営業活動の記録が進まない! 企画部門に泣きつかれた情シスが選んだのは?
LINE WORKSとBotを組み合わせたパナソニック ホームズのデータ活用事例
2023年05月01日 10時00分更新
LINE WORKSをインターフェイスにした理由
ここで石井氏はシステムのデモを披露した。営業設計部門の社員がBot(猫のキャラクター)に情報を書き込む例で、新規作成をタップすると、「いつの記録を入力しますか?」とBotが聞いてくる。日付を入れると「どのお客様?」と聞いてくるのでタップする……。こうした手順で、質問に答えていくだけで活動記録が完成する。営業担当者は、報告書を書いているという意識でなく、質問に答えていくだけで、データとしては報告書に必要な情報が生成されている。
パナソニック ホームズが構築した本システムについて、荒井氏は、石井氏にいくつかの質問を投げかけた。
荒井氏はまず、Botを組み合わせたシステムを検討する際、LINE WORKS以外に、モバイルアプリの開発ツールなどは検討しなかったのかと聞いた。
石井氏は「おっしゃるように、最初はモバイルアプリでの実装を含め、さまざまな可能性を検討した。また、営業の活動報告をデータ活用したいという趣旨だったため、SaaSで出ているCRM、SFAとの連携も検討した。しかし、それらは“ちょっと違うかな”と感じていた。そのタイミングで、ワークスモバイルからLINE WORKSとBotとの組み合わせ利用の提案を受けて、採用を決めた」と答えた。
次に荒井氏は、「Bot開発にはまだそれほど情報がなかった時代だと思うが、着手から稼働までは順調に進んだのか」と質問した。
これに対して石井氏は「今回は初めての開発だったので、ユーザーがどこでどんなことを入力したいと考えるのか、ユースケースをBotの開発パートナーに説明した。結果的にデータ入力のインターフェイスはおよそ3週間と、極めて短期間で完成した。これまでは大手のシステム会社とばかり仕事をしてきたが、今回のBotの開発パートナーのスピード感は非常に驚いた」と感想を述べた。
同社の開発体制は、若手を中心にした構成で、開発会社はアイレットと組んだ。どちらも若手で進めたことが、スピード感を増した一因ではないかと石井氏は振り返る。
現場が喜んだことが導入成功の理由
営業の効率化は期待通りだったのか。石井氏は、「現場は非常に喜んでいると思う。当社の営業は、基本的にお客様のご自宅にうかがって打ち合わせを進めるが、打ち合わせが終わって、営業者に乗り込んでエンジンを掛ける前に商談内容の入力を終わらせてしまう。営業先から事務所に戻らなくていいため、ほとんどの社員が進んで使っている」と成果を説明する。情報の鮮度と、社員の働き方改革の一石二鳥の効果を生んでいるようである。
また、邸ごとのトークルームによる効果も大きいという。社内の各部署で情報共有ができていないと、顧客は営業に話していることを、翌日設計からまた聞かれるというようなことが起こる。これは顧客の印象を非常に悪くする。
「一生に一度の買い物なのに、こういうことが起こると、お客様は家を実際に建てる前からご不満を持ってしまう。情報連携のミスは撲滅しなければいけないということは、以前からの課題だった。お客様にも慣れ親しんだLINEというインターフェイスを使うことで、情報共有が実現できるところがLINE WORKSのいいところだと思う」(石井氏)
また、施主側も、夫婦そろってグループに参加した方がいいのかと荒井氏は聞いた。石井氏は、「水回りのうち、キッチンや洗面は必ず奥様のご意見が重要。一方、同じ水回りでも、お風呂はご主人が決めることが多い。お客様側も、いろいろな人にトークルームに参加していただくことが重要だと思っている」と答えた。
パナソニック ホームズでは、このシステムを約3年前に設計部門から導入し、徐々に対象分野を拡大して、現在では全職能で利用している。
石井氏は、「LINE WORKSに標準装備されている機能の活用はもちろん重要だが、他のシステムとの連携によって、当社のやりたかったことが早く実現できた。簡単なシステム同士の組み合わせで、開発期間も短く、ユーザーにとっても簡単に使える仕組みを実現できるので、コストも低く抑えることができる。同じ課題を持つ企業は、ぜひ挑戦してほしい」と呼びかけた。
荒井氏は、「社内のコミュニケーションにLINE WORKSを使うことはいまや一般的になってきた。パナソニック ホームズではそこから一歩進んで、営業ツールとしての活用と、社内の業務システムの入り口としても使っていることが先進的だ」とまとめた。
LINE WORKSは、すでに150の社外ソリューションと連携しており、今後は同社に続く活用事例が増えてくるだろう。