな僕がまさかデータを扱うことになるとは思ってもいませんでした。

 元々アナログ人間な僕が簡単にお話しさせいただきますので、どうぞお付き合いください。

 結論から先に言うと、データは単にデータであって、大切なのはやっぱり生身の人間だという事です。

 DX化は目的じゃなくてあくまで手段で、その目的は街にくる人たちが幸せになって、街で働く方たちが幸せになる事なんだと思います。

 さてさて、本題です。

 例えば以下は今年の春節の時期の横浜中華街の人流を表したグラフです。

 過去5年のそれぞれの春節時期を重ね合わせると以下のようなグラフになります。

 春節って旧暦で開催されるので、毎年時期がずれます。

 旧暦は太陽暦ではなくて太陰暦ですから、月の運行によって暦が決まります。毎年一番最初の「新月」がその年の春節(元旦)となります。お月様が満月になるまでを盛大にお祝いする事でその年が良い年でありますようにと願いを込めるわけです。グラフを見てわかると思いますが、やっぱりコロナの影響は大きかったです。(涙)

 ようやくここまで戻ってきたので、このグラフみると感慨深いです。

 細かく見るとコロナ禍前の2019年の春節に比較して、2020年には61%、今年2023年の春節はようやく人流が回復してきているものの、コロナ禍前と比較して依然84,3%の回復にとどまっています。昨年対比で116%、コロナ禍前の2019年度対比で90%でした。時間帯別に見るとピークの12時においては昨年対比121%、2019年度対比で96%とほぼコロナ禍前に回復してきています。12時で見ますと、中華街大通りにおいては昨年対比で132%、2019年度対比で115%となっていて、大通りは過去に例がないほど人が集中しています。

 以下過去5年の時間帯別春節時期の人流です。

 やっぱり、日中は戻ってきていますよねー。

 夜の戻りがまだ弱いですが、この時期は全国的にも同じだったと思います。

 春節祭のランタンオブジェは夜綺麗ですから、ランタンオブジェを目的で来る人が増えて、中華街だけでなく、市内の他の街や施設で夜の食事を楽しんでくれる人が増えたらいいなーって思っています。

 以下は男女比と年代別のグラフ。

 左のグラフが男女比のグラフ。少しだけ男性の方が多いですが、ほぼ半々ですね。

 右は年代別のグラフです。「中華街は若者が増えた」と言われる事が多いのですが、実際の人流データを見るとそのようなことはなく、コロナ禍により食べ歩き店舗が増えたことにより、目で見える風景の中に若い方達が多く見受けられる事による印象なんだと思います。でも実際には50代が一番多く、むしろ若い世代は少ないんですよね。

 確かに実際店に入ってみると、外で食べ歩きを楽しむ年代層よりももう少し高い年齢層の方が多いと思います。

 食べ歩きを楽しむ若い方が狭い道路に多く見受けられ、年配の方々は広いレストランの中で食事をする方が多いという事なんだと思います。横浜中華街全部の面積からすると、道路の面積よりもはるかにレストランの営業面積の方が多いわけですから、当然混雑した道を歩いているときに出くわす方たちの印象を感じるわけです。

 当たり前といえば当たり前の事なのかもしれませんね。でも初めてこのグラフを見たときは僕もちょっと意外でした。

 これは春節の時期のデータですが、ほかの時期でもだいたい同じですね。

 まあ、ざっとこんなことがわかるわけです。

 これらのデータはスマートフォンの位置情報のビッグデータをAIを使って解析をしています。

 もちろん、個人情報に関わる部分のデータはすべて見えなくしています。

 横浜中華街では人流データの分析にクロスロケーションズ株式会社のLAPというサービスを利用しています。

 LAPとは、Location AI Platformの略で、位置情報ビッグデータをAIで解析して、実世界の人流や商圏の分析および見える化ができるプラットフォームです。上記のグラフもそのシステムを使って作りました。

 そもそも「横浜春節祭」ってなんなの?って人が多いと思います。「春節」は知っていても「横浜春節祭」は耳馴染みがない方も多いですよね?

