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AMD Ryzen 5 5625U対インテル Core i5-1235U対決!高パフォーマンスでお買い得なノートPCはどっち?

2023年03月30日 11時00分更新

文● 加藤勝明(KTU) 編集●ジサトラハッチ/ASCII

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基本的なベンチマークでチェック

 まずは基本的なベンチマークで両者の力比べを実施しよう。まずは「CINEBENCH R23」でCPUの馬力をチェックする。

CINEBENCH R23:スコアー

 マルチスレッド性能においてはRyzen 5 5625U搭載モデルの方がCore i5-1235Uを上回っているのに対し、シングルスレッド性能では逆にCore i5-1235Uの方が高スコアーを出している。この辺はCPUのアーキテクチャーの差によるものといえる。

 続いては総合ベンチマーク「PCMark10」から、“Standard Test”を実施する。下のグラフでは青色のバーが総合スコアー(Standard)、それ以外の色のバーは総合スコアー算出の根拠となったテストグループのスコアーとなる。

PCMark10:Standard Testのスコアー

 このベンチではシングルスレッド性能が重要でマルチスレッドが効くのはDCC(Digital Content Creation)テストグループくらいなのだが、Ryzen 5 5625U搭載モデルは3つのテストグループ中2つでCore i5-1235Uより高いスコアーを出している。

 AMDの内蔵GPUを搭載したCPU(APU)ではProductivityテストグループ(LibreOfficeの処理時間)のスコアーが高くなるというのは経験則で知っていたが、ここまで差がつくとは思わなかった。

 基本ベンチの最後はゲームのグラフィック性能をみる「3DMark」で試す。今回は内蔵GPUしか使わないため、軽めのテスト3本で比較しよう。

3DMark:スコアー

 CINEBENCH R23やPCMark10とは逆に、このベンチでは終始Core i5-1235U搭載モデルが高スコアーを出している。Iris Xe Graphicsの性能もあるが、Core i5-1235U側はメモリーの構成がデュアルチャンネル、Ryzen 5 5625Uはシングルチャンネル仕様になっているという違いもスコアー差の原因と考えられる。内蔵GPUの描画性能はメインメモリーの帯域が重要だが、シングルチャンネルだとメモリー帯域の狭さが内蔵GPUの足を引っ張ってしまうのだ。

 ただ、この程度の性能ではよほど軽めのゲームをフルHD未満の解像度でプレイするのがやっとという感じであるため、ゲーム用としてはどちらのノートPCも適さないと判定できる。

実アプリベースでも好勝負を展開

 続いては実際のアプリを動かして性能を比較しよう。まずは「Photoshop」と「Lightroom Classic」を実際に動かして性能をスコアー化する「UL Procyon」の“Photo Editing Benchmark”を試す。

UL Procyon:Photo Editing Benchmarkのスコアー

 総合スコアー(青)はCore i5-1235Uが上だが、2つのテスト(Image Retouching/Batch Processing)のうち、Photoshopをメインに使うImage RetouchingはRyzen 5 5625Uが、Lightroom Classicのみ使うBatch ProcessingはCore i5-1235Uの方が高スコアーを出している。同じ写真編集系でもRyzenが強いもの、そうでないものが分かれているのだ。

 続いて同じUL Procyonでも、Office 365(Word/ Excel/ PowerPoint/ Outlook)を使用する“Office Productivity Benchmark”も試してみた。

UL Procyon:Office Productivity Benchmarkのスコアー

 このベンチでは、どのテストにおいてもCore i5-1235Uが優勢だが、差は割と小さい。さらにここで前述のPCMark10でRyzen 5 5625UがProductivityテストグループにおいて良い結果を残していた点を想起して欲しい。つまり同じ実務系でもLibreOfficeだとRyzen 5 5625Uが、Office 365はCore i5-1235Uに軍配が上がるということだ。

 最後に対極的な結果をみせた動画エンコード検証の例を2つお目にかけよう。まず「Premiere Pro 2023」を用い再生時間3分の4K動画を編集し、それを「Media Encoder 2023」を利用して1本の4K/ MP4動画に出力した時間を計測した。ビットレートは50Mbps、VBR 1パス、エンコーダーはハードウェア(GPU)とした。デコードにもGPU(OpenCL)を使用している。コーデックはH.265とした。

Media Encoder 2023:エンコード速度

 このテストではGPUパワーが使われるため、3DMarkで好成績を収めたCore i5-1235UがRyzen 5 5625Uを圧倒するのは当然の帰結。ただそれでも3分の動画に1時間半かかっているので本格的な編集をしてエンコードするような作業では、今回テストしたInspiron 14のようなコストパフォーマンス重視のノートPCではかなり厳しい。

 続いては「HandBrake」で試す。こちらは再生時間3分の4K/ 60fps動画をフルHD/ 30fpsのMKV形式に書き出す時間を計測した。Media Encoder 2023と違いこちらはほぼCPUパワーだけで処理される。ビットレートなどの設定はプリセットの「H.265 MKV 1080p30」を使用した。

HandBrake:エンコード時間

 こちらは僅差でRyzen 5 5625Uが勝利。Ryzen 5 5625Uのマルチスレッド性能の高さがこの結果を呼び込んだといえる。

バッテリー持続時間はRyzenが優秀

 実務向けノートPCならバッテリー持続時間の比較も避けて通ることはできない。今回はYouTubeでフルHD動画をフルスクリーンで延々と再生させ、その状態で何時間バッテリーが持つか「bbench」で計測した。

 画面輝度は最大、デスクトップのスケーリングは100%、つまりフルHDの動画は拡大縮小なしに再生される。インターネットとの接続はWi-Fi6とした。電源プランその他設定はデフォルトのままとしている。

バッテリー持続時間

 まずCore i5-1235Uを搭載したInspiron 14 2-in-1は画面がタッチ対応液晶なので若干消費電力的に不利な部分はある可能性がある、と前置きしておきたい。だがそれを脇においておいてもRyzen 5 5625U搭載モデルの方が1時間13分長く再生し続けられたという点は多いに評価したいところ。

まとめ:コスパ重視ノートでも、Ryzen 5は案外使える

 以上で検証は終了だ。今回はモバイル向けRyzen 5000シリーズという“最新ではない”Ryzenを使って検証したが、同価格帯のライバルCPUと比較して、勝つところもあれば負けるところもある、という感じだった。

 今回試したRyzen 5 5625U搭載Inspiron 14の場合ゲーム用としては適さないが、実務系や写真編集系であれば十分使える。また⻑尺動画のエンコードは厳しいが、物理6コアもあるので編集を凝らなければなんとか使えそうだ。Core i5-1235Uの同格ノートPCと比較すると、勝ったり負けたりといったところだが、機動性を重視するならバッテリー持続時間の長いRyzen 5 5625Uの方が有利だ。

 この辺はプロセスルールの微細化がより進んでいる、AMDの省電力設計の優位性が効いているともいえる。新年度に備え仕事や学習用に最適なノートPCが欲しいと考えているなら、Ryzen 5 5625UあたりのCPUを載せた製品を検討してみてはどうだろうか。

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