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「Xeon CPUマックス」「データセンターGPUマックス」の両シリーズも市場投入

インテル、データセンター向けの第4世代「Xeon SP」を発表

2023年01月13日 07時00分更新

文● 大河原克行 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 インテルは2023年1月11日、データセンター向けとなる「第4世代 インテル Xeon スケーラブル・プロセッサー(Xeon SP)」を発表した。加えて、HPCやAIに最適化した「インテル Xeon CPUマックス・シリーズ」と、アクセラレーテッドコンピューティングシステムの「インテル データセンターGPUマックス・シリーズ」の市場投入も発表している。

 インテルの鈴木国正社長は、「3つの製品の市場投入は、インテルにとって極めて重要なものになる。AIからクラウド、ネットワークとエッジ、スーパーコンピュータの分野に対して、データセンターの性能や効率性、セキュリティを強化するための多彩な新機能を提供。お客様の課題を解決することを優先した『ワークロードファースト』の考え方で設計している。インテルがデータセンタービジネスにおけるリーダーシップを再び確立し、新たな利用分野においても足場を固めることができる」と力を込めた。

第4世代 インテルXeon スケーラブル・プロセッサーの特徴

インテル 代表取締役社長の鈴木国正氏(右)、同社 執行役員 技術本部長の町田奈穂氏(左)

実環境のワークロード性能を優先させたアーキテクチャー

 2023年は、初代Xeonプロセッサーが1998年に発売されてから25年目の節目となる。

 第4世代インテル Xeon スケーラブル・プロセッサー(開発コードネーム:Sapphire Rapids)は、アクセラレータの強化などにより、汎用コンピューティングで従来比平均53%のパフォーマンス向上を実現するほか、AIパフォーマンスを最大10倍に、データ分析を最大3倍に向上させる。2022年2月から一部顧客に対して限定的な製品出荷を行ってきたが、今回の発表によって量産出荷を開始する。

 インテル 執行役員 技術本部長の町田奈穂氏は、「第4世代 Xeon スケーラブル・プロセッサーは、リーダーシップとなる性能を叩き出し、将来のデータセンターの姿を提案するCPUとなっている。汎用的な用途だけでなく、5Gネットワーク、ストレージ、AI、HPC、データ分析など、多岐に渡る用途での利用を想定しており、実環境のワークロード性能を優先させたアーキテクチャーとして設計、開発した。市場にあるCPUのなかで、最多の内蔵アクセラレータを搭載。顧客に対して、トップレベルのパフォーマンスと効率性を提供できる」と位置づけた。

 同社では、SpecIntやFPといったベンチマーク性能と、実環境のワークロード性能では、求められるものが異なっていることを指摘。とくに、実環境のワークロードではバックエンドの実行ユニットの負担が大きくなっており、ベンチマークの結果だけでアプリケーション性能を判断することが難しいと指摘する。

 「インテルでは、実環境のワークロードの性能向上を図るには個別のアプローチが必要であることを理解している。Xeon スケーラブル・プロセッサーでは、サーバーノード単体だけでなく、データセンター全体、クラウド基盤としての性能も追求している。これまでの課題を解決することができる」(町田氏)

実環境のワークロード性能を優先したアーキテクチャー設計で、大幅な高速化を実現

 第4世代 Xeon スケーラブル・プロセッサーでは、マイクロアーキテクチャーの改良によってコア性能を進化させている。クロックあたり命令数の15%増加を目指した設計、L2/L3キャッシュの拡大、さらにXeon初のEMIB(Embedded Multi-die Interconnect Bridge)技術採用によるメッシュ構造のマルチタイルSoC実現などの特徴がある。DDR5やPCIe 5.0、CXL 1.1、UPI 2.0、HBMといった業界の最新技術も取り入れ、システム性能を大幅に向上させた。

 また、多くのアクセラレーターエンジンも追加している。CPUにかかる演算負荷をアクセラレーターにオフロードすることで、実環境でのワークロード性能の向上とともに、電力効率、コスト効率も追求している点も大きな特徴だ。具体的には、AIに最適化したインテルアドバンスト・マトリクス・エクステンション(インテルAMX)、5Gネットワークに対応したインテルアドバンスト・ベクトル・エクステンション(インテルAVX) for vRAN、データベースの処理性能を向上させるインテルインメモリー・アナリティクス・アクセラレーター(インテルIAA)、システム内のデータ転送を飛躍的に向上させるインテルデータ・ストリーミング・アクセラレーター(インテルDSA)、暗号の高速化や一括データ圧縮などを行うインテルクイックアシスト・テクノロジー(インテルQAT)、ネットワークのバケット処理を最適化するインテル ダイナミック・ロードバランサー(インテルDLB)を搭載する。

 「データセンター向けにはサーバーノードの性能向上をベースに、インフラやフレームワークの負荷の処理、データセンターの統合やオーケストレーション、データセンター内の一貫性のあるパフォーマンスのほか、柔軟で効率的なデータセンターの運用にもアプローチしたCPUとなっている。電力モードの最適化や、テレメトリーを行うプラットフォーム・モニタリング・テクノロジー、シリコンの経年劣化などの問題を検出できるインテル インフィールド・スキャンなども追加した。さらに、ハードウェアとソフトウェアによる包括的なセキュリティソリューションによって、サイバー攻撃からデータセンターを保護する基盤も構築できる」(町田氏)