 それもそのはず、まだ2年目の取り組みなんです。

 簡単に説明すると、「冬の観光閑散期を繁忙期に」を目標に新たな観光資源を作りたい!!という想いでコロナ禍の2022年から横浜中華街が主催し、開催しているものです。

 人気観光地である横浜中華街の最大のお祭り「春節(毎年15日間実施)」を活用して、春節を華やかに彩る「ランタンオブジェ」を、横浜中華街から、観光スポットが複数存在する横浜臨海都市部(近隣観光地や駅、公共施設)に展開し(横浜中華街:2か所、横浜臨海都市部:13か所)、新たな観光コンテンツを創出し、デジタルスタンプラリーで繋ぎ、消費を生み出すというものです。

 横浜の観光課題って、観光客の周遊性が圧倒的に低いことと、夜の消費が弱いことです。

 しかも春節の時期に中華街はたくさんの方で賑わうんですが、周りの街や施設は閑散としています。クリスマス時期にイルミネーションはありますが、元々何もやらなくても繁忙期で効果がわかりにくい上に、同じような取り組みが全国にあるので、競争優位性を見出して行くことがかなり難しいと思います。

 ですから、イベントがほとんどなくて消費も弱くなる冬の閑散期の時期に、春節をフックに横浜エリアに賑わいを作ることは良いプランなんじゃないかと僕たちは思ってるんですよねー。(力説!!)

 横浜には中華街以外にも魅力ある街や施設がたくさんあります。せっかくですからこの時期に横浜中華街に集まったお客様が他のエリアや施設にも足を伸ばしてもらいたいなー、と思っているんです。

 横浜市民の方だったら、もしかしたらポスターやチラシを市内で見たことがある方もいるかもしれませんね。↓

 ランタンオブジェ ってこんな感じです。結構見たことがある方、多いんじゃないでしょうか?

 「横浜春節祭」は市内のあちこちにランタンオブジェ を置いて市民や観光客の方々に楽しでもらう取り組みです。

 これらのランタンオブジェ を見て回ってスタンプラリーを楽しんでもらい、スタンプを貯めると中華街で豪華景品が当たる「紅包くじ」という福引に参加できます。

 前出のシステムを使い、横浜中華街に来ていただいた方を確認するだけでなく、横浜中華街に来た方が、ほかのどこのランタンオブジェ 設置エリアに周遊しているのかについて、また逆にそれらのエリアから横浜中華街にどれくらい来てくれているのかについても調べてみました。

 デジタルスタンプラリーでもビッグデータを取っていますので、スタンプラリーの参加者の動向についても調べました。

 それにより以下のような結果がわかりました。

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・横浜中華街エリア人流総人数              :   702,898人  
・横浜中華街からランタンオブジェ 設置エリアへの送客総人数 : 1,455,371人
・ランタンオブジェ 設置エリアから横浜中華街への送客総人数 : 1,189,225人
・イベント期間中、開催エリアを周遊してくれた人の数    : 合計3,347,494人
・デジタルスタンプラリー参加者: 5,673人(15日間)
・デジタルスタンプラリー回遊率 : 36%(15日間)
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 余談ですが、テレビには11回、新聞では22回、雑誌やWEB系では100以上に取り上げていただきました。

 こちらの「横浜LOVEWalker」のYouTube番組でも特集をしてもらいました!(いつもありがとうございます!!)

 SNSでの投稿はたくさんありすぎて、もはや数え切れませんでした(笑)

 それにしても330万人ってすごくないですか?

 中華街だけでやっていたら、70万人でしたが、エリアを広げることで、中華街からもほかの街や施設に行ってもらうことができて、ほかの施設からも中華街に来ていただくことができ大きな賑わいを作ることができました。

 そうしたイベントや取り組みの検証をビッグデータを使って、解析することができるわけです。

 中華街ってやっぱりデラックス(DX)ですよねー!!(笑)

 実は横浜春節祭は国土交通省の「ビッグデータを活用した実証実験事業」に認定されました。

 日本全国の中から8事業体のみが通った狭き門!!これに認められたってすごくないですか?(笑)

 つけていただいた補助金を使って、横浜春節祭をより細かく分析したんです。

 上記にグラフを示した「Location AI Platform(LAP)」を用いたGPS調査の他に、「AI Beacon」を用いたWi-Fi&ビーコン調査、NTT「プラチナラリー」上でのデジタルアンケート、現地におけるアナログアンケートという4つの方法で調査を行いました。アナログアンケートでは、4日間で1,500件近い回答が得られました。これらを複合的に分析して、春節の時期に、横浜中華街を含めて周辺エリアを来街者がどのように周遊しているのかを調査しました。

 細かい分析の結果についてはここでは割愛しますが、一言で言って、「横浜春節祭」はかなり大きな周遊を生み出すことができた事がわかりました。

 以上、キャラに似合わず、今回はビッグデータのお話をさせていただきました。

 でも、冒頭にも触れた通り、データはただのデータでしかありません。

 僕たちは横浜春節祭やその他のイベントで横浜中華街だけでなく、近隣の街や施設も元気になったらいいなと思いて、その効果検証のためにこうしたものを利用しているだけです。

 「横浜春節祭」は本当は横浜市にやっていただきたいような大掛かりな取り組みですが、いまは横浜中華街がやっています。ひとつの街が負担するには大きすぎるお金もかかります。

 それぞれの施設と交渉したり、労力もかかります。

 いずれほかの街の方々や行政の方々にも手伝ってもらいながら、みんなで力を合わせてより大きな祭に育って行ったら良いなーと考えています。

 やっぱり街の人同士が仲良くなるには「祭」が大切だと思うんです。重い神輿を肩を痛めてみんなで担ぐと、自然と仲良くなるもんです。そのあと酒を飲み交わしたらさらに仲良くなれるはず!!

 力を合わせ、苦難を一緒に乗り越えた乾杯の数が街をもっともっと元気にして行くと僕は考えています。

 「横浜」という大きな神輿を担いて、横浜全域を盛り上げていきましょう!!

 カンパーイ!!

 と、データの話をしていたかと思ったら、締めくくりはやっぱり酒の話か!!って感じですが、お待ちかね #ボス飯 のコーナーです。

 今日はお祭りの後の打ち上げにぴったりなお店を紹介します。

 やっぱり日本でも中国でも仲良くなるには鍋!!

 同じ鍋をつついたらもう友達です。

 乾杯したらもう親友です!!

 この看板にも書いてある通り、酸菜は酸味のある漬物。これをベースに具材を入れていきます。

 トッピングの種類が40種類くらいあって、その日の気分や体調、一緒に行く人の好みで具材を追加できます。

 鍋も特殊で真ん中部分に炭を入れてあります。バーベキュー好き、キャンプ好きの僕にはこの炭の匂いもたまらないんです。

 仲良くなりたい人がいたら絶対にこの鍋を食べるべし!!オススメです!!

 カンバーイ!!

◆店舗DATA
店名:東北人家 新館
住所:横浜市中区山下町151-3 アートビル1・2F【広東道】
電話:045- 664-0888
営業時間:11:00~15:00(LO 14:50)、17:00~23:00(LO22:50)、土曜・日曜・祝日は11:00~23:00(LO22:50)
※現在新型コロナウィルスの影響のため営業時間に変動あります。
事前にお電話にて直接お問合せ。
休み:なし
公式サイト:https://tohoku-jinka.com/

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文/石河 陽一郎

 いしかわ よういちろう。1972年生まれ。株式会社ロウロウ・ジャパン代表取締役・総合プロデューサー。横浜中華街発展会協同組合副理事長。茅ヶ崎出身、横浜市在住。幼少期をシンガポールで過ごす。趣味はシステマ、焚き火。