東京大学、MIT・ハーバード大学ブロード研究所、オランダ・ヴァーヘニンゲン大学、理化学研究所の研究グループは、CRISPR-Cas酵素の祖先として注目される「TnpB」タンパク質の立体構造を決定し、TnpBが標的DNAを切断する機構を明らかにした。さらに、生化学的な解析と、すでに存在が判明しているCRISPR-Cas酵素の立体構造との比較から、TnpBからCRISPR-Cas酵素への進化の過程を解明した。
東京大学、MIT・ハーバード大学ブロード研究所、オランダ・ヴァーヘニンゲン大学、理化学研究所の研究グループは、CRISPR-Cas酵素の祖先として注目される「TnpB」タンパク質の立体構造を決定し、TnpBが標的DNAを切断する機構を明らかにした。さらに、生化学的な解析と、すでに存在が判明しているCRISPR-Cas酵素の立体構造との比較から、TnpBからCRISPR-Cas酵素への進化の過程を解明した。 これまでの研究から、CRISPR-Cas12酵素にはさまざまな種類が存在することが分かっており、TnpBタンパク質から進化してきたと考えられている。TnpBの機能については近年の研究から、自身のトランスポゾン(ゲノム上を動く遺伝子)の末端から転写される長鎖ノンコーディングRNA(オメガRNA)と協調して、DNAを切断するRNA依存性DNAエンドヌクレアーゼであることが分かっている。 研究グループは、微生物デイノコッカス・ラディオデュランス(Deinococcus radiodurans)の「ISDra2」トランスポゾンに由来するTnpBに注目。クライオ電子顕微鏡を使って構造解析を試みた。その結果、オメガRNAが塩基配列からは予想も付かない複雑な構造を採ることで、TnpBタンパク質と複合体を形成していることが分かった。 構造解析と生化学的解析の結果から、TnpBは12塩基程度の短い塩基配列を認識して、標的DNAを切断することが明らかになった。さらに、すでに判明しているさまざまなCRISPR-Cas12酵素と構造を比較したところ、TnpBは二量体化と新たなドメインの挿入というまったく異なる2つの戦略で、より長いDNA配列を認識する能力を獲得するように進化してきたことが分かった。 研究成果は4月6日、ネイチャー(Nature)誌に掲載された。(笹田)