タイルアーキテクチャーを採用、また多数のアクセラレーターエンジンを搭載

 インテルによると、この2年間で第3世代 Xeon スケーラブル・プロセッサーを1500万個出荷しており、Xeon スケーラブル・プロセッサーの累計出荷数は8500万個に達している。また、第4世代 Xeon スケーラブル・プロセッサーに関しては、全世界で設計完了/設計進行中のデザインウィンが400に達しているという。さらに日本においては、11社のシステムパートナーが、第4世代 Xeon スケーラブル・プロセッサーを搭載した製品などを展開する予定だ。

 Xeon スケーラブル・プロセッサーのロードマップ拡大についても説明した。性能重視のP-Core(Performance-core)採用ラインは、Intel 7製造プロセスによるEmerald Rapids、Intel 3製造プロセスのGranite Rapidsへと進化させていく。一方で、パフォーマンスあたりの消費電力を最適化したE-Core(Efficient-core)採用ラインとして、Intel 3プロセスのSierra Forestも投入する。E-CoreラインのCPUは、多数のVMを展開する仮想環境などクラウド向けの高密度/高効率なコンピューティングをサポートする。

 「これらのロードマップの実現を通じて、データセンターのスタンダードになり続ける製品展開を予定している」(町田氏)

HPC、AI、スーパーコンピューター向けCPU/GPUも投入

 インテル Xeon CPUマックス・シリーズ(開発コードネーム:Sapphire Rapids HBM)は「広帯域幅メモリを搭載した史上初のx86 CPU」と紹介された。具体的にはチップレット方式による4つのタイルで構成され、EMIBを活用してシリコン同士を接続。最大56個のP-Coreを1つのプロセッサー内で接続ができるのが特徴だ。また、20個のインテル アクセラレーターエンジンを内蔵している点も高性能化に貢献している。

 また、インテル データセンターGPUマックス・シリーズ(開発コードネーム:Ponte Vecchio)は、47タイルのパッケージに1000億を超えるトランジスタを組み込み、最大128GBの広帯域幅メモリを内蔵する。

 「(データセンターGPUマックス・シリーズは)HPC、AI、スーパーコンピュータ向けに開発したものであり、超高性能な演算性能を備えたインテルGPUの最高位製品となる。EMIBに加えて、3Dダイスタッキング技術のFoverosを使用することで、最先端のパッケージングを実現。それによって、1000億トランジスタを達成することができた。HPC対応のXe-coreを最大128個搭載し、スループットは52TFLOPSのピークパワーを実現。GPU同士の通信を行なうXe Linkを16本用意している。単一ソケットでの計算密度では世界最高になる」(町田氏)

「インテル データセンターGPUマックス・シリーズ」の特徴

 今回発表された3製品の、日本における先行導入事例についても紹介された。

 京都大学では、最新のHPCシステムである「Camphor3」の設計においてインテルと連携。第4世代 Xeon スケーラブル・プロセッサーを740ユニット、Xeon CPUマックス・シリーズを2240ユニット導入することを決定。広帯域幅メモリを利用することで、計算科学者の研究の加速に役立たせるという。また、筑波大学では、新型マシン「Pegasus」を導入。第4世代 Xeon スケーラブル・プロセッサー120ユニットを導入するとともに、インテル Optaneパーシステント・メモリー300シリーズを採用。超高速シミュレーションおよびビッグデータ分析に活用する。

 さくらインターネットでは、第4世代 Xeon スケーラブル・プロセッサーを採用し、国産クラウドベンダーならではのサービス体制を強化。企業や官公庁、自治体のDXのほか、大規模データ処理、AI、HPCまでの幅広いニーズに応えるという。国産RDBを開発しているノーチラス・テクノロジーズは、第4世代 Xeon スケーラブル・プロセッサーを活用。エンタープライズシステムにおける業務革新を支援するという。また日本IBMでは、IBM Cloudに第4世代 Xeon スケーラブル・プロセッサーを展開。高いパフォーマンスとセキュリティを実現するとともに、消費電力を削減。ミッションクリティカル領域へのサービス提供や、DX推進に貢献していくという。

 

 「インテルは、データ需要の急増に向けて貢献をしてきた自負がある。顧客とパートナーに最先端のプラットフォームを提供し、データセンターの未来を見据えたイノベーションを起こし、製品とサービスの継続的な進化により、データセンターの成長を加速させてきた。設計プロセスの段階から、お客様と密接に連携し、課題やビジネスの変化を理解し、ワークロードを最優先してきた。また、世代ごとの性能の向上、効率性とサステナビリティの向上、TCOの最適化を提供し、データセンター市場における高い信頼と実績がある。さらにXeonプラットフォームを支える広範なエコシステムを構築している。これらが、インテル Xeon スケーラブル・プロセッサーの最大の特徴になる」(鈴木氏)

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