「アドビもジェネレーティブAIを作った」という話を聞いて、驚いた人とそうでない人は明確に分かれそうだ。前者はビジネスを追いかけている人であり、後者はアドビという会社をよく知っている人かな、とも思う。
ただし、マイクロソフトやグーグルがジェネレーティブAIに取り組むことと、アドビがジェネレーティブAIに取り組むことには違いがいくつかある。そしてそれは、発表自体が「Adobe Summit」というイベントで実施されたことと無関係ではない。
ジェネレーティブAIをアドビも積極展開
ご存知の通り、アドビはクリエイティブツールの会社である。だから、その中で補助的な役割として、AIを活用していくのは自然なことだ。
同社は2017年秋、全社的に活用するAI技術のブランドとして「Adobe Sensei」を発表した。もちろん、個々の機能で使うAI技術はそれぞれ異なるが、データや学習基盤は共通。なにより、アドビの各アプリで使えるのが大きい。Senseiの存在が、現在のアドビに行ける差別化点となっている。
今回アドビは、Adobe SenseiにジェネレーティブAIの機能を盛り込み、「Adobe Sensei GenAI」としてローンチした。
これは、アドビ全体としてのジェネレーティブAI戦略についてのブランド名である。他方で、より用途に特化したジェネレーティブAIとして登場したのが「Adobe Firefly」だ。
Fireflyは、多くの人が思うジェネレーティブAIに近い。プロンプト(文章)で入力すると、2Dの画像やフォントのエフェクトが生成される。今後、Firefly自体がPhotoshopなどのツールに統合されていく計画もあり、さらに、多数の機能も実装が予定されている。
おそらく、日本で大きくニュースになっているのはこちらの方ではないだろうか。
ただし、Fireflyは、アドビが提供するジェネレーティブAIの一部でしかない。その精度や生成する画像の完成度を論評するのは、あまり意味がないことだ、と筆者は感じた。
なぜそのような話になるのか? それはまさに、「Adobe Sensei GenAI」の目指す部分がさらに大きく、「Adobe Summit」というイベントに、よりふさわしいものであるからでもある。