理化学研究所らの共同研究チームは、神経細胞内で翻訳途中のリボソーム(mRNAの遺伝情報からタンパク質を合成する巨大なタンパク質・RNAの複合体)におけるタンパク質の品質管理の破綻が、発達障害などの神経疾患を引き起こす機構を分子レベルで解明した。タンパク質の品質管理機構とは、遺伝子情報を基に新しいタンパク質を合成する際に、制御が正常でなくなって異常なタンパク質が産生・蓄積されるのを防ぐ、あるいは取り除く防御機構のこと。
理化学研究所らの共同研究チームは、神経細胞内で翻訳途中のリボソーム(mRNAの遺伝情報からタンパク質を合成する巨大なタンパク質・RNAの複合体)におけるタンパク質の品質管理の破綻が、発達障害などの神経疾患を引き起こす機構を分子レベルで解明した。タンパク質の品質管理機構とは、遺伝子情報を基に新しいタンパク質を合成する際に、制御が正常でなくなって異常なタンパク質が産生・蓄積されるのを防ぐ、あるいは取り除く防御機構のこと。 研究チームは今回、培養神経細胞とマウスを用いた実験で、タンパク質合成途中のリボソームにおけるタンパク質の品質管理が破綻すると、神経細胞は「TTC3」というタンパク質の量を増やして翻訳開始(タンパク質の合成を開始させるまでの過程)を抑制することにより、合成が途中で止まった異常なタンパク質の蓄積を防いでいることを明らかにした。その一方で、TTC3が翻訳開始を抑制すると、神経細胞の発達が妨げられ、認知障害および発達障害が引き起こされることも分かった。 研究チームによると、神経細胞には翻訳途中に異常が起こった際、自身を守る防御機構が存在するものの、その代償として神経細胞の発達に異常が生じ、それが神経疾患につながるという。今回の研究成果は、認知障害や発達障害をはじめとする幅広い神経疾患の発症機構の解明につながる可能性があり、さらに、神経細胞における翻訳制御機構を標的とした、新たなバイオマーカーや治療法の開発に貢献することが期待される。 研究論文は、米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences:PNAS)オンライン版に2023年3月13日付けで掲載された。(中條